長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野』

2021-12-13 | 映画レビュー(は)

 オール黒人キャストで作られた西部劇『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール』はさしずめ2020年代のブラックスプロイテーション映画だが、B級映画を指すそれとは段違いの豪華さがある。『ラヴクラフトカントリー』等、好投相次ぐジョナサン・メジャーズにザジ・ビーツと活きの良い若手が主役を飾り、それにも増して悪役がゴージャスなのだ。冷静沈着、軽妙洒脱な早撃ちガンマン役にラキース・スタンフィールド。首領イドリス・エルバの留守を預かる女ボスに『ウォッチメン』のレジーナ・キングが扮し、ド迫力。近年、ハリウッドの娯楽作は悪玉がどうにも小物ばかりだが、本作は悪役のリッチなキャスティングによって多少の粗は気にならない程の面白さを獲得している。

 物語は往年の名作西部劇を本歌取りしており、今更語るまでもないだろう。ただし音楽はモリコーネではなくジェイZはじめとするヒップホップがなり響き、全編に渡って「白人だけのジャンルにはしないぜ」という血気盛んさがみなぎる。2020年代の映画らしく、人種や性別のイシューも時にユーモアを織り交ぜながら取り入れられているのがいい。続編を匂わせる終わり方に、次回作“シスターナイトの逆襲”を期待しようじゃないか。


『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野』21・米
監督 ジェイムズ・サミュエル
出演 ジョナサン・メジャーズ、イドリス・エルバ、レジーナ・キング、ザジー・ビーツ、デルロイ・リンドー、ラキース・スタンフィールド、ダニエル・デッドワイラー、エディ・ガテギ、RJ・サイラー

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