ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

國分功一郎 原子力時代における哲学 晶文社

2020-06-30 21:28:13 | エッセイ
 いま、現役の哲学者といえば、まずは國分功一郎氏と言って間違いないというべきだろう。世に、少なくとも大学の数だけは哲学教師のポストはあり、その数だけの哲学者は存在するわけではあるが、ここまで刊行した哲学書が広く世に受け入れられている点で、國分氏を最右翼というべきだろう。 もちろん、鷲田清一氏はいるが、禅僧のような侘び寂びの佇まいにも達して、現役と言った時の若さ、漲る力という意味では、國分氏、という . . . 本文を読む

斎藤環『原発依存の精神構造』と中沢新一『日本の大転換』についてのメモ

2020-06-27 12:17:18 | エッセイ
斎藤環『原発依存の精神構造ー日本人はなぜ原子力が「好き」なのか』(新潮社)と中沢新一『日本の大転換』(集英社新書)についてのメモ(ブログ掲載にあたっての注;2012年11月15日(木)のツイートから。このブログで書評を始める前のものを一連にまとめる。当時の感想である。では、現時点で私がどう読むかということは、両方の本をもういちど読んだうえでないと言えない。なんかちょっと違うことを書きそうではある。 . . . 本文を読む

松岡正剛 日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く 講談社現代新書

2020-06-17 22:41:57 | エッセイ
 松岡正剛と言えば、編集者、稀代の読書家、大学教授ということだが、編集工学研究所の創設者であり、なんと言えばいいか、現在においては、重厚な教養人でありつつ、一方で「編集工学」などという新しい言葉を作って世の中に提示するような、軽やかな新しもの好きの側面もある。早稲田の仏文中退後に広告会社に勤めた経歴もあるらしい。 松岡正剛=たらこスパゲティ、と私などはすぐに連想してしまう。今回も、冒頭から、たらこ . . . 本文を読む

延江浩 小林麻美第二章 朝日新聞出版 あるいは トーキョー1968~78

2020-06-11 22:42:34 | エッセイ
 本文はこう書き出される。「小林稔子(としこ)は10代でモデルにスカウトされて「小林麻美」になり、歌手、女優としても活躍した時代のミューズであった。」(6ページ) 時代の流行りのアイドルの魅力を写真やおしゃべりをちりばめて露出し、その都度消費されてすぐに忘れ去られてしまうたぐいのタレント本というのも山ほどあったものだが、今もまだ、その手の出版物は存続しえているのだろうか?読んでいる最中は、アイドル . . . 本文を読む

隣町珈琲の本 mal” 1号 合同会社隣町珈琲 あるいは ”コモンの喪失”

2020-06-08 21:07:06 | エッセイ
 mal″(マル)という誌名は、日本語で言えば“ワル“ 。マルなのにワルというと駄洒落になってしまうが、その下に、“Les mauvais frères sont de retour”(悪い兄貴たちが帰ってくる) の一行が、サブタイトル、あるいはタイトルへの注記として置かれている。malは名詞で悪、mauvaisは形容詞で悪 . . . 本文を読む

月の窓 月刊ココア共和国 6月号電子版掲載詩

2020-06-02 12:29:09 | 月刊ココア共和国 投稿詩
吹き抜けの上の高いところに開いた幅三〇センチメートル高さ一八〇センチメートルの縦長の窓天空のまん丸い月がちょうどその幅に収まっている長い耳のうさぎが餅つきする大きな明るい月その手前を透き通るヴェールのような薄墨色の淡い雲が通り過ぎる里に帰る月の姫が乗るには儚すぎる雲はらはらと涙を落とすかのような雨を降らすには薄すぎる雲仰ぎ見る貴公子がひょうと鏑矢を放ち射落とすには軽すぎる雲長い耳のうさぎが夜の夢を . . . 本文を読む

宇野常寛 遅いインターネット 幻冬舎 あるいは〈グローバルな市場の強力なプレイヤーたち〉

2020-06-01 23:21:08 | エッセイ
 すいすいと読める面白い本であったことは間違いがない。ただ、読み進めながら、どこか違和感が付きまとう。 こないだ、糸井重里氏がほぼ日のコラムで、自由について書いておられた件で少々考えるところあり、ブログにアップしたところ、自治総研、前福島大学の今井照先生から、糸井重里の歴史的な位置みたいなものはこの本に良くまとまっているよと教えていただいた。 吉本隆明から糸井重里への流れ、なるほど、そうだな、的確 . . . 本文を読む