一九九三年
アヴァンギャルド(前衛)は価値あることばだろうか
変革に理はあるようだが
この変革は理念に基づきながら
生活に根づいた
ラジカルでありつつ
ソフィスティケイティドな
進歩するというより
生活を保守する変革である
拡大する生産力を信仰する革命でなく
地球と人間の限界を明晰に認識する変革である
理想を遠い未来に実現しようとする革命でなく
いま・ここでできることから始める変革である
三月二 . . . 本文を読む
一瞬よりはいくらか長く続く間
私はあなたに希う
永遠
と言って下さい
確かな瞳でこの耳もとで
流れる雲は移ろいゆく現在の色
それは何色?
瑠璃色?
紺碧色?
薄桃色?
薄鼠色?
一瞬よりはいくらか長く続く間
私はあなたに希う
刹那
と言って下さい
虚ろな瞳でこの足もとで
流れる風は転移する現在の形態
それは何の形?
裏がいつのまにか表に裏返る紙テープの輪
内側がいつのまにか外に引っ繰り返る不 . . . 本文を読む
そりゃautomatic ってったってダダイズムじゃありません
ブラックですブラック
ってったってジョークじゃありません
ブラックミュージック
R&B ソウル ロック レゲエ
ルーツをたどればジャズ ブルース ゴスペル アフリカ
アフタービート 4ビート 8ビート 16ビート
time will tellー時が教えてくれる
時がぼくらに教えてくれた
アカシヤの雨にうたれたrainny day . . . 本文を読む
(胸いっぱいの愛を)
導かれた飛行船“ツェッペリン号”に乗って何処まで飛んで行こうか
生きていれば
良い時もあれば悪い時もあるさ
おまえに打ちのめされて
幻惑されて
意志の疎通ができなくなってしまっても
胸いっぱいの愛を
胸いっぱいの愛を
おれはハートブレーカー
おれのこころはずたずたさ
生きて愛するおとめよ(おまえは放蕩な―でなく本当におんな)
移民のうたう歌
のような悲しい歌をうたって
. . . 本文を読む
―日常生活の奇跡― 三月三十一日日曜日午後ぼくにとってはじめての及川満奈美ピアノ教室発表会 オープニングは上級生の女の子と先生自身が連弾する呉田軽穂の「赤いスイートピー」(呉田軽帆は荒井由美=松任谷由美=ユーミンが他の歌手に曲を提供するときのペンネームだそうだ) 第一部と第三部のこどもたちの発表 ブルグミュラーとか 樹原涼子 ハイドン モーツァルト J・レノン&p・マッカートニーの . . . 本文を読む
レコード針を買った
小さかったこどもにダメにされて数年ぶりで
古いレコードを聴いた
ロバータ・フラックのダニーに捧ぐ
ジョージ・ベンスンのギミ・ザ・ナイト
イーグルズのホテル・カリフォルニア
デイヴ・メイスン
ウィッシュボーン・アッシュ
テン・イヤーズ・アフター
庭の電話の引込み線にトンボが群れて止まっている
暑すぎる夏の晴れたゆふぐれ
陽が落ちる西の山脈―熊山(市民の森のある山)と手長山 . . . 本文を読む
虚栄の市場 空虚しい縁日に行くところですか
パスリ セイジ ロウズマリイとタイム
バジル オレガノ マジョラム
などを買いに行くところですか
そこにはわたしがかつてほんとうに愛したひとが住んでいます
そのひとに会ったら
よろしくと伝えてください
伝えて下さいと言われても
門前町のお祭騒ぎのなかにいて
パスリ セイジ ロウズマリイとタイム
バジル オレガノ マジョラム
などを買うことを知らず
ほん . . . 本文を読む
「あかるいきざし」を聴きながら
バラが一輪咲いている
ローズピンクよりずっと明るい薄桃色のふちどりで芯の白い花弁が二十数枚重なっている
頼りないヴォーカルと単調な繰り返しに充ちた新しいCDを
四歳になろうとする子供が
体を揺らしながら何度もスタートボタンを押して繰り返し聴いている
アコースティックなサウンドと思想を
エレクトリックなシステムでもって表現する
ここちよいパラ . . . 本文を読む
空に手が届く
銀河の魚を手にすることができる
神々しく流れる銀河を泳ぐ魚に導かれ
星々の間を滑ることができる
それはあなたの力だ
ぼくの力だ
それはぼくの力ではない
あなたの力ではない
あなたの思いと
ぼくの思いとが
不可思議な宇宙の力を呼び覚ます
ウヲ!ウヲ!ウヲ!
とんがり頭に銀色スーツの秋刀魚たちがメッセンジャー幻惑者
海の世界の情報を伝える導入する
緑のくちばし緑の甲羅のカメが海中 . . . 本文を読む
青いキュウリ
青白いネギ
茶色いタマネギ
つちいろのジャガイモ
緑色のピーマン
赤トマト
淡い緑のキャベツ
みずみずしいレタス
青いりんご
だいこん
にんじん
ごぼう
かぶ
さといも
かぼちゃ
濃いみどりのかぼちゃ
中身は黄色いかぼちゃ
たねの詰まったかぼちゃ
いちご
赤いいちご
もも
桃色のもも
匂いたつ甘やかなもも
桃割れのもも
赤ピーマン
黄ピーマン
青とんがらし
鷹の爪
. . . 本文を読む
おれは
何でもないさかなだ
種名も科名も
属名も
持たない
固有名詞など以ての外だ
おれは
何でもないさかなだ
人知れず
南の島の海辺を
泳ぎまわる
のうのうと独りで
おれは
何でもないさかなだ
誰もおれを名づけない
誰もおれを分類しない
誰もおれに話しかけない
のうのうと独りだ
おれは
何でもないさかなだ
なまえを持たないさかなだ
単なる一尾のさかなだ
青く透明な海水と . . . 本文を読む