ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

場所

2011-06-10 21:26:17 | 寓話集まで
場所はあるのです 震えているのです 知らず知らず病んでいるように みんな震えているのです 舞い上がるように 確かな地面に立ちながら 奥の奥 底の底は みんな震えているのです 震えなければ 寒くて寒くて みんな凍えてしまいます 場所も消えてしまいます あからさまな電気のきらめきは 奥の奥 底の底に封じ込めて あからさまなはじまりの爆発は 未知の彼方に忘却して じっと 温もる体温を保持している . . . 本文を読む

ジャパネスク

2011-06-10 21:23:54 | 寓話集まで
二十一世紀のぼくたちはいつも ぼくたち自身を再発見しなければならない ぼくたちは まぎれもない日本人だが いくばくかは イギリス人で フランス人で ドイツ人で かなりのところ アメリカ人だ 多少は ロシア人で イタリア人で スペイン・ポルトガル人ですらある でも あまり 中国人ではなくなったし 韓国人でもないようだ 歌舞伎や能や狂言や新内節や 浮世絵 最近は童謡唱歌すら ぼくらは忘れていて . . . 本文を読む

からだからだからだから

2011-06-10 21:18:29 | 寓話集まで
リアス・アーク美術館のワークショップで、「体・からだ・カラダ」と題して面白いことをやっていた。十月十三日の日曜日、最終日の閉館間際行ってみた。  学芸員の山内宏泰氏が、若い男の腰に柔らかい紙を巻きつけ終え、ガムテープを引きちぎってその上に張りつけていく。体の線に沿って、たるみが生じないよう丁寧に張る。丁寧であるが、手慣れている。へそからふとももの途中、丁度一番太くなるあたりまで、あれはなんと言う . . . 本文を読む

テールランプが(推敲)

2010-10-07 22:09:12 | 寓話集まで
 昨夜の「テールランプが」を推敲して、「嫌いだ嫌いだ」シリーズでないほうのバージョンで載せるとすると、たとえば以下のようになる。哀しいという形容詞がなくなる。 テールランプが 橋を渡って右折 ヘッドライトが二台 少しの間をおいて直進 橋を渡ってくる 何ごとの不思議もない 夜の街を テールランプとヘッドライトが往来する  ま、どちらがいいかは、読者のお好み次第。  「嫌いだ嫌いだ」シリー . . . 本文を読む

月はやさしい

2010-08-20 23:52:11 | 寓話集まで
月はやさしい 穏やかに 見守ってくれる 微笑んで 見守ってくれる 月はけして自ら光らない 見えない太陽の光を受けて やさしく輝きかえす 全てを受け入れて やさしく 贈り返してくれる けして支配することなく 受け入れる 受け止める 月はやさしい 傷つきやすい心を やさしく受け止めてくれる 受け入れてくれる ほの暗い空を ほの明るく染めて 何を奪い取ることもなく 全てを受容する 月はや . . . 本文を読む

赤い月が

2010-08-16 21:59:13 | 寓話集まで
半月からちょっと欠けた赤い月が 西の山に落ちていく 少しだけ陰った部分が ちょうどほほ笑むまなざしのようだ どこか不思議に懐かしい 私を 見守ってくれるような 暖かく語りかけてくれるような あのアンデルセンの「絵のない絵本」の月は この月だったに違いない 世の中の さまざまな物語を見て さまざまな幸福と不幸を見下ろして そっと 私だけに語りかけてくれる そんな 暖かな 懐かしい月 高台の私 . . . 本文を読む

珈琲

2010-06-25 20:40:45 | 寓話集まで
珈琲を淹れる お湯を沸かし 豆を挽いて と冷蔵庫開けると 貰いものの挽いた豆があって 先にそちらを使う 人生で 何度 私は珈琲を淹れただろうか いまはもう随分長く ペーパードリップを使って 苦い珈琲 あるいは 酸味の珈琲 カフェインを体内に取り込んで 緑茶とも紅茶とも ましてコーラとも違うカフェインを (もちろん他の成分の違いがあるのだろうが) 珈琲は別格だ 生きることの根幹に触れる気がす . . . 本文を読む

日が沈む

2010-06-21 23:25:18 | 寓話集まで
今日も 美しい夕映えのなかを 日が沈んでいく 曇りの日も 雨の日すらも 雲の向こうで 美しく 日が沈んでいく ひとが泣いても 笑っていても 喧嘩していても 美しく 日が沈んでいく 太陽が生まれた はるか昔から 太陽が消滅する はるか未来まで 変わりなく 日は沈んでいく ひとが生まれた はるか昔のそのまた昔から ひとが消滅する はるか未来を超えて 変わりなく 日は沈んでいく そして夜が明 . . . 本文を読む

有縁 無縁

2010-04-27 21:48:58 | 寓話集まで
宇宙は一つ 地球は一つ 一人は一人 宇宙=地球=一人 一人は小さい 地球は大きい 宇宙は無限 一人≠地球≠宇宙 一人は一人 一人は個人 二人は二人 二人は一対 三人は三人 三人はトリオ 四人は四人 四人はグループ 仲間 同志 他人 ライバル 宿敵 民族は民族 民族は同胞 一国民は一国民 はらから 兄弟 家族 離散家族 崩壊家族 鍋を囲む寒い冬のだんらん 外は雪 外は吹雪 うちには . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その6(終)

2010-03-31 06:30:21 | 寓話集まで
海の碧と空の蒼 暗転その2(男女声コーラス間) 語り  小山鼎浦(ていほ)は、「経国(けいこく)の大業(たいぎょう)は哲人(てつじん)の理想に俟(ま)つ」と唱え、衆議院議員となりましたが、「久遠(くおん)の基督教(きりすときょう)」を著した思想家・宗教家、また、文学者でもありました。 紳士 ―幽谷(ゆうこく)に芳樹(ほうじゅ)生(は)え  碧海(へきかい)は黙雷(もくらい)を宿(やど)す  鼎 . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その5

2010-03-29 20:18:31 | 寓話集まで
海の碧と空の蒼 暗転その1 紳士 ♪青葉茂れる桜井の… 婦人 ♪里のわたりの夕まぐれ… 語り  仙台藩伊達家御一家筆頭鮎貝家に生まれた落合直文は、明治以降の近代短歌の源流に位置するといわれる歌人、詩人、国文学者。 紳士 ―この歌は、楠正成を歌った直文の名作で、以前は、ラジオ、テレビでも、時々聴く機会があったものだが… 婦人 ―最近は、とんと聴くこともないですねえ。 紳士 ―「緋縅(ひお . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その4

2010-03-28 07:11:36 | 寓話集まで
第3部 海の碧と空の蒼 語り  ひとりの老紳士とひとりのご婦人が、こざっぱりとした身なりをして、洋傘をステッキ代わりにしてはおりませんが、小さな入り江を囲む港のあたりを、こんなことを言いながら歩いておりました。 紳士 ―ぜんたい、ここらのまちは怪しからん。木造2階建て瓦葺の昔ながらの町家があるかと思えば、鉄筋コンクリートのビルもある。中途半端に西洋の真似をして、表だけ四角く囲った店も多い。全く . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その3

2010-03-26 21:07:22 | 寓話集まで
第2部 古(いにしえ)の海辺 暗転中 紳士 ―夢か現(うつつ)か、幻か。遠き昔の都人(みやこびと)は、道の奥の潮汲みの、塩炊きの、松島を見る塩釜の、港の奥の、いや、一景島見る鼎の浦の、港の奥の細浦の、塩売り、塩振り、塩降らし、いや、外海、荒海、地獄崎、いや、祝いが崎の潮吹きの、潮汲みの、塩炊きの、翁(おきな)が技(わざ)の伊勢の国、いや、伊勢が浜、薪(まき)切り、薪取り、かまど焚(た)き、甘き塩 . . . 本文を読む

みやぎミュージックフェスタ2008イン気仙沼 海によせて その2

2010-03-25 18:11:24 | 寓話集まで
第2部 古(いにしえ)の海辺 語り  ひとりの老紳士とひとりのご婦人が、ひとりは、羽織袴の正装を整え、ひとりは、仕立ての良い、暖かそうなコートを着込んで、とある浜辺の近く、昔は、海水を汲んで塩を炊いたと伝えられるあたりを、こんなことを言いながら歩いておりました。 紳士 ―ぜんたい、ここらの海は、怪しからん。白砂青松の美しき浜辺を遠目に眺め、ゆっくりと散歩をするのが、私たちの楽しみなのに、今日は . . . 本文を読む