ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その6(終)

2010-03-31 06:30:21 | 寓話集まで
海の碧と空の蒼 暗転その2(男女声コーラス間) 語り  小山鼎浦(ていほ)は、「経国(けいこく)の大業(たいぎょう)は哲人(てつじん)の理想に俟(ま)つ」と唱え、衆議院議員となりましたが、「久遠(くおん)の基督教(きりすときょう)」を著した思想家・宗教家、また、文学者でもありました。 紳士 ―幽谷(ゆうこく)に芳樹(ほうじゅ)生(は)え  碧海(へきかい)は黙雷(もくらい)を宿(やど)す  鼎 . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その5

2010-03-29 20:18:31 | 寓話集まで
海の碧と空の蒼 暗転その1 紳士 ♪青葉茂れる桜井の… 婦人 ♪里のわたりの夕まぐれ… 語り  仙台藩伊達家御一家筆頭鮎貝家に生まれた落合直文は、明治以降の近代短歌の源流に位置するといわれる歌人、詩人、国文学者。 紳士 ―この歌は、楠正成を歌った直文の名作で、以前は、ラジオ、テレビでも、時々聴く機会があったものだが… 婦人 ―最近は、とんと聴くこともないですねえ。 紳士 ―「緋縅(ひお . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その4

2010-03-28 07:11:36 | 寓話集まで
第3部 海の碧と空の蒼 語り  ひとりの老紳士とひとりのご婦人が、こざっぱりとした身なりをして、洋傘をステッキ代わりにしてはおりませんが、小さな入り江を囲む港のあたりを、こんなことを言いながら歩いておりました。 紳士 ―ぜんたい、ここらのまちは怪しからん。木造2階建て瓦葺の昔ながらの町家があるかと思えば、鉄筋コンクリートのビルもある。中途半端に西洋の真似をして、表だけ四角く囲った店も多い。全く . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その3

2010-03-26 21:07:22 | 寓話集まで
第2部 古(いにしえ)の海辺 暗転中 紳士 ―夢か現(うつつ)か、幻か。遠き昔の都人(みやこびと)は、道の奥の潮汲みの、塩炊きの、松島を見る塩釜の、港の奥の、いや、一景島見る鼎の浦の、港の奥の細浦の、塩売り、塩振り、塩降らし、いや、外海、荒海、地獄崎、いや、祝いが崎の潮吹きの、潮汲みの、塩炊きの、翁(おきな)が技(わざ)の伊勢の国、いや、伊勢が浜、薪(まき)切り、薪取り、かまど焚(た)き、甘き塩 . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その2

2010-03-25 18:11:24 | 寓話集まで
第2部 古(いにしえ)の海辺 語り  ひとりの老紳士とひとりのご婦人が、ひとりは、羽織袴の正装を整え、ひとりは、仕立ての良い、暖かそうなコートを着込んで、とある浜辺の近く、昔は、海水を汲んで塩を炊いたと伝えられるあたりを、こんなことを言いながら歩いておりました。 紳士 ―ぜんたい、ここらの海は、怪しからん。白砂青松の美しき浜辺を遠目に眺め、ゆっくりと散歩をするのが、私たちの楽しみなのに、今日は . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その1

2010-03-24 06:49:33 | 寓話集まで
みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて 司会用台本その1です。 オープニング 語り  ひとりの老紳士とひとりのご婦人が、こざっぱりとした身なりをして、洋傘をステッキ代わりにしてはおりませんが、とある丘の上の、木の葉の落ちきった、まだ、若芽が芽吹くには早い桜並木の下を、こんなことを言いながら歩いておりました。 紳士 ―ぜんたい、ここらの丘は、怪しからん。鼎が浦の向こうに亀山 . . . 本文を読む

走れ はしれ

2010-03-22 06:35:45 | 寓話集まで
何処まで? 走れ はしれ いつまで? 走れ はしれ 理想は遠く? 走れ はしれ 空想は軽く? 走れ はしれ 科学は死んだ? 走れ はしれ 科学は万能でない しかし終わらない 理想は永遠でない しかし終わらない 空想は軽やかに しなやかに 着実に 走れ はしれ 思想は節操がない 奇想天外な仏法僧の趣き ヨブの受難 夢想の盗難 仮想の悲愴 秘蔵の仮装 火葬の肖像 正造の思想(そんなの知らない . . . 本文を読む

遠く霧笛が鳴っている

2010-03-21 07:40:43 | 寓話集まで
   漁船が右舷に傾いて出港していく 船尾に網を巻き上げるローラーがある どこかしら焦っている風情 商港の先 湾が くの字に折れまがるところ 船尾に黒い船名が鮮明でない 記憶も鮮明でない 雨は降っていない お日様も見えない さきほどは激しい夕立があった あまり暑くない 空気は澄んでいる 漁船はくっきり 右舷に傾いて出港していく 船名は 鮮明でない ずいぶん久しぶりに亀山に登った 大島の西海岸と . . . 本文を読む

ヨー・ソー・ベイン?

2010-03-20 06:10:55 | 寓話集まで
世の中には言っていいことと悪いことがある 世の中にはやっていいことと悪いことがある 身のほどをわきまえるということがある身分をわきまえるということがある 人間の置かれた立場というものがある どこからここにやってきて ここからどこに帰っていくのか 一年二年は短い 八十年も短い ぼくはいつも飛び出し過ぎることを繰り返して生きて来た。 気仙沼中学校の学校市長(生徒会長)選挙に立候補して 演説の最 . . . 本文を読む

コレスポンダンス

2010-03-19 07:12:27 | 寓話集まで
万物は照応する 十一月の午前の太陽に光る海 標高二百三十四メートルの亀山から眺望する無数の波がきらきらと光る海 大島は右手に 田中浜小田の浜と弓なりの二つの砂浜が続き 左奥から唐桑半島が前方に向かって突き出す その間 広々とした光る海 その中に 大前見島 小前見島 唐島と 無人の小島のシルエット 島影 島影とはこのことだ 陸の国計仙麻大島は 神社の創建された古代も 紀州や瀬戸内の海民が黒潮に . . . 本文を読む

朗読の午後へのご招待

2010-03-17 20:31:02 | 寓話集まで
語り 男人の中年の男が、すっかりフランスの紳士のかたちをして、ぴかぴかするペンを持って、白い紙の大きな束を抱えて、だいぶ奥深い湾の、大きな漁船の立ち並ぶあたりを歩いておりました。 男  ぜんたい、ここらのまちは、怪しからんね。旅人も、まちのひともひとりもいやがらん。だれでもいいから、早く捕まえて、タンタアーンと、言葉でスケッチしてやりたいもんだ。 語り そのとき、ふと、前を見ると、立派な大き . . . 本文を読む

エッセイ 大学で学んだこと

2010-03-16 20:25:22 | エッセイ
気仙沼の育英会の会報に書いたもの。 昭和五十年三月に気仙沼高校を卒業して、すぐ、気仙沼育英会と日本育英会から奨学金をいただいて、埼玉大学教養学部教養学科に入学した。 第一志望の某国立大学文系は、第二次試験で落ち、合格していた某私立大学の第一文学部は、はじめから腕試しで、入学金を入れておらず、当時、国立大学は、一期校、二期校と分かれており、浪人する意思も金銭的余裕もなかったので、二期校の中で、それな . . . 本文を読む

エッセイ うを座のこと(h15)

2010-03-15 20:28:26 | エッセイ
平成15年に、市も生涯学習関係の機関誌か何かに書いたもの。 気仙沼演劇塾うを座は、1998年、地域で長く演劇活動に携わったメンバーを中心に、「若い世代とおとなとが演劇の感動をわかち合い、芸術の深さにふれ、共に人間として成長し、地域の文化をつみ重ねる」という目標を掲げ、小学生から高校生までの塾生を募集し、発足しました。 同年の中間発表会、翌年の第一回公演オリジナルミュージカル「海のおくりもの」から、 . . . 本文を読む

偽説 鼎の浦嶋の子伝説 その3(終)

2010-03-14 21:44:43 | 寓話集まで
 夕闇せまりて山に登れば、港のまちの燈ともりたる光景、音に聞く函館山の夜景に勝るとも劣らぬものと見えたり。浦嶋の子、ここにいたりて、この眺め、かつてより知りたるものとも思へり。乙姫に問ひけらく。姫。答えて曰わく。「ここは二十一世紀が気仙沼、この山は安波山なり。」浦嶋の子驚き不審(あや)しみて言葉もなかりき。つらつら眺むるに神明崎が浮見堂のライトアップされ朱く水面に映りたるは常日頃親しみたるものなり . . . 本文を読む