政府は今月10日、歳出総額13.2兆円の2023年度補正予算案を閣議決定した。ところが今年度も税収が空前の大きさと予想されるのに8.9兆円の赤字国債発行をするのだそうだ。鈴木財務相は、不足財源を補う国債増発が22年度2次補正予算より縮減したことを引き合いに、平時の歳出構造に向けたひとつの道筋を示すことができた、と記者団に語ったそうだが、すっかり借金体質が身に沁み込んでしまっている。
国の借金が1千兆円を越すと言うのに、しかもこれまでにない高い税収が見込めるのに、借金を返さずに更に借金を増やしながらも、平然と平時の歳出構造に道筋が出来たとは、財務大臣がこんな能天気では国の将来が極めて心配だ。
お金は刷ればいくらでもあり、莫大な借金もどうにかなると他人事であるが、現在の日本は金の使い方に無神経になっている。その一つがゼロゼロ融資である。これは新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組みの融資である。当初は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関が手掛けていたが、利用が相次ぎ政府系金融機関では対応が間に合わなくなったため、2020年5月からは民間金融機関も融資できるようになっていたが、その背後には国がついていた。
零細企業や個人事業主なら最大6000万円、中小企業は最大3億円を実質無利子で借りられ、返済が滞っても、元本の8割か全額を政府の財源を裏付けとした信用保証協会が肩代わりする等の特典があるため、コロナの影響が無くても倒産しそうな企業まで借りまくったそうだ。その結果、貸付実績は19兆円にまでになり、不良債権も2022年度末に約8700億円、回収不能額は既に697億円に上っているそうだ。民間の融資分も含めれば不良債権は2兆円を超す可能性があるそうだ。
2023年8月の「ゼロゼロ融資」を利用後の倒産は57件で、初めて倒産が確認された2020年7月からの件数は1025件と1000件を超えたそうだ。この理由について「原材料やエネルギー価格の高騰、人手不足を背景にした人件費の上昇や営業機会の損失などで、回復途上にある中小・零細企業の経営は打撃を受けており、そこにゼロゼロ融資の返済が始まり、経営が破綻した」と善意に解釈している。大部分の企業がそうであると期待したいが、当初からコロナ禍が無くても倒産必然と言われているゾンビ企業も噂に上がっていた。コロナ禍の緊急事態であっても、もっと大切に国の金を扱って欲しかったものである。
別の例は官民ファンドの乱立である。官民ファンドは、民間だけではリスクを負いきれない分野に政府の資金を投じ、民間投資の呼び水とすることを狙ったものだ。当然赤字になるリスクが大きいが、最近は存続自体が自己目的化し、非効率な事業が温存される危うさもあるのだそうだ。すなわち、官民ファンドと言っても官僚の天下り先の確保の意味合いが強く、投資先を見つけて投資する額より組織の維持のための経費が大半を占める組織もあるとのことだ。情けない話だ。2023.11.11(犬賀 大好ー960)