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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『アリー/スター誕生』

2019-01-19 | 映画レビュー(あ)

新たなスター監督ブラッドリー・クーパーの誕生だ。
当初、師匠格であるクリント・イーストウッド監督によって進められていたこの企画を引き継いだ彼は製作、脚本、主演を兼任し、誰も予想だにしなかった傑作へと昇華させ、古典を現代へ蘇らせることに成功した。来るアカデミー賞でも複数部門でのノミネートは間違いないだろう。

その演出技法は優れた俳優ならではの抑制されたアプローチだ。
カメラが極限まで俳優に肉薄し、自然体でありのままの演技を撮らえる。映画初主演となるレディー・ガガ(スクリーンに映る彼女を見ていつものガガを意識する人は皆無だろう)と踊るかのように手を引く演出は監督クーパーが名優であればこそであり、これはベテラン俳優サム・エリオット(本作の守護精霊かのようだ!)からもキャリア最高と言える名演を引き出している。大規模なライヴシーンが何度も登場するが、前述の撮影技法のためほとんど聴衆が映らず、そのスケールは映画に反映されない。まさに過ぎたるは何かを心得ているのだ。

個人的に俳優監督はあまり芝居の巧くない人が大成するイメージを持っていた。ベン・アフレック(バットマンをやっている場合ではない)然り、師匠イーストウッドもオスカー受賞作『許されざる者』まで俳優として評価はされてこなかった。
ところが驚くべき事にクーパーは自らのベストアクトを更新している。ヒロイン、アリーを見初める大物カントリー歌手ジャクソンに扮した彼は声音をガラリと変え(兄役サム・エリオットのカウボーイ口調に寄せたという)、アルコールと薬物にまみれるが、やはり“やりすぎ”ていない。アリーと出会った彼の表情を見て欲しい。才能に激しく恋した経験がある人なら、あのとろけるような表情は憶えがある事だろう。

 原作通り、躍進するアリーに嫉妬を覚えたジャクソンは破滅していく。カントリーひと筋、愛する女の足を引っ張ってしまうのならオレは去った方がいい。だがクーパーの演出はそんなジャクソンの旧きを愛し、自分を変えられない男の姿にロマンチシズムもナルシズムも持ち込まない。進歩的な女性と現状維持に甘んじる男性の対比を明確に打ち出し、ネオ・ウーマンリヴに呼応しているのである。仮にイーストウッドが監督したらこうはならなかったかも知れない。人気スターゆえ監督作を連発できるようなスケジュールがあるとは思えないが、御大の後継者と言ってもいい彼の次回作が楽しだ。


『アリー/スター誕生』18・米
監督 ブラッドリー・クーパー
出演 レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー、サム・エリオット
 

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