日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

今の日本は金の使い方に無神経すぎる

2023年11月11日 17時58分08秒 | 日々雑感
 政府は今月10日、歳出総額13.2兆円の2023年度補正予算案を閣議決定した。ところが今年度も税収が空前の大きさと予想されるのに8.9兆円の赤字国債発行をするのだそうだ。鈴木財務相は、不足財源を補う国債増発が22年度2次補正予算より縮減したことを引き合いに、平時の歳出構造に向けたひとつの道筋を示すことができた、と記者団に語ったそうだが、すっかり借金体質が身に沁み込んでしまっている。

 国の借金が1千兆円を越すと言うのに、しかもこれまでにない高い税収が見込めるのに、借金を返さずに更に借金を増やしながらも、平然と平時の歳出構造に道筋が出来たとは、財務大臣がこんな能天気では国の将来が極めて心配だ。

 お金は刷ればいくらでもあり、莫大な借金もどうにかなると他人事であるが、現在の日本は金の使い方に無神経になっている。その一つがゼロゼロ融資である。これは新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組みの融資である。当初は日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関が手掛けていたが、利用が相次ぎ政府系金融機関では対応が間に合わなくなったため、2020年5月からは民間金融機関も融資できるようになっていたが、その背後には国がついていた。

 零細企業や個人事業主なら最大6000万円、中小企業は最大3億円を実質無利子で借りられ、返済が滞っても、元本の8割か全額を政府の財源を裏付けとした信用保証協会が肩代わりする等の特典があるため、コロナの影響が無くても倒産しそうな企業まで借りまくったそうだ。その結果、貸付実績は19兆円にまでになり、不良債権も2022年度末に約8700億円、回収不能額は既に697億円に上っているそうだ。民間の融資分も含めれば不良債権は2兆円を超す可能性があるそうだ。

 2023年8月の「ゼロゼロ融資」を利用後の倒産は57件で、初めて倒産が確認された2020年7月からの件数は1025件と1000件を超えたそうだ。この理由について「原材料やエネルギー価格の高騰、人手不足を背景にした人件費の上昇や営業機会の損失などで、回復途上にある中小・零細企業の経営は打撃を受けており、そこにゼロゼロ融資の返済が始まり、経営が破綻した」と善意に解釈している。大部分の企業がそうであると期待したいが、当初からコロナ禍が無くても倒産必然と言われているゾンビ企業も噂に上がっていた。コロナ禍の緊急事態であっても、もっと大切に国の金を扱って欲しかったものである。

 別の例は官民ファンドの乱立である。官民ファンドは、民間だけではリスクを負いきれない分野に政府の資金を投じ、民間投資の呼び水とすることを狙ったものだ。当然赤字になるリスクが大きいが、最近は存続自体が自己目的化し、非効率な事業が温存される危うさもあるのだそうだ。すなわち、官民ファンドと言っても官僚の天下り先の確保の意味合いが強く、投資先を見つけて投資する額より組織の維持のための経費が大半を占める組織もあるとのことだ。情けない話だ。2023.11.11(犬賀 大好ー960)

原発回帰の前にトイレ無きマンションの改善を

2023年11月08日 14時54分38秒 | 日々雑感
 今年5月31日、発電用原子炉の運転期間の原則40年を、原子力規制委員会が認めれば最長20年延長でき、最長60年可能とすることが決まった。しかし、同時に、原則40年最長60年という制限は維持しつつ、経済産業大臣が認可すれば原子力規制委員会の審査などで停止していた期間を運転期間から除外することで実質的に60年を超えて運転可能とすることも決まった。

 原発の運転延長は、岸田政権が打ち出した原発回帰の柱だ。2011年の福島第1原発事故以来、原発の安全神話が崩れ、相次いで運転休止に追い込まれ、原発は日影者扱いになっていたが、岸田首相は、昨年8月に運転延長に加え、新規建設、再稼働の促進、等原発政策の転換を検討するよう指示した。日影者を日の当たる場所に移したのだ。安全神話の復活との声も聞かれる。しかし、原発の残した負の遺産に対する対策はここでは何等触れられていない。

 負の遺産の一つが核廃棄物の処理場問題だ。原発事故で莫大な核汚染物を排出したが、その最終処分場は決まっていない。また、原発事故後、廃炉が決まったかあるいは検討中の原子炉が2019年3月時点で24基あるそうで、ここからも大量のゴミが出てくるだろうが、どこに保管するのだろう。

 これらの原子炉の多くが現在廃炉作業中と思われるが、廃炉措置の工程は、30年程度の長期にわたるそうで、運転期間に匹敵する期間を必要とする。外国には廃炉の例がいくつかあるそうだが、国内では1基だけ通常の運転を終え廃炉した事例がある。日本原子力研究所の動力試験炉で1976年に運転を終え、1996年に廃炉措置が終わり、現在更地になっているそうだ。

 通常運転後の廃炉作業は比較的容易であろうが、それでも20年かかっている。事故を起こした後の廃炉作業は困難を極めるだろう。一番の問題は、原子炉内で溶けだしたデブリの取り出し作業である。燃料デブリは、福島第一原発1~3号機に計880トンあるとされる。燃料デブリは非常に高線量で人が近づけず、遠隔装置を使うしかないため、廃炉に向けた最難関の作業だ。

 政府と東電は当初、作業を2021年に始める予定だったが、装置開発の遅れなどで2度にわたって延期された。政府と東電の今年の計画では、原子炉格納容器の内部へ通じる既存の貫通口から折りたたみ式のロボットアームを入れ、試験的に数グラムの燃料デブリを取り出す予定であった。しかし、試験を始めてみると、ロボットアームを入れるためには、貫通口の中にたまっているケーブルなどを除去する必要があることが判明し、延期となった次第だそうだ。実際に取り出し作業を始めるとこのように想定外の問題が見つかり、今回の延期が最後とはならないだろう。

 原発がトイレの無いマンションと揶揄されないよう、岸田首相は排泄物の処理法を確立した後に原発回帰の道を探るべきであろう。2023.11.08(犬賀 大好ー960)

イスラエルとハマスの衝突は長い歴史の中の出来事

2023年11月05日 10時30分57秒 | 日々雑感
  先月7日から始まったイスラエルとイスラム組織ハマスとの衝突による死者が双方あわせて11月1日現在、1万人を超えたそうだ。イスラエル側の死者は少なくとも1400人であるが、ガザ地区住民が圧倒的に多く、このうち40%以上が子どもだと言うことだ。イスラエル軍は1日も、圧倒的に有利な軍事力で陸と空、それに海からの攻撃を強め、北部のガザ市に隣接するガザ地区最大規模のジャバリア難民キャンプまでも激しい空爆を行ったとのことだ。

 軍事衝突は、ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けたのが切っ掛けだったが、イスラエルは圧倒的な軍事力でハマスを追い詰めている。イスラエルは「戦争は勝つことが目的でそれ以外は二の次だ。これを気に入らない人や国があるかもしれないがハマスを倒すまでは続ける」と、ある程度の市民の犠牲はやむを得ないとする考えを示している。それほどまでにハマスを憎む心がどこから生まれたのか、不思議に思う。

 約2000年前、多くのユダヤ人がイスラエルの地を追い出されて、世界各国、主に欧州、北アフリカ、中東へと離散した歴史がある。離散ユダヤ人は世界各地でユダヤ人社会を築き上げてきたが、中世以来ヨーロッパの社会に根付いていたキリスト教社会の中にあって、厳しい差別や虐殺にあった。ユダヤ人を一つにまとめたのが今から2500年ほど前に成立したと言われるユダヤ教であり、最古の一神教の一つと言われている。

 キリスト教を認めないユダヤ人は、信仰の違いから忌み嫌われ、土地を所有したり、職人の組合に加入したりすることを許されなかった。キリスト教徒が忌み嫌う金貸しの仕事をユダヤ人が担うようになり、金の亡者などという偏見も生まれた。有名な劇作家シェークスピアが書いた ”ベニスの商人”にもユダヤ人の強欲な高利貸しが出てくるし、ユダヤ人コミュニティは現在の米国社会でも大統領選挙に莫大な資金で影響を与えているとの話であり、金の亡者は当たらずとも遠からじの感もする。

 ハマスを根絶させようとする憎しみは、このような長い苦難の歴史が影響しているのであろうが、少しでも相手の立場になって考えるとの余裕がないものであろうか。現在のイスラエルの地を紀元前に追われたからと言って、第2次世界大戦後そこに住むパレスチナ人を追い出して建国し、今なお刻々と国土を広げ続ける態度は、昔味わった我が身の苦労を挽回しようと、ひたすら世の中に復讐しているとしか思えない。

 イスラエルのエルダン国連大使が、「グテレス事務総長のハマスによる攻撃は『空白』の中で起きたものではないという発言は、テロリズムと殺人に対する理解を示している」、と極めて遺憾だと評したが、今回の衝突も長い歴史の中の出来事であると理解すれば、将来どう対処すべきかの考えも出てくるであろうが、国連大使とあろう者が情けない。2023.11.05(犬賀 大好ー959)



日本のGDPが世界4位と後退し衰退日本が現実となった

2023年11月01日 10時51分26秒 | 日々雑感
 今年1-3月の名目GDPは、年率換算で約572兆円になり、2024年末には600兆円に達する見込みだそうだ。そこで2023年の名目GDP成長率は5%近くまで上昇し、バブル期の1991年以来の高い伸び率になると予想されている。しかし、一見経済規模が大きくなっても円安の影響が大きく、物価上昇が進んでいるだけで、日本が豊かになった訳ではない。

 2022年におけるGDPの第1位は米国、続いて中国、日本、ドイツと続くが、米国や中国が圧倒的に大きく、日本は米国の1/5、中国の1/4の規模であり、日本を含む第3位以下はドングリの背比べ状態だ。2010年に日本を抜いた中国は日本の4倍超でもはや背中すら見えない状況だ。

 さて、かっては世界第2位を誇っていた日本もドル換算での名目GDPが2023年にドイツを下回って4位に転落する見通しであることが国際通貨基金(IMF)の予測で分かったそうだ。円安の影響でドルベースで目減りしたことやドイツの高い物価上昇が主な要因だ。これは一時的な現象ではなく、経済の長期的な低迷の表れとの指摘もあり、日本の国際的影響力の低下などにつながる恐れもあるとのことだ。

 日本の名目GDPは戦後、ドイツを抜き、長らく米国に次ぐ世界2位だったが、バブル崩壊後に低成長が続き、失われた30年と言われている。製造業は高度成長期の日本の中心産業であった。しかし、1970年代から伸びが鈍化し、1990年代からは衰退した。世界は情報の時代と変わったにもかかわらず、日本は経済政策も社会体制も変えなかった。そのため新しい産業は成長できず、また今日の貿易赤字や異例の円安につながっている。異次元金融緩和で景気回復を促したが産業構造の変化は乏しく、日本経済は「失われた30年」から「失われた40年」に突入しそうである。

 現在の日本を支えているのは産業面では自動車と電子機器と言われている。日本の産業が成長しない原因の一つは、国内での市場争いに主眼が置かれ、国際的な競争をしていないからだとの指摘がある。世界は電気自動車に置き換わろうとしている流れに乗り遅れているのはこのためと言う訳である。電子機器に関しても日本はハード面では世界一流になっているが、ソフト面ですなわち情報面では遅れをとっている。

 また、産業面ばかりでなく、日本の大学は世界のトップ10には出てこない。日本トップの東京大学が世界で23位、アジアで11位にランクされているだけである。その他の大学はより低迷気味で、こういう現実を知っている有識者、学会関係者は多いはずだが、懸念は持っていても改善のための具体策には至らない。

 政府は、昨年5月に「国際卓越研究大学法」を成立させた。国際的に卓越した研究成果を出せる研究力があること等によって、大学を選別し研究資金を提供するようだが、成果は資金だけではなく、研究者の自由さ等にも関り、簡単ではない。

 世界はどんどん変化している。この変化に追随する体制が日本にあるだろうか心配になる。2023.11.01(犬賀 大好ー958)