ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

薄紅は

2017-03-13 04:19:33 | 






薄紅は 溶けて消えゆく 桜かな     夢詩香






*もう春がそこまで来ましたね。桜の枝にも花の芽に色が見え始めてきたころでしょうか。美しい花の季節がもうそこまで来ている。

ソメイヨシノという桜は、薄紅というよりも白に近い。だが真っ白でなく、かすかに甘い紅が、光るようにかすかに白の中に存在している。それがまるで、何かが消えていくという予感を教えているようだ。夢幻の中に酔うていると、本当に何かを失ってしまいそうだ。

桜ははかなさの象徴でもあります。いっぺんに咲き、いっぺんに散っていく。つかの間の夢幻を見せてくれたかと思うと、あっという間に風の中に消えていく。花の終わった後は、また日常の日々がやってくるが。それはいつものことであるし、また来年も咲いてくれるから、別に平気なことになってはいるのだが。

本当は、毎年桜が咲くたびに、何かを失っていることに、人間は気付かないのだ。

今年の桜は、去年の桜とは違う。今の自分は、去年の今頃この桜を見ていた自分とは違う。何が違うだろう。そうすると、年をとって、いたずらに月日を過ごして、失ってしまったものが何かが、おぼろに見えてくる。それを確かに見るのがいやで、人間は桜の下で、酒を飲むのです。

どんちゃん騒ぎをしていれば、自分の真実の姿に気付かずに済む。

花の時はつかの間なのだ。人生はつかの間なのだ。馬鹿なことばかりやっていると、何かをなくしますよ。

枝の下で、うまい料理をつつきながら、ビールを飲んで騒いでいる人間たちに、桜ははかない薄紅の色で、語り掛けているのです。

今は咲いているけれど、わたしは明日には消えていきますよ。いつまでも、この世にいるとも限らないのですよ。ソメイヨシノは難しい花だ。自分で実を結ぶことはできない。

まるで、あだしよに降りてきた天女のように、いつかは時の中に溶けて消えてゆくかもしれないのだ。

だが、そのかすかな声が聞こえる人間はほとんどいない。いつでも人間は、何かを失った後で、初めて気づくのだ。







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