俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

悪女

2015-04-16 10:32:19 | Weblog
 悪女には元々、醜女(しこめ)という意味があるが、現代では「男を堕落させる美女」つまり傾城(けいせい)の意味で使われることが多い。ではなぜ美女が男を堕落させるのか。
 美女の虜になった男は狭視眼になる。彼女らは時折思わせぶりな態度を示して気を引くから、仕事や学問を放り出して彼女のことばかりを考えるようになる。恋愛は成就するまでが一番楽しいと言うが振り回されれば楽しくない。中にはストーカーになってしまう人もいる。
 悪女はしばしば物語の主人公にもなる。「椿姫」や「マノン・レスコー」など娼婦を主人公にした小説は少なくない。1969年に公開された「悪女のたわむれ」という映画は余り有名な作品ではないが妙に私の印象には残った。リー・テイラー・ヤングの扮する悪女に翻弄される青年を演じたライアン・オニールは翌年に公開された「ある愛の詩」で大ブレイクした。
 悪妻という言葉もある。最も有名な悪妻はソクラテスの妻のクサンティッペだろう。ソクラテスは結婚について「良い妻を得れば幸せになれるし、悪い妻を得れば哲学者になれる」と語った。しかしクサンティッペは夫を駄目な人間にした訳ではないのだから悪妻とは言い難い。本物の悪妻とは七夕伝説の織女のような妻だろう。
 機織りが得意な織女と牛飼いの牽牛が晴れて夫婦になった。ところが二人共働かなくなった。昼夜を問わずセックスに励むからだ。セックス三昧で働かない二人に怒った天帝は二人の仲を引き裂き、一年に一度しか会えないようにした。二人は年に一度の逢瀬を楽しみにして仕事に励むようになった。
 これは七夕伝説に対する私の解釈だが、私がこの話をすると皆大笑いをするが納得する。子供向けのお伽話の中にはとんでもない話も含まれている。
 新婚の夫婦であれば毎日セックスに励む人もいるだろう。当然、睡眠時間が足りなくなって仕事に支障を来す。肉体的魅力だけではなく夜伽の技まで兼ね備えた魅力的過ぎる妻こそ、夫を堕落させる悪妻だろう。セックスレス夫婦が多いからこそ日本人はよく働くのか、はたまた忙し過ぎるからセックスレスになるのかは分からないが、セックスレスと草食化が少子化の原因であることは間違いあるまい。もし本当に日本人が世界一セックスに淡白であるならこのことに対する対策こそ必要だろう。性に対する蔑視や不潔視を温存したままで出産を奨励することは片手落ちではないだろうか。

衆愚

2015-04-16 09:49:43 | Weblog
 親日的と言われる台湾(中華民国)が日本製食品の輸入規制を強化した。台湾では福島第一原発の事故以降、東北・関東の5県の食品を輸入禁止にしており、日本からの輸入品に産地偽装があったことが原因らしい。5県の食品の輸入禁止でさえ過剰対応であり更に強化をするとは不可解とも思えるが、これは消費者団体の要求に応えた対応らしい。国としては当座の安全を確保するために暫定的に定めた禁止措置だがこの規制が一人歩きした。つまり千葉県産の食品=危険な食品という誤解を作ってしまったから、危険な食品の輸入許すまじ、ということになってしまったのだろう。
 世論はしばしば過剰反応をする。日本でも何度も同じようなことが起こった。アメリカで狂牛病(BSE)が発生すれば無条件に輸入禁止にしたし、その後も科学的には全く無意味な全頭検査が延々と続けられた。もし日本の規制が正しかったなら、日本に輸出できない危険な牛肉を大量に食べていたアメリカでは大勢の狂牛病患者が発生していた筈だがそんな話は聞いたことが無い。過剰で無意味な規制だったと言えよう。
 危険かも知れないという情報はすぐに拡大解釈される。農薬であれ合成保存料であれ多く摂取すれば危険だが、危険性を上回る有効性があるからこそ使われている。ところがまるで毒物であるかのように騒ぐ。本来ならこれらはメリットとデメリットを秤に掛けて評価すべきなのだがそんな冷静な視点は失われてマイナス面だけが指摘される。マスコミも下手にこれらを擁護すれば非難の矛先にされる恐れがあるから糾弾する側に回る。こうして集団ヒステリー現象が起こる。
 ダイオキシン騒動は忘れられない。ダイオキシンは猛毒だと騒がれて、ダイオキシンを発生するという理由で焚火をしただけで警察に通報されるような異常事態にまで至った。確かにダイオキシン類の中には有毒物がある。しかし焚火や焼き鳥で発生するダイオキシンの毒性など殆んど無い。これは塩素化合物の中には猛毒の化合物があるという理由だけで食塩(NaCl)まで猛毒と思い込むような錯覚だ。化学に対する無知が招いた非科学的な騒動だ。
 こんな集団ヒステリーにおいては政府とマスコミが鎮静する方向で努力しなければならないのだがそうならない。台湾での輸入規制にも見られるように政府は大衆に迎合する。マスコミも騒動のネタがあれば正義の味方面をして騒動を煽る。集団ヒステリーにお墨付きが与えられるからデタラメが世論になる。誠に情けない衆愚社会だ。
 韓国で親日的な発言をすれば袋叩きに会う。実際に殴り殺された人までいる。だから誰もがそんな発言をしようとはしない。心情的には親日的な人が発言しないからマスコミも政治家も反日一色に染まる。集団ヒステリーによる同調のほうが権力者による言論統制よりも恐ろしい。