ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

斎藤環解説 水谷緑まんが まんがやってみたくなるオープンダイアローグ 医学書院

2021-03-24 23:53:22 | エッセイ オープンダイアローグ
 斉藤環氏は、「はじめに」にこう書く。「本書は、オープンダイアローグをテーマとした、世界でも初めての「まんが解説書」です。 おそらく、いま出版されているいかなる文献よりも、わかりやすくコンパクトに、オープンダイアローグの説明がなされていると思います。…最初に気軽に手に取ってもらえる本を目指しました。」(3ページ) 私の場合は、オープンダイアローグに関しては、雑誌を含めればもう十冊以上 . . . 本文を読む

地球は発熱している

2021-03-22 21:00:19 | 月刊ココア共和国 投稿詩
地球は発熱している資源が活用され採取され採掘され開発され搾取され生産され消費され激しく踊り続け排出され廃棄され酷使され蝕まれ平熱を超えて放っておけば病原体をまき散らし死に至る病となって不可逆の閾を超えて瀕死の白く美しい鷺のように横たわり息絶える . . . 本文を読む

吉増剛造・和合亮一対談 言葉の力 東日本大震災10年 河北新報2021.2.28

2021-03-10 17:59:44 | エッセイ
 見出しに「光差し込む詩紡ぐ」、「吉増剛造さんと和合亮一さん 新作と対談」とある。吉増剛造氏の詩「石巻―2121.2.11」、和合亮一氏の詩「光の走者」、そしてお二人の対談が掲載されている。聞き手、構成は河北新報生活文化部副部長の宮田建氏。《吉増剛造、あるいは儚い旅人》 さて、吉増剛造氏は、現在の詩人として、谷川俊太郎と双壁をなす偉大な詩人である。すでに神話的存在であり、〈氏〉とか〈さん〉とかつけ . . . 本文を読む

現代詩手帖 2021年3月号 特集・詩と災害 記憶、記録、想起 思潮社

2021-03-08 21:55:40 | エッセイ
 まもなく3月11日が巡ってくる。十年目である。現代詩手帖でも、自由詩10編、短歌50首、俳句50句の震災アンソロジーを冒頭に、特集が組まれている。 ここで書こうとするのは、気仙沼に住む私に関わりのある人の作品や論考を紹介しようとするものであって、特集の全体像や文学的な意義を論じようとするものではない。私自身の現在を表白しようというのでもない。ごくシンプルな覚え書きである。《短歌・菊池謙、熊本吉雄 . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅷ 港のカウンターバー

2021-03-06 21:39:56 | 波止場のエディ
 夜の波止場に霧が深い。 マッチを擦るつかの間、サングラスの横顔が浮かび上がる。 バー・カウンタ-の小さな四角い籠の中に、きっちりと、店の名前の入ったマッチが並べてある。そんな時代遅れの酒場が、俺には似合っている。 「この国の、どこかに、まだそんなお店が残っているかしら?」 エリカ、この街には、この夢の街には、まだ、一軒だけ、化石のようにそんな店がある。 バーテンダーは、うんとドライなマティーニを . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅶ 港の珈琲ハウス

2021-03-05 21:25:42 | 波止場のエディ
 南気仙沼駅を降りて、真正面、駅前広場の真ん中に、落合直文の歌碑がある。 「砂の上にわが恋人の名をかけば波のよせきてかげもとどめず」 そのまま、まっすぐ、駅前大通りを歩いていくと、海の市があり、魚市場があり、港がある。 気仙沼湾、世界の海を航海するまぐろ漁船が係留する気仙沼漁港。 岸壁沿いの道路に面した珈琲ハウスの、窓際のテーブルに向かい合って、「エディ、あなたの名前を、ガラスの上に書いて、拭き消 . . . 本文を読む

三陸新報2021.3.5の社説に「内湾エリアに観光案内の解説板」が取り上げられる

2021-03-05 20:19:59 | 波止場のエディ
 今朝の三陸新報の社説は、内湾、港町エリアの観光案内板設置の件である。先般も事業については記事として取り上げられていたところであった。「解説板は2003年、気仙沼魚市場前から浮見堂付近までの17カ所に設置された。「港町ブルース歌碑」「港町恋人スクエア」「出港準備岸壁」「海の道」などがある。」 震災の後、一基だけ残っている神明崎の小高い境内にある「五十鈴神社と猪狩神社」の解説板には、その場所にまつわ . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅵ 笑う魚

2021-03-04 21:12:44 | 波止場のエディ
 波止場では、時おり、不思議なものに出合う。岸壁から、ふと海面を見下ろすと、大きなスズキが一匹、悠々と泳いでいる。じっと、その様子を窺っていると、ふっと、振り返り、ニヤリとわらう。「魚が笑ったっていうの?冗談でしょ!」 「いや、エリカ、その魚は、本当に笑った。俺は、嘘はつかない。嘘と下卑た冗談は、趣味じゃない。」 「洒落たジョークは別、でしょ。」 「洒落た洒落、じゃ、洒落にならない。」 「で、その . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅴ 岸壁のポケットパーク

2021-03-03 20:50:12 | 波止場のエディ
 気仙沼では、山に木を植える人々がいる。山に木を植える漁師たちがいる。 「森は海を海は森を恋いながら悠久の愛紡ぎゆく」と歌った歌人もいる。 そして、内湾に面した岸壁の遊歩道のベンチを置いた一角の、車道との間の打ち捨てられた花壇に、どうだんつつじを植える若者たちがいる。 「ポケットパークが、緑に囲まれて生き返ったようだ、というひともいる。連休の間は好天続きで、まだ、根を張り切れない樹木は、喉がカラカ . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅳ レストラン・エースポート

2021-03-02 21:20:33 | 波止場のエディ
 内湾を見下ろす、旅客船ターミナル3階のレストラン・エースポート。対岸に浮見堂の朱の色が浮かび上がり、海面に光の線が映る。 松の実とバジリコのパスタ、ゴルゴンゾーラの薄いピザ、キャンティの赤、ドルチェは、不整形なティラミス。 「このあたりの街割りは、不整形な四辺形で、昭和の初めの大火のあと、その不整形な敷地に合わせて短い期間に建て替えられた特徴ある建物が続いているんだそうだ。つい最近まで、まちのひ . . . 本文を読む

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅲ 浮見堂の夜(続)

2021-03-01 22:54:34 | 波止場のエディ
 「エディ、ここの灯りはまぶしすぎるわ。」 神明崎浮見堂の欄干に身をもたせ、エリカは、傍らのエディにささやく。 トレンチコートの襟を立てて、エリカの肩を抱き寄せ、「ああ、もう少し柔らかな光が、俺たちには似合う。大人の恋には、明るすぎる光はかえって邪魔だ。」 対岸の岬のうえのプラザホテルのコンベンションホールは、ガラスの壁面から、にぎやかなパーティーの灯りがあたりを照らし出す。大勢の着飾った婦人たち . . . 本文を読む