日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

岸田首相の「成長と分配]のスローガンはどこに行ったか

2023年11月15日 11時00分52秒 | 日々雑感
 岸田首相は就任当初“新しい資本主義”を提唱した。当時市場に任せれば全てが上手くいくという新自由主義的な考え方が盛んな一方で経済格差の拡大等様々な弊害も目に付いた。岸田首相の新しい資本主義は「成長と分配の好循環」をコンセプトとして新しい資本主義を実現していくものと大いに期待された。しかし、中身は本人でもよく分かっていないとみえて、その具体化を進めるため新しい資本主義実現本部を設置しそこで検討させるつもりのようであるが、時間が経つにつれて期待外れの度が大きくなってきた。

 岸田首相は、防衛費増額や原発回帰等、これまでの政権が躊躇していた政策を転換しており、新しい資本主義でも思い切った政策が立案されると期待された。しかし、これまでに分かった具体策は、昨年 11 月に策定した「資産所得倍増プラン」に基づく、NISA 制度の変更程度が目に付く程度である。NISA制度の変更とは株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対する税金を非課税にする等の変更であり、株等に投資できる金持ちに対する優遇措置であり、「成長と分配」とはほど遠い。

 一方、1人4万円の定額減税や、住民税非課税世帯への7万円給付など、17兆円台前半の規模になった経済対策を纏めた。しかしこれは「成長と分配」のコンセプトを実現する為と言うより、選挙目当てのばらまきとの感が強い。税収がこれまでになく増えたための分配かと思っていたが、財源は赤字国債の発行で賄うとのことで、開いた口が塞がらない。

 現在の日本は、賃金が上がってもそれ以上に物価が上がり、実質賃金は下がり続けている。日銀は、10月末の金融政策決定会合で長期金利が1%を一定程度超えても容認することを決めたが、基本的には異次元金融緩和策の現状維持である。欧米の主要な中央銀行は、次々と金融引き締めに動いている。日銀だけが世界の潮流に乗らないでいる。そのため、外国為替市場で円安が一段と進み、さらに物価高となる懸念がある。

 安倍政権は異次元金融緩和を強行し、市中に金をばらまいて企業の成長を目論んだが、企業は笛を吹けど踊らずで、余った金を内部留保としてため込んだだけであった。お陰で企業は多少の不景気にも耐える体力は付いたのかも知れないが、新しい産業は育たず失われた30年、あるいは40年を迎えようとしている。

 岸田首相は先月末、経済対策の目的として、物価高に苦しむ国民に成長の成果を還元する等を述べ、5本柱を挙げたが、どうも焦点がはっきりしない。国民の内閣支持率は下がる一方でこのままでは次の総選挙で自民党は惨敗しそうだ。そうなると岸田氏は退場となるが、歴史に名を残すためには「成長と分配」で、思い切った政策、例えば企業の内部留保を強制拠出させ子育て支援の財源とする等を打ち立て、華々しく散って欲しいものだ。2023.11.15(犬賀 大好ー961)