俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

おにぎり

2015-04-01 10:14:09 | Weblog
 ある本でおにぎりの具材の人気ランキングを見て驚いた。
 ①鮭(66.9%)②たらこ(48.7%)③辛子明太子(47.8%)④ツナマヨネーズ(47.2%)⑤昆布(42.2%)⑥梅(41.1%)⑦おかか(36.3%)⑧炊き込みご飯(30.8%)⑨焼きおにぎり(30.1%)⑩高菜(29.0%)とのことだった。
 一番意外なのは大本命と思われた梅が6位であることだ。私が子供の頃は、おにぎりの具と言えば梅干しだった。塩の有害性が喧伝されていることによる健康志向から嫌塩と嫌煙が広がっているのだろうか。
 3月28日(土)にNHKの「マサカメTV」という番組で、熱いご飯を握るコツが紹介されていた。何と手を叩いてから握るとのことだ。叩いて痛みを感じた後であれば余り熱く感じないそうだ。これは3月8日に書いたオフセット鎮痛の一例であり、強い刺激の後では弱い刺激が苦にならないということだ。しかし熱く感じないということと熱くないということが同一であるかのように扱われていることに疑問を感じる。たとえ熱く感じなくても実際には火傷をするのだからこの方法は危険だろう。知覚を麻痺させるよりも最近話題になっている「おにぎらず」のほうが良いように思う。
 感じなくても無くなる訳ではない。熱いと感じるのは危険を感知するからだ。悲惨な現実から目を背けても見えなくなるだけであり現実は変わらない。むしろ直視すべきだろう。投手が肩や肘に痛みを覚えた時に痛み止めで誤魔化せば重大な故障を招きかねないし、頭痛薬も痛みを緩和するだけであって痛みの原因を取り除いている訳ではない。あるいは抗鬱剤は憂鬱な気分を緩和するだけであって欝状態の原因は放置されたままだ。不快な状態を緩和することと治療は全く違う。
 勉強をするのは学力を高めるためであって試験で高得点を取るためではないし、人の美しさとは健康さの証しであって病的な痩身は美しくない。表層的なことばかりに気を取られて大切なことが忘れられているように思えてならない。

領土

2015-04-01 09:41:47 | Weblog
 農耕民族が暮らす中国の北には蛮族が住んでいた。古代では匈奴や鮮卑や突厥、その後は女真族や契丹族や蒙古族などと呼ばれていた。彼らを隔てるために万里の長城が作られた。彼らの多くは遊牧民であり土地を所有せず中国人の農作物を略奪した。農耕という習慣を持たない彼らにとっては農作物と野生の木の実は何ら異ならず、それを略奪とは思わない。そこにある食物を採っただけだ。食物は採った者の所有になると彼らは考えていた。彼らには領土という概念は無く、家畜と家財道具だけが彼らの財産だった。土地を欲しがるのは農耕民であり、彼らは食物だけを求めた。
 日本の戦国時代に武将が領土争いをしたのは領土だけではなく領民も目的だろう。耕作地と耕作民は不可分であり領土が増えれば領民も領食(糧食)も増えて国が豊かになった。だから無人島など誰も欲しがらなかった。外国との関係においても同じことであり、どこの国にも属さない無人島が沢山あった。
 現代の領土争いは全然違う。困ったことには領民は要らないが領土だけが欲しいという領土拡張主義がある。つまり資源だけを目的とした領有だ。
 第二次世界大戦後のドサクサに紛れて編入したチベットやウィグルを中国が手放そうとしないのは資源が欲しいからだろう。文化の異なる異民族は邪魔なだけだ。「宗教はアヘンだ」というスローガンを掲げる中国共産党にとって仏教徒もムスリム(イスラム教徒)も犯罪者同然であり、料理にたかる蠅のようなものだろう。チベットやウィグルに対する弾圧は植民地支配よりも過酷なものになる。植民地であれば現地人を労働力として活用するが、資源が目的であれば邪魔なだけだ。宗教を放棄しない「野蛮人」は徹底的に弾圧して、抵抗すれば殺してしまおうということが彼らの本音ではないだろうか。
 現在、無人島が国際問題になるのは領土よりも領海が目的だからだ。その島が自国領になれば周囲の海が領海と排他的経済水域になる。中国は海洋資源を目的として無人島を領有しようとしている。南沙(スプラトリー)諸島も西沙(パラセル)諸島も無人島だ。武力を背景にして占領してしまえば領土・領海・排他的経済水域を拡大できる。邪魔になる住民がいないのだから理想的な領土だ。中国が海洋進出に狂奔するのは無人島こそ彼らにとって最高の領土だからだろう。