ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

狐の嫁入り 月刊ココア共和国 10月号電子版掲載詩

2020-09-29 19:09:34 | 月刊ココア共和国 投稿詩
開港地の暗闇の斜面の細い坂道を行列が登っていく先頭の羽織袴の男が薄明るい提灯を下げてうつむいてだらだらと行列が続き白無垢の花嫁衣裳の花嫁が角隠し面を伏せて楚々と向かう開け放たれた屋敷へ周旋屋の誂えたほの暗い座敷へ行きは好い佳い帰りは怖い晴れた日に汽船の行き交う港を見下ろして軍船の帰港を寄港を待ちわびてもののふの道は死ぬことと心得て白無垢の花嫁衣裳の花嫁が角隠し耳隠し鼻隠し尖った口隠しひげ隠し尻尾を . . . 本文を読む

戴冠式   

2020-09-29 15:45:41 | 月刊ココア共和国 投稿詩
太陽の王冠を外して仮面舞踏会のマスクを脱ぎ捨てて真実を撒き散らし生身の人間として中央に屹立つ言葉には依らず一度咳払いをして意図の存在を知らしめ影響はその都度3メートル四方に及びステップを踏みジャンプを跳ぶたびに移動し進行し痕跡を残し影響を拡げ流行を支配するしかしマスクの下には白塗りの顔真っ赤なまん丸い華笑われて笑われて笑われて素顔はどこにもない涙が一粒描かれて流れない涙乾いた涙乾涸びた涙固定された . . . 本文を読む

精神看護 2020.9 斎藤環氏による読書会『開かれた対話と未来』その3 医学書院

2020-09-28 21:59:26 | エッセイ オープンダイアローグ
 齋藤環氏のオープンダイアローグについての読書会の報告の3回目、最終回が、『精神看護』9月号に掲載されている。取り上げた書物は、齋藤氏監訳、ヤーコ・セイックラとトム・アーンキル著『開かれた対話と未来』(医学書院)である。(前2回の報告についても、すでにここで紹介している。) それとは別に、今号の特集は、「思春期のゲーム依存、ネット依存」であり、他の連載も含め、興味深い記事満載である。そのいちいちも . . . 本文を読む

樋口直美 誤作動する脳 医学書院

2020-09-24 23:15:25 | エッセイ
 医学書院の「シリーズ・ケアをひらく」の一冊。最近、このシリーズを読むことが増えた。現代日本で最もアクティブでアトラクティブで挑発的なシリーズ、と言っていいと思う。 著者は、レビー小体型認知症の当事者である。 レビー小体型認知症とは、脳の神経細胞の中にレビー小体という、ある種のたんぱく質の塊りが蓄積することによっておこるレビー小体病のうち認知症の症状を有するもののことだという。「私は、レビー小体型 . . . 本文を読む

村上龍 MISSING失われているもの 新潮社

2020-09-12 20:19:32 | エッセイ
 村上龍、5年ぶりの長編小説らしい。 前作は『オールド・テロリスト』か、読んでなかったな。その前の『55歳からのハローライフ』は読んでいるが、こちらは連作短編というべきだろう。2013年2月に読んで感想をツイートし、その後、14年6月に、NHKでドラマ化され放映時に書いたものをつけ加えて、ブログにアップしている。読んだ時、私はちょうど56歳くらいで、人生の時期としてまさしくぴったり当てはまるところ . . . 本文を読む

当時のブリティッシュ・ロック

2020-09-03 20:04:57 | エッセイ
 最近、昔のテン・イヤーズ・アフターとかアルヴィン・リーのCDを買うついで、というか、ウィッシュボーン・アッシュも聴きたくなって、「ライブ・デイト」を買った。(ちょっとしてから、百眼の巨人アーガスも)、で、フリーもライブを買って、しばらく前に買っていた、ハンブル・パイの「ロッキン・ザ・フィルモア」も聴いて、このあたり繰り返し聴いている。で、ロリー・ギャラガーの「アイリッシュ・ツアー’7 . . . 本文を読む

村上春樹 一人称単数 文藝春秋

2020-09-01 23:20:40 | エッセイ
 6年ぶりの短編集とのこと。長編は、『騎士団長殺し』が2017年であるが、短編集は『女のいない男たち』が2014年か。 長編と短編交互に、このくらいの間隔で出してもらえるというのが、読む側としてちょうどいいかもしれない。 ここで、ちょっと変なことを書いておくが、引き続き村上龍の長編小説「MISSING 失われているもの」を読んでいる。どうも、これら二つの世界をどこか混同している。春樹の世界と、龍の . . . 本文を読む