ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

夢は仕事

2009-05-30 23:00:21 | 寓話集まで
夢は仕事 仕事は夢 幸福な仕事 幸福な夢 天使たちは歌い奏で舞踏い物語る 美しくやはらかに幼く若々しく 彼方まで広がる永劫の可能性 階梯を次のフロアまで駆け上るように 駆け上がるごとに 可能性が一つ一つ実を結び 別の方位の可能性を奪い去っていく 時間は無限だがひとりの人間にとっては有限だ 空間は無限だがひとりの人間はひとりの人間分の空間しか占有できない 天使はいつか鉛色の海の中に落ちる . . . 本文を読む

春よ 来い!

2009-05-29 00:02:18 | 寓話集まで
とめどなく続く川の流れ とめどなく続く星の川 とどめはなし かりそめの宿 かりそめの旅 かりてのない家 今生の別れ 今生の旅立ち 紺青の虚空 さまよえるボヘミアン さまよえる飼い犬 さまよ悪しき とりとめない語り とりとめない微笑 とりかえせぬ春 春よ 来い! 早く 来い! 忘れられない歌 忘れられない声 忘れてしまった名前 春よ 来い! 早く 来い! . . . 本文を読む

またまた区切り

2009-05-26 00:11:37 | Weblog
 第1期の霧笛80号までの作品を掲載し終えた。ここまで、延べ2000名を超えるかた(あくまで延べなんで実人数は100人いってないとは思うけど)に訪問いただいた。  詩を書いて、こんなに読んでもらえるなんて、滅多に無いこと。谷川俊太郎氏は別だけど。(なんて比べること自体おこがましい話。)  有り難いことだ。  さて、次からは、霧笛第2期(近々14号になる。)掲載のもの。あ、待てよ、その前に少し、宮城 . . . 本文を読む

視点

2009-05-21 23:32:47 | 寓話集まで
見下ろす 二三九メートルの上空から 女が食器を洗い 男がパソコンに向かうリビングルームを 屋根を透かして あるいは 模型の屋根を取り外したように ヘリコプターの操縦士や 落下傘の降下部隊でもなく 神ではなく UFOの宇宙人でもなく 全能の創作世界の語り手として 全能のくせに内部の精神世界は見えない振りをして 少年は自分の部屋の机に向かい目を閉じている 何かを夢想し 何かを苦悩し 何かを企て . . . 本文を読む

竹の子の皮をむく   

2009-05-12 23:16:58 | 寓話集まで
竹の子の皮をむく むくむくむく むくむくと土から生える 竹の子を折り取りもぎ取り むくむく むくむくと夥しく生え出す 竹の子を あたり一面に蔓延る地下茎から むくむくと生え出す 竹の子を 裏山の蔓延る竹林の 外延に押し寄せる地下茎の 底暗い地下世界の 地表面近くに蔓延る地下茎の むくむくむくと 延び延びて侵蝕する地下茎の 伸び伸びて日の目を見たばかりの 竹の子を 折り取りもぎ取り 包丁を突っ立 . . . 本文を読む

憂鬱と倦怠

2009-05-11 22:44:46 | 寓話集まで
壮年よ 理想は? 喜びは? 安楽の寝台に怠惰に寝そべって 老眼鏡をかけ 文庫本を読みふけり 眠くなれば眠り 肝心要の肝臓を休め 心臓を労わる 百年期の半ばに近付き 頭がほとんどつかえる天井を 葺きかえることも出来ず生まれかわりも出来ず あばら家に息も絶え絶えに 隠遁せよ 壮年よ 読書と夢想に時を費消せよ 理想は若者が継承する 老いたるものは未だ往かず 隠遁せよ 壮年よ 志を明らめよ 使命 . . . 本文を読む

夢で逢えたら

2009-05-05 00:44:21 | 寓話集まで
夢で逢えたら素敵なこと 甘い夢魔が逢瀬に 淫して 夢でもし逢えたら素敵なこと ひとりごちる夜の星に 願いをかけて 夢でもしあなたに逢えたら素敵なこと 枕のしたに 想いを密めて 夢で逢えたら無敵なこと 甘い甘い夢魔の罠に 囚われ うつつのしがらみをすりぬけくぐりぬけ 重いおもいをふりはらい 月夜を翔け上昇する 夢でもし逢えたら . . . 本文を読む

待つこと

2009-05-03 23:07:37 | 寓話集まで
待つことそれが生きるということ 歩くことそれが生きるということ 立ち止まらずにそぞろ歩きながらただひたすらに待つこと 街路の両側のウインドウを眺め 行き交うひとびとをやり過ごし 楽しみながら 退屈しながら 遊歩する 待つこと ゴッドを待つ 啓示を待つ 悟りを待つ 喜びを待つ (時間つぶしの気晴らしの  下らない刺激を求めず) 闇の中のひとすじの光明を待つ 法悦を待つ 涅槃を待つ 孤独な遊 . . . 本文を読む

時節詠

2009-05-02 23:19:48 | 寓話集まで
春五月 川ばたのススキヶ原が突如 一面枯れはてたか と目を怪しんだが 怪しむも道理 次第は逆で 枯れたススキの群落の 流れの側と 土手の側と 双方から 鮮やかな濃い緑の縁どりが発ち上がり 冬枯れの景色に溶け込みひそんでいた枯れ草色の一群れが 不意に起ち上がったのだ ほんの里山の山あいを発し 一世代前は町場の周縁をかたどった流れの 短い中流域の終わりの 川原を覆う 一息に生気づいた枯れススキの原 . . . 本文を読む