万年の まよひのはてに あらはれし まことのかほの あはれなるかな
*偽物の美人というのは、人から盗んだ美貌ばかり生きてきて、本当の自分を生きたことはほとんどありません。
ですから本当の顔は、ひどいことになっているのだが、ある日仲間のひとりが、そういう顔の実例を見せてくれました。それを見たら、まるで人間というより猿のような顔をしているのです。醜くなった猿、と大火は言ってましたがね、まさにそういうような顔になっているのだ。
人間がまだ、ほとんど猿と変わらなかった頃から、ほとんど何もやってこなかった魂なのです。そういうものがいるのだ。
おかしな顔だと笑うこともできない。それはむごいことになっているのです。
おそろしく醜く、馬鹿っぽい顔をしている。それを見ると人間がみんな逃げていくというような顔をしているのです。ブスということばがかわいく思えるほど醜い。いえ、ブスというのは人間の範疇にあることばだが、それはもう人間ではないという顔になっているのです。
人の美貌をかぶり、それでいやなことばかりしてきたからです。それだけでなく、天使を盗んでおそろしくいやなことをしたからです。ゆえに人間を落ちてしまったのです。
人間の本当の顔というのは、人間のすることによって変わります。人の美貌を盗んで馬鹿なことばかりしていれば、当然そうなるというような顔になるのです。
万年というほど長い間、嘘ばかりで生きてきた、偽物の美人の憐れな末路ということができましょう。