リッスン・トゥ・ハー

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ボタン

2010-07-06 | リッスン・トゥ・ハー
押すか押さぬかそれが問題だ。押せば何かが起こる。押さねば何も起こらぬ。現状を受け入れて生きていくためには押さぬも一つの選択。穏やかに生きていくのもいいかもしれない。但しここは無人島ですでに食料も尽きている。日数にして347日目。ギリギリのラインをかろうじてしのいで生きている。もうダメかもしれない、それならいっそのことボタン、押しちゃうか。甘い誘惑が頭の中で響き渡る。わたしをこの無人島に連れてきた組織によると、ボタンを押せばそれなりの報いがある。どんな種類の報いかオスまでわからない。誰にもわからない。前にここにいた人が押したときには、大量の硫酸が吹き出てもろとも溶けてしまったし、その前の人の時は海が割れてそこを歩いて帰ろうとして30分後ぐらいに海が元に戻って溺れてしまったし、その前の人は焼きたてのパンが空から降ってきて、大喜びでそれに噛み付くと、パンによく似た石で歯が折れてしまったし、あまりいいことは起こってないね。あまりこのボタンに期待するべきじゃない。何のためのボタンか明確ではないが、大量の硫酸は嫌だ。溶けてなくなるのはごめんだ。それ以外はまだましだけど、まず自分の力でどうにか打破したい、自分ならできる、という自負があった。わたしは自信家なのだ。それから一年もうすぐたつが、何も打破できない。与えられた食料も持たせた方だと思うがなくなった。もうかれこれ2週間何も食べていない。このままじゃ、例えば海が割れたとして歩いて帰る途中で動けなくなってしまう。使うならもう早めがいい。大量の硫酸も二回連続ではあたらないだろう。では押すよ、もう押しちゃうよ、いい、準備できてる?急に対応できなくて時間差の末何か起こるのだったら最悪だから。じゃ押しマース、と叫ぶ。もう叫ぶのもつらい。で押す。当たり。大量の硫酸、じゅわー。


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