リッスン・トゥ・ハー

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マンションの屋根は誰のものか

2006-07-18 | リッスン・トゥ・ハー
雨が降っている。それは、通りを走る車の音で分かる。逆言えば、それぐらいしか雨が降っていることを確認できる要素はない。きっとこの雨は粒が見えないぐらい細かい。だから雨が屋根にぶつかる音も全く立てない。だけど、ここから屋根は遠く、何階も上だし、もしかしたらちいさなちいさな音を立てているのかもしれない。そのかすかな音を聞きながら珈琲でも飲む彼あるいは彼女を想像する。それはひどく贅沢な音楽に思える。どんな素晴らしい音楽よりも繊細な音を出すコンクリートを打つ細かい雨。屋根は、このマンションの屋根は誰のものでもないはずで、つまり、その音を聞いている誰かに対して、僕は軽い嫉妬を憶えている、そういう話だ。