リッスン・トゥ・ハー

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147mのぞうきんがけ

2010-03-17 | リッスン・トゥ・ハー
小僧は途方に暮れた。廊下はまだ終わらない、どころか、末は遠く彼方にかすんでいる。ぞうきんをかけて、ただ進んでいたがいい加減飽きていた、ただぞうきんの一筋を磨けていくだけで、その一筋だけで掃除は終わりではないし、まだ山ほど残っているうちの一筋だから、ないものとほとんど同じであった。小僧は額の汗をぞうきんでぬぐい、ウップス、とあわててぞうきんを払う。とんだうっかりさんを演じているが、実にしたたかに坊主の地位を狙っている計算高い小僧だった。ふいにぞうきんが悲鳴を上げる。ぞうきんもかつてないほどの長い使用時間に耐えられなくなってきたのである。俺だってひとりの人間として扱ってくれなきゃやってられないや、といわんばかり、廊下を綺麗にすることを忘れて愚痴をこぼす。愚痴は廊下中に広がって、綺麗にする時と汚すときその速度は雲泥の差だった。ぞうきんは泣き叫ぶ、痛みや悔しさが一気に溢れ出ている。小僧は困ってしまった。ぞうきんを持ち上げて慰める。オマエが悪いわけじゃないし、まだ終わったわけじゃない、今からいかようにもできるんだから、そんなふうに泣くことはないと思うよ。しかし泣き止まずぞうきんはひとりで駆け出しちゃう。ああ待ってよ、と小僧。するするすると綺麗にしている。雑巾が進んだあとはぴかぴかでとても綺麗。


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