リッスン・トゥ・ハー

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160匹のUNAGIの行方

2008-09-01 | リッスン・トゥ・ハー
うなぎの頭の部分をめがけ、一気に利き手である左手を突っ込む。
正美は、そして、確実に捕らえた事を手の平で感じ取り、上げる。波が、暗闇の中、立っているのがわかる。それはうなぎたちに広がる動揺に思えた。

「つかめるものがやってきた」
それは、あきらかに、いつもの手ではない。
なぜならいつもは右手をつっこんでくる。左だった事はない。

うなぎはすでに自らの運命を知っている。
捌かれ、蒲焼にされるのだ。よくて、白焼きだ。白焼きは自分の本領を発揮でいる焼き方であるため、うなぎの一つの理想としてあった。
白焼きで逝かせて欲しいものだ。うなぎの世界での暗黙の了解、白焼きで。できるだけ、白焼きで。しかし、需要は圧倒的に蒲焼にある。
圧倒的である。庶民の味としては私はやはり蒲焼を私は推す。あの幸福感と、腹持ちのよさ、甘ったるさが古くからのスタンダードだ、印象に残る。蒲焼を外せるわけがない。

うなぎはそのわずかな白焼きの枠に入れるように夢を見ながら、真夜中の水槽の中、たゆたゆと漂っていたのだ。

さて、そこに違和感が広がる。波立つ。この浅い水槽の中では、手を入れることすなわち水を押す事、つまり鱗に衝撃を受けること、緩いがしかし圧倒的にその先にあるものは白焼きか蒲焼か、その瀬戸際にある。
とすれば、誰からともなく逃げ惑いだす、が熟練の手、うなぎは瞬く間に捕まえられる。
左の衝撃、は全水槽に広がる。
いったい誰がやってきてこの深夜に水槽に手を入れ、うなぎを捕まえたのか。

正美は捕まえたうなぎを腰につけているポショットにしまう。暴れ回るうなぎの筋肉がしなり、びゆう、びゆうと空を切る音。
水を伝わり、水槽全体に広がるあんなにもしならせて抵抗するあっぱれだ。
ポシェット内でも存分に暴れ出す。ここで折れたら最後だという事を良く知っている。
本能がさせるわざであった。

サウスポー正美はかまわず次のうなぎをつかみにかかる。
見事である。全く狂うようすなく次から次へとうなぎを捕まえてはポシェットにつっこむ。
うなぎは押され、圧縮されたせいで、ポシェット内うなぎ団子に成り果てた姿は私に安心感を与えてくれた。うなぎ団子もまた一興、日本酒でも飲みながら。

正美がそんなにも必死になってうなぎをつかむ理由は知らない。
大方、蒲焼にして食うのだろう。あるいは病気がちな妹に食べさせる為だろうか。
正美はつぶやく。
「安心せい、みな白焼きじゃ」

水面の乱れはひたとなくなり、静寂にすすり泣くうなぎの群れ。

NIGHT FISHING/サカナクション

2008-09-01 | 若者的図鑑
視聴して1曲目の「ワード」でノックアウトされました。
これははまりました。進むにつれて次第にリズムを取る自分に気付きます。
足が動いて、ふんふんふん、と。全編この曲で構成するのも良かったかも。

前代未聞のアルバムを発表して欲しいものです。

それ以外はそれほど、印象に残る曲はなかったかな。でもまあ一曲でもあるという力、
この曲はNHKのミュージックスクエアーのエンディング曲になっていましたね。

突き進んでいってほしいものです。

ポストくるり、といわれているそうで、ボーカルの声質が似てますね。
そういうバンドがけっこういますね。

ポストと言わず超えるぐらいの人たちがいまに出てくるはずです。ことに期待しつつ。