リッスン・トゥ・ハー

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夏を追い越してしまったせっかちな秋について

2006-07-02 | リッスン・トゥ・ハー
ねえ、アキ、もう、少し、ゆっくり、歩いたら、いいのに、太り気味の夏ちゃんはそう言って後ろから私の手を引っぱる。はやく、歩いた、って、なにも、変わらないし、なんの、得もしないよ。私はこれでも遅すぎて、何なら走り出したいぐらいなのに。夏ちゃんははあはあいいながらどすどす歩いて、やはり後ろから手を引っ張る。赤信号に捕まったので仕方なく止まる。まったく、アキは、せっかち、なんだから、夏ちゃんはそう言って私の前に立ち、ふうと息を吐く。とても大袈裟に。夏ちゃんは亭主関白なのだ、私より常に前にいたいのだ。夏ちゃんはまだぶつぶつ言いながら私の少し前に立っている。いろんなことがしたい。夏ちゃんといろんなことがしたい。そう思ったらどんどんスピードが上がってしまうんだ。まだはじまったばかりで、生き急ぐわけじゃないけれど先にあるものが、どんなものか知らないけれど夏ちゃんとともにあるのであれば、楽しみで仕方がない、そういう乙女心、解っていただきたいぜひ。青になる。待ち構えていた、私は駆け出す。そして、うんざりしたような夏ちゃんの手を引いて、一気に追い抜かす。