リッスン・トゥ・ハー

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少女は叫ぶ、マッチを擦って

2006-07-08 | リッスン・トゥ・ハー
マッチ棒はいりはせぬか、ああマッチ棒はいりはせぬか、町人よ、町人よ、このマッチ棒を擦ってみせよ、くるしゅうない、余にこのマッチ棒を擦ってみせよ、さすれば、刹那、幸福の風景、背景雪化粧した聖夜のイルミネーション、零れる窓辺のイルミネーション、ああ、この家の母は紅を塗り、白をはたいて頬染め、赤らめ、チキンの焼ける匂いすらもったいないと、外には漏らさず、途切れる。ああ、マッチ棒を擦れ、マッチ棒を擦れ、余に幸福の形を思い知らせるが言い、さあ、この家の母は、ヴァイブレーションのように震えろ、町人と、更なる涙、行方も知れず、雪が、背に目に手に、耐えられるか、余は耐えられるのか、町人よ、マッチ棒を擦れ、擦れ、最期の一本を擦れ、燃え盛るマッチ棒の、焦げた皮膚の、黒い煙が、消えるちょうどその頃、パトラッシュの羽、もぎ取れ、あっけらかんと、意識遠のく。