ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

波止場のエディ 気仙沼2005 Ⅱ 浮見堂の夜

2021-02-28 22:45:47 | 波止場のエディ
 気仙沼の内湾、神明崎の先に浮かぶ朱塗りの浮見堂は、十数基の明るい灯具に照らし出され、さまざまな広葉樹や石灰岩の岩肌の暗い背景の上に浮かび上がる。「神明崎は、全体が石灰岩の岩礁で、中には、深い鍾乳洞が走っている。今は、コンクリートの岸壁と道路に塞がれて水たまりのような管弦窟も、実は鍾乳洞で、もとは、波の音が反響し、妙なる調べを奏でていた。奥には、弁天様と地蔵像が安置されている。」「エディ、弁天様と . . . 本文を読む

波止場のエディⅠ 気仙沼2005

2021-02-27 21:38:26 | 波止場のエディ
 波というほどの動きもない穏やかな水面に、赤やオレンジや少しばかりの青の光が映っている。 リアス式海岸の奥深い湾入の奥の奥、うらぶれた旧市街に囲まれた内湾の、湾口の島へ向かう航路の船着場に、トレンチコートの襟を立てた一人の男がたたずむ。 「エディ、あなたは、いつもそうね…やさしいけど、冷たい。わたしの気持ちなんてわかろうともしない。」 港にほど近い、ショット・バーのカウンターに先ほど . . . 本文を読む

郡司ペギオ幸夫 やってくる 医学書院

2021-02-27 21:24:53 | エッセイ
 医学書院の〈シリーズケアをひらく〉の一冊。 著者は、1959年生まれ、東北大学理学部から大学院博士課程を出て、早稲田大学基幹理工学部・表現工学専攻教授とのこと。 正直に言うと、この本は,一読して一体何のことを書いているのか掴みきれなかった。 いや、書いている中身は大変面白く,確かにその通りであると思わされたのではある。 文脈がつかめない、ということだろう。諸学問の布置において、どういう場所に位置 . . . 本文を読む

連載小説 波止場のエディ 気仙沼2005 予告編

2021-02-26 23:37:30 | 波止場のエディ
 保存の日付は2005年になっている。書いたのは多分、そのもう少し前。もちろん震災前である。当時、夢波止場実行委員会なる団体があって、ボスは加藤英一、気仙沼湾観光協会宣伝事業部会の別働隊であったといっていい。そこで作ったポスターの原案のひとつが見出しの画像。同じフォルダの中に保存してあった。今回、加藤英一氏の了解を得て掲載した。 で、「波止場のエディ」であるが、当時、市、商工会議所、観光協会などで . . . 本文を読む

気仙沼内湾の観光案内板復活

2021-02-25 15:20:41 | Weblog
 今朝の三陸新報に内湾の観光案内板復活の記事が出ていた。これは、震災前、魚町のお神明さんから、魚市場の間の内湾~海の道の遊歩エリアに、何基だろう、20基くらいにはなっただろうか、建てていたイラスト付きの案内・解説版のことで、リアス・アーク美術館の山内宏泰学芸員(現副館長)がイラスト、前東北大学災害科学国際研究所の川島秀一教授(元リアス・アーク美術館副館長、気仙沼図書館副館長)と私が文章を担当し、市 . . . 本文を読む

ベージュ 谷川俊太郎 新潮社

2021-02-24 20:17:57 | エッセイ
 谷川俊太郎の最新詩集。20年7月30日の発行で、手元にあるのが、11月15日の第3刷である。何部刷っているのかは分からないが、やはり相応に読まれているということにはなるのだろう。 2編目の「香しい朝」は、(62のソネット以前)と記され、1951.4.4の日付の未発表作品のようである。あとは、不明のものもあり、2010年以降のものが、抜けている年もあるが、年あたり1~2編ほど、19年初出が多く、2 . . . 本文を読む

一冊の本を

2021-02-19 21:48:41 | 月刊ココア共和国 投稿詩
一冊の本を書きたい私の書き紡ぐ言葉で世界の不思議を説き明かし人間の未来を指し示すそんな本を書きたいその一冊で歴史を変えてしまうそんな本を書いてみたい聖書だとか資本論だとかいやもっと見果てぬ夢である美しい一冊の本ほんとうのことだけが記された絶対零度の本決して開かれることのない一冊の本 . . . 本文を読む

安富歩 生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 NHKブックス

2021-02-16 22:43:36 | エッセイ
 安富歩氏は、1963年生まれ、京都大学大学院で経済学を学び、現在東京大学東洋文化研究所教授。山本太郎の「れいわ新選組」から参議院選挙に出馬したり、女装家であったり、何かと話題は多い方である。ネットで見ると、性自認は女性であるが、恋愛対象は女性で、パートナーは、学問上でもパートナーである女性であるという。いささかややこしい、とツッコミを入れたくもなるが、この本のテーマである〈選択の自由からの脱却〉 . . . 本文を読む

現代詩手帖 2021.2月号 小特集 マーサ・ナカムラの世界

2021-02-08 21:40:31 | エッセイ
 作品特集としては、「現代詩、新しい風」ということで、新進気鋭の詩人たちの作品を集めている。その中でも、先頭を切って走っているのがマーサ・ナカムラ氏ということになるのだろう。ページを開くと冒頭が、新連載詩「柔らかな壁を押す」の第1回「鏡子と学校」である。 別に、小特集として「マーサ・ナカムラの世界」と銘打ち、同じく新進の詩人である田中さとみ氏、山﨑修平氏と、本人による鼎談と、詩人の藤井貞和氏、哲学 . . . 本文を読む

山口周 ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニズムを取り戻す プレジデント社

2021-02-03 23:00:25 | エッセイ
 山口周氏は、1970年生まれ、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとのこと。慶應義塾大学文学部哲学科から、同大学院の美学美術史の修士を出て、電通、ボストンコンサルティンググループ等で、戦略策定、文化政策、組織開発などに従事、とある。 なかなかに興味深い履歴である。華麗な経歴、と言っていい。 「はじめに」は、こう書き出される。「ビジネスはその歴史的使命をすでに終えているのではないか?」(12ペ . . . 本文を読む