ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

とおりゃんせ

2011-02-11 22:31:47 | ご挨拶
とおりゃんせ とおりゃんせ 神社の鳥居の傍らで キツネか タヌキか 天狗か カラスか 待ち伏せる とおりゃんせ とおりゃんせ 魔物が棲むという 魔界へ 恐れも知らず いたいけな 幼な子が迷い込む 毬をつきながら 童謡を謡いながら 迷った先は どこの細道か 菅原道真のいまだ棲むという 恨み辛みの結界か 怨霊の領分か とおりゃんせ とおりゃんせ 見返りのない 純粋な贈与 遊びながら 知らぬ間に . . . 本文を読む

専制君主と月

2011-01-27 23:08:39 | ご挨拶
専制君主が月を見上げる 月は三日月 専制君主がつぶやく 月よ我が宮殿へ参れ 謁見を許す 月がにやりと笑う 月が地上に近づき語る 王よ 青い髭の王よ おまえの甘言が処女を誘い 甘い夜が おまえのみに甘い夜になる 繰り返されるその夜が絶えるとき 私は おまえを訪問しよう そしてまた かすかに笑う 専制君主が月を見上げる 何も語らず ふいと 寝室にとって返す 月の重力が耐えきれぬ というように 寝 . . . 本文を読む

これでいいのだ

2011-01-25 22:06:42 | ご挨拶
ホンワカホンワカ ホンソワカ 正面の ガラスのドアから白い壁を廻り込んで 冷たい風を避け ホンワカと陽を浴びて 陽だまりに佇んで ホンワカホンワカ ホンソワカ タップタップタップ ランランラン ギャーテ ギャーテ ハラソギャーテ ボジソワカ マカハンニャララ ランラララン 冷たい一月の 陽だまりに佇んで 風を避けて 暖かく ホンワカホンワカ ホンソワカ 何も考えず のんびりと 何も . . . 本文を読む

冷えている

2011-01-18 21:44:43 | ご挨拶
夜空が晴れわたって 上天に月が光っている そばの南向きの高い空に オリオン座が くっきりと見える 冷えている 晴れわたった空のもと 地上は しんしんと 冷えている まちのネオンサインが 透明な空気の向こうに くっきりと 浮かび上がる 遠くの大島の稜線が 暗い世界に ぼんやりと 沈んでいる 橋から連なる旧国道を ぽつりぽつりと 車が往来する 冷えている 雪は 降っていない 雨も 降っていな . . . 本文を読む

私はクールだ

2011-01-10 16:59:46 | ご挨拶
私はクールだ ホットでない ネクタイを緩めたままで 斜に構えて 行動したくない 行動できない じっと 見つめている 眺めている 掴み取らない 見て 聞いている 触らない 味うことをしない 漂う匂いは覚える 記憶する 行動しない 覚醒したまま 眠っている 夢を見て 語らない 黙ったまま 座っている . . . 本文を読む

もうひとつの世界

2011-01-10 16:57:41 | ご挨拶
もうひとつの世界が 笑う この世界は 見えない もうひとつの世界が 泣く この世界は 冷たい 暖かな温もり 肉体の実在 あなたがいるから リアルは暖かい 屋外は 冷たい この世界は ない この世界は冷たく 意味がない もうひとつの世界が ある 豊かな意味を育んで もうひとつの世界が ある 実在に虚構が重なって はじめて 社会は暖かい ストーブで灯油が燃焼するから この部屋は暖かい 服 . . . 本文を読む

笑うクジラ

2011-01-02 23:28:25 | ご挨拶
クジラが笑う ウヒョーウガー ウガガー ウガー 沖では オキアミが大漁だ 大きな口を開けて オキアミを掬いこむ 飲み込む クジラが笑う ウヒョーウガー ウガガー ウガー 沖では オキアミの葬式だ 悲しく 悲しく オキアミが 仲間を弔う チ チ チ チ オキアミが 仲間を弔う クジラが泣く キァーキァー キゥーンキゥーン キィー 太平洋の 向こう岸の母と こちらの岸の 遥かな距離を測っ . . . 本文を読む

新年の辞

2011-01-01 01:49:50 | ご挨拶
新年だ 新年である 新年です 新年であります さて 新年にあたって 新年だから何が目出度いか よくわからないのでありますが まあ 新年 目出度し目出度し であり 明けましておめでとうございます とまずは 型どおり ご挨拶を申し上げるわけであります とはいっても 暦の上で年が改めっても 去年も良きことはあったわけで 今年も良きことばかりあるわけでもないでしょう 目出度い目出度いと 浮かれてばかり . . . 本文を読む

信号が赤

2010-12-31 00:47:17 | ご挨拶
信号が ここから交差点四つ 続けて赤 横断歩道橋まで三つ その先の一つ 直線の道路の見える限りが赤 その先にもあるが 横断歩道橋に遮られ 見えない ここから見える限り 信号が 四つ続けて赤 休日 急ぐ旅でもない のんびりと買い物の午後 車は適度に往来し この信号が青になれば 後はスムーズに流れる あの頃は いつも急いで 何かにとらわれ 落ち着かず 急かされていた あの頃 三十年前 一月前 . . . 本文を読む

雪だねえ

2010-12-27 19:25:48 | ご挨拶
雪だねえ しんしんと 雪が降るねえ この時期は やっぱり 雪がいいねえ 雪が白く 降り積もるねえ 屋根や木を白く 覆っていくねえ 駐車場は 出入りする車で 降り積もるすきがないねえ 外は 透明なきりっとした空気が 心地よいくらいだねえ でも 透明なガラスの壁の内側の屋内は 程よく暖かく 珈琲の苦さと酸味が 美味いねえ 冷たいソフトクリームを載せた珈琲ゼリーも 心地よいくらいだねえ 窓の外 . . . 本文を読む

川が流れる

2010-12-23 00:34:52 | ご挨拶
ごうごうと 川が流れる 流れる ごうごうと 川が流れる 流れる 強い雨のあと いつもは水面のうえの 川原のうえを 川が流れる 流れる 川原の草木を ごうごうと 押し流して 川は流れる 草の嘆きなど 構わず 悲鳴など 聞かず ごうごうと 川は流れる 流れる 暗闇の中を 暗い川が 暗い衝動のまま ごうごうと 押しつぶして 押し流して 根こそぎやっつけて ごうごうと 川が流れる 流れる . . . 本文を読む

トンビが

2010-12-21 23:36:52 | ご挨拶
杉の林の丘のうえを 低くトンビが飛んでいる 風に載って滑空している くるり と向きを変える またくるり と向きを変える するどく 下天を偵察し 獲物を探索し ことあれば 急降下する態勢で しかし 何事もなく ゆうゆうと 何事も悩むことなく 空を滑る 私は 窓の中の 安全な場所で 見られることなく 一方的に ぼんやりと 眺めている 掴み取るとか くちばしでかすめ取るとか そんな攻撃的な考えと . . . 本文を読む

四分の三の月

2010-12-17 22:48:04 | ご挨拶
陽が低く西の空に傾いたころ 白昼の 薄白い月が 東の丘の上に顔を出す 薄白の光のなかに 兎の耳が 薄青灰色にぼんやりと沈む ように浮かぶ 兎が餅を搗いている らしい よく見えないが 上弦か下弦か分からないが 四分の三の月 見落としそうな 透き通りそうな 白昼の月 希薄な見掛け だが やがて 陽が沈めば 陽の光を煌々と照らし返して 濃密な存在を 明らかにする だろう 事績の記されない 月読 . . . 本文を読む

喜ばしき労働

2010-12-15 22:03:35 | ご挨拶
本を受け取り バーコードをなぞり 表と裏とふき取り 仮置きのラックに置き 本棚に戻す 物語や 歴史や社会や自然や技術や芸術や 絵本など 分類に従って 配列する 本を受け取り バーコードをなぞり 子どもに 大人に 貸し出す 抽象的なモノではない 文字や 絵の詰まった 本 濃密な内実 毎日繰り返す 豊潤な 芳醇な 喜ばしき作業 喜ばしき知の労働 . . . 本文を読む

図書館に

2010-12-13 23:04:29 | ご挨拶
図書館に 行く こども 図書館に 行く 母親 父親 図書館に 行く 若者 高齢者 絵本を 読み物を メルヘンを ファンタジーを ロマンスを ノベルを 美味しいケーキの作り方を 暖かなマフラーの編み方を 楽しいクリスマスの飾りつけを 人間の歴史を 社会の動向を 世界の成り立ちを 図書館帰りの こども 楽しげに 満ち足りて 古くて新しい世界に踏み出して . . . 本文を読む