ぼくは行かない どこへも
ボヘミアンのようには…
気仙沼在住の千田基嗣の詩とエッセイ、読書の記録を随時掲載します。

首相夫人の礼装のこと

2019-10-29 21:05:38 | エッセイ
 安倍総理大臣の昭恵夫人の、「即位礼正殿の儀」でのファッションの件がいろいろ取りざたされている。 いいとか悪いとか、相応しいとか相応しくないとか、私としてはどちらでもいいというか、まあ別に構わないんじゃないのとも思う。 ただ、なんか不思議な感じはした、とは言いたい。 これまで、こんなことが問題になるケースはあんまりなかったような気がする。 ドレスコードという点では、許される範囲内には納まっていると . . . 本文を読む

霧笛131号〈編集後記〉

2019-10-24 22:44:35 | 霧笛編集後記
◆あっという間に秋の彼岸、定年退職してからもはや二年半ともなる。しかし、なんだろう。ふと気づくと、追い立てられるような気持ちが失せている。人生において何ごとか成し遂げねばならぬという切羽つまった思いは消えたように思える。世に出ねばならぬ、名を上げねばならぬ、とどこかで思いこんで生きてきた。七月に五冊目の詩集を上梓した。四~五〇歳代にかけて、仕事のこと、文化芸術にかかること、ひとりでやったことは一つ . . . 本文を読む

斎藤環 オープンダイアローグがひらく精神医療 日本評論社

2019-10-23 20:06:01 | エッセイ オープンダイアローグ
 この本は、タイトルにオープンダイアローグという言葉を含んでいるが、オープンダイアローグという画期的な方法の紹介を主眼に置いた書物ではない、ように思える。精神医療における方法であるが、もっとひろく福祉、教育の分野で大きなパラダイム転換をもたらすきっかけともなりうる対話を中核に据えた方法の、シンプルな紹介のための本ではないように見える。 端的に「オープンダイアローグ」を学びたいという読者には、すでに . . . 本文を読む

赤い薔薇 霧笛131号から

2019-10-22 23:08:21 | 2015年4月以降の詩
赤い薔薇は赤い 赤い薔薇が赤いのは自明のこと そんなことを言っても何の意味もない   白い薔薇は白い 真夜中の薄明りのなかでも 白い薔薇は白い 密閉された灯りのない地下室でも 白い薔薇は白い それもまた自明のこと しかし ひとつも灯りのない密室で 白い薔薇は白くは見えない もっとも濃い緑の葉も茎ももちろん花も見えず 薔薇の存在そのものを知ることができない 手 . . . 本文を読む

ブリリアントな多面体  霧笛131号から

2019-10-21 23:12:06 | 2015年4月以降の詩
四本の弦楽器の諧調(ハーモニー) 鍵盤楽器の旋律(メロディ) 不協和を抱え込んだ和音(コード)   不協和こそが相和する discordこそがconcord   世に災いの種は尽きない 世に喜びの種は包蔵される 災いは乱暴に放り出されてある 喜びは箱の中に隠されてある 見出して取り出さなければならない しかし 往々にして喜びの陰から災いがしゃしゃりでる . . . 本文を読む

畠山重篤 牡蛎の森と生きる 「森は海の恋人」の30年 中央公論新社

2019-10-13 22:27:02 | エッセイ
 聞き手は、鵜飼哲夫氏。  これまで重篤さんの刊行された書物は欠かさず読んでいるはずだが、聞き書きの形態ははじめてだと思う。聞き手の聴く力によって、自らペンをとって書く場合とはまた違ったものが読める、ということになるのかもしれない。自分ひとりではあえて書くという発想とならない経験や記憶が、聞き手の問い口の良さによって引き出される。  最後のあとがき風対談にこうある。   「畠山  . . . 本文を読む

ヤーコ・セイックラ+トム・アーンキル著 齊藤環監訳 開かれた対話と未来 医学書院

2019-10-07 21:11:01 | エッセイ オープンダイアローグ
 副題は、「今この瞬間に他者を思いやる」。 オープン・ダイアローグ関係では、このブログで紹介するのは6冊目となる。雑誌の特集で抜けているものもあると思うが、国内で刊行された単行本はすべて読んでいることになるかもしれない。私も、ずいぶん入れ込んでいるものだ。 原題は、“Open Dialogues and Anticipations”であり、この邦題は直訳である。だが、この直 . . . 本文を読む