ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

梶原さい子 落合直文の百首 短歌の最初の一滴 歌人入門⑦ ふらんす堂2023

2024-08-17 22:57:32 | エッセイ
 梶原さい子は、歌人。1971年気仙沼市唐桑町生まれ。ブックカバーに「河野裕子に出会い、歌を詠み始める」とある。【落合直文、近代短歌の源流】 落合直文は、今の気仙沼市、片浜に居館を構えた鮎貝氏の出。学問として、また、実作者として、両面において、明治以降の最初期の正統な文学者である。日本近代文学の創始者、と言っても過言ではないだろう。著者による解説の冒頭に、歌人前田透の言葉を引いている。「近代短歌の . . . 本文を読む

現代詩手帖2024 4月号 特集朗読/リーディングの地層

2024-07-23 14:52:19 | エッセイ
 今回は、本の紹介というよりは、ここで取り上げられた世界と、私の歩んできた道の拡がりの重なり合いを確認したい思いに駆られたというべきかもしれない。 社会の中で、詩を書くこと、詩を朗読すること、歌を作ること、歌を歌うこと、舞台に立ち芝居すること、街場で哲学すること。 朗読、という特集だが、詩と演劇との連関はここではそれほど前面に語られておらず、詩と音楽の近縁性というか、歌うこと、さらには踊ることと詩 . . . 本文を読む

自治体学2024.3 vol.37-2 自治体学会誌 追悼大森彌先生

2024-06-27 21:44:48 | エッセイ
 大森彌先生も彼岸に渡られた。 昨年3月刊の『自治体学』vol.36-2の特集は、「追悼西尾勝先生・新藤宗幸先生」であった。冒頭の座談会には、大森彌先生も出席しておられた。 松下圭一、田村明、そして、西尾勝、新藤宗幸… 冒頭、岡崎昌之先生(法政大学名誉教授)も、同じことから書き起こされている。「ちょうど1年前の『自治体学』(36-2号)は、西尾勝先生、新藤宗幸先生の追悼特集号であった . . . 本文を読む

時代遅れのKY あるいは、優れたコピーライターの不在

2024-06-22 11:15:40 | エッセイ
 小池百合子のキャッチフレーズが、東京都大改革3.0とか、「もっと!世界で一番の都市 東京」だとか言っている。 3.0というのは、3期目ということだろうが、これはちょっと前に、コンピュータのソフトのバージョンから来て、よく使われた「なんとか2.0」というネーミングの使い回しであるが、一般的に言葉というのは、ちょっと前に流行ったのが一番ダサいということになっている。新たなバージョンで、またまた大きな . . . 本文を読む

原田勇男さんが、認知症患者の人生を詩に 河北新報2024.6.13にて

2024-06-13 11:51:25 | エッセイ
 今朝の河北新報社会面で、原田勇男さんの詩の取り組みが紹介されていた。 仙台市内の認知症専門病院「杜のホスピタル・あおば」を運営する医療法人が、「認知症は人生の価値を低下させない」という理念の下、「認知症患者の人生を聞き取り、詩にして展示する活動を続けている」という。「詩という芸術になることで本人の尊厳を守る」のだと。 認知症については、本人も、尊厳と希望を持って生き続けることが、充分に可能である . . . 本文を読む

青木美希 なぜ日本は原発を止められないのか 文春新書2023

2024-04-16 15:04:18 | エッセイ
 青木美希氏は、ジャーナリスト。朝日新聞の社員であるが、記者からは外されたらしい。 さて、この書物は、原発について、社会、政治、経済から考えようとするとき、必読の教科書といって良いと思う。 帯には、「安全神話に加担した政・官・業・学そして、マスコミの大罪!」と記されている。 わたしが思うに、原発とは経済的な代物であり、でなければ核軍備の代替物である。ここでいう経済とは、本来の「経世済民」の意味の経 . . . 本文を読む

2023紅白歌合戦雑感

2024-01-05 13:10:44 | エッセイ
 今日の時点で、のんびりこんなことを書いているのは間抜けな感じだが、夕べのどこかの国の首相よりはましかもしれない。 家でのんびり紅白歌合戦を眺めながら思ったことを記してみたい。ただし、途中、吉田類の酒場放浪記とかで、気仙沼が映っているという情報があって、気仙沼市田中前の「あじくら」の様子と旧向洋高校の震災遺構伝承館から、岩手県釜石の話題あたりまで中抜けした。そのあいだに寺尾聰の歌を聴き損ねたのは残 . . . 本文を読む

竹内英典 伝記 思潮社2023

2023-12-26 21:36:13 | エッセイ
 竹内英典氏は、書物のなかに住まう人、というべきであろう。 あるいは、薄暗い図書館の書棚をめぐって、読み親しんだ本を手に取って、その一行から詩を編み出す人である。書物のなかの、大方の人々からは「見捨てられたままの一行」(冒頭の「伝記1」より)を拾い集め、書きとめる司書であり、書記である。 この『伝記』という詩集は、竹内氏に先立って、人間の歴史の中で書物のなかに身を隠していた人々の紡ぐ物語を掬いとっ . . . 本文を読む

夕べの酒井俊は、徹底的に自由だった。

2023-11-24 15:28:13 | エッセイ
 気仙沼市南町ヴァンガードで、久しぶりに、酒井俊のライブ。ヴァンガードを守り支え続けた、酒井俊にこだわり続けた故昆野好政氏の7回忌を偲んで、開催された。 アルトサックスの林栄一、ピアノの田中信正とのトリオで「だいだらぼっち 東北への旅・初冬」と題したツアーの一環である。11月22日は古川TOUSA、23日は気仙沼ヴァンガード、24日(金)仙台KABO、25日(土)山形ちゅうしん蔵、26日(日)は、 . . . 本文を読む

佐々木洋一 でんげん 思潮社2023

2023-10-25 11:38:33 | エッセイ
 佐々木洋一は詩人である。『でんげん』は、その最新の詩集である。 〈でんげん〉とは何だろう? 電源だろうか、今の世で、〈でんげん〉と耳にして、まず思い浮かぶのは〈電源〉に違いない。DX(デジタルトランスフォーメーション)を支える電気、その安定供給に欠かせない電源としての原発、と連想が浮かぶ。ここでは、そうではないはずである。しかし、〈電源〉という連想は、この詩集、そして冒頭のタイトル詩に通奏低音の . . . 本文を読む

佐藤厚志 荒地の家族 新潮社2023

2023-10-16 15:11:54 | エッセイ
 このところ、読書の紹介が間が空いていた。精神保健福祉士の資格取得に向けた実習が、事前事後の準備やまとめを含めて、けっこうな時間を使った。読み終えて積んである本を、このあと、順々に紹介していきたいと思う。 ということで、まずは、仙台の書店員の芥川賞作家である。 2017年に新潮新人賞、2020年には第3回仙台短編文学賞大賞、2021年には、三島由紀夫賞候補という経過を経て、2023年の芥川賞受賞と . . . 本文を読む

なぜ、図書館カフェが賑わうと嬉しいのか 気仙沼図書館関係

2023-08-04 10:01:16 | エッセイ
ー気仙沼人はセンスが良いー 先日、気仙沼図書館のカフェ・エスポアールで時間を過ごした。図書館夏休み行事のお化け話の会に、妻が参加していて、迎えに行きがてらである。 玄関横のスペースのカフェコーナーも、相応に賑わっていた。アイスコーヒーを飲んで、本を読みながら、しみじみと嬉しさを味わった。 震災後の図書館再建にあたって、地区館である本吉図書館長、そしてⅠ年間のみの気仙沼図書館長として、計画作りの実務 . . . 本文を読む

はたけやまなぎ・文 白幡美晴・絵 畠山重篤・エッセイ ととのはたけと、うたれちゃったしか ヒマッコブックス2022

2023-07-21 22:14:12 | エッセイ
 タイトルの作品は絵本前半で、後半は、最終ページから読み始める、畠山重篤氏のエッセイ「”いきもの好き“少年記」となる。 はたけやまなぎ君は、重篤氏の孫、気仙沼市唐桑小学校の1年生だった。現在は3年生である。白幡美晴さんは、なぎ君から見ると叔父さんの配偶者で、はんこイラストレーターであり、NPO法人森は海の恋人の事務局も担う。 カバーにこう記される。「”森は海の恋 . . . 本文を読む

畠山美由紀&藤本一馬『夜の庭』リリースツアー 気仙沼公演with小池龍平2023.7.16

2023-07-17 12:18:39 | エッセイ
 7月16日(日)、気仙沼中央公民館ホールで、久しぶりに、畠山美由紀のライブが行われた。 30年も前の、ホテル望洋でのPort of Notes名義のライブ、その後の喫茶ヴァンガードでのライブ、震災後、複数のミュージシャンと一緒だった市民会館大ホール、松岩の八幡神社境内の野外ステージでと、気仙沼に戻ってくるたび聴かせてもらっている。 今回は、ギタリスト藤本一馬との双頭名義のアルバム発売を記念したラ . . . 本文を読む

ヤニス・バルファキス著・江口泰子訳 クソったれ資本主義が倒れた後の、もう一つの世界 講談社2021

2023-07-16 11:37:10 | エッセイ
 ヤニス・バルファキスは、カバー裏の紹介を見ると、1961年、アテネ生まれの経済学者で、ギリシャの財務大臣を務めた。2015年ギリシャ経済危機のさなかのことで、その後、2018年にアメリカの大統領選に名乗りをあげたバーニー・サンダース上院議員らとともにプログッレシブ・インタナショナルを立ち上げ、世界中の人々に向けて民主主義の再生を語り続けているという。【SF小説であり、経済学書】 この書物は、SF . . . 本文を読む