日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

忖度は日本の常識

2017年03月11日 09時30分58秒 | 日々雑感
 辞書で調べると ”忖度” とは、他人の心を推し量ることと出ているが、若者的には周りの空気を読むことであろう。日本文化の、”和をもって貴しとなす” は、お互いの気持ちを推し量るを基本とする。

 先日、学校開設への関わりを民進党・福山哲郎参院議員が、国有地が8億円も割引され売却されたことに関し、総理への忖度があったのではと追及した。学校の開設には、都道府県「私学審議会」に認可申請し、立地・教職員数・施設設備・財務の健全性などの審査基準を満たすと、認可適当と判断される。審査基準が数値的にも厳格に決められておれば、何も私学審議会で審査することなく決まるであろうが、財務状況など条件によって異なるところがあるため、審査の必要が生ずるのであろう。そこに忖度が入り込む余地ができる。

 安倍総理は、福山議員の質問に対し、気色ばんでそんなことがある筈はないと否定した。忖度があるか無いかは他人のすることであり、冷静に ”そんな他人のことは知りません” と言うだけでよかった。この件に関しては、安倍首相は被害者の立場でありながら、気色ばむとは何か後ろめたさを感じているに違いないと思わざるを得ない。

 さて、日本の文化において忖度は人生を生きるための重要な知恵である。若者言葉で ”KY” とは、空気を読まないとの事であり、その場の雰囲気を察知しない嫌われ者のレッテルである。また、企業においては、上役の直接の命令を聞かなくても、普段の言動から何を考えているかを察知し、言われなくても行動することは、一を聞いて十を知る頭の切れる人間として重宝され、出世するための第一歩でもある。

 現在、安倍与党は衆議院、参議院の両院において過半数を占め、長期安定政権を築いている。更に、来年の総裁選に立候補する権利を得て、3期9年の長期政権を築く勢いである。そもそも、これまで自民党の総裁の席は2期6年が限度であったが、3期9年と言い出したのは二階幹事長であり、正に安倍首相への忖度である。このように権力者の意に沿うことは、議員のみならず官僚の間でも役職、ポスト、利権を得るためにも必要条件である。

 忖度は日常生活を平穏に進めるための知恵であるが、これが一部の利益のために使われると、その周辺が迷惑することを心すべきである。

 森友学園の籠池園長と鴻池元防災担当相のやり取りのメモが公開された事を切っ掛けに現在の国有地売却問題が発覚し大騒ぎになった。メモ発覚に慌てて、鴻池氏は記者会見を開き、関与を否定した。その中で、籠池夫婦より、よろしくとこんにゃく大の封筒を渡されたことに対し、馬鹿にするなと投げ返したとのことであった。この世界ではこんにゃくとかレンガとの表現は札束の大きさを表すのによく使われるようであり、鴻池氏はこんにゃくでは少なすぎると投げ返したと勘繰ることもできる。鴻池氏は教育者にあるまじき態度と投げ返したと主張するが、兎も角、籠池夫婦は鴻池氏への忖度のやり方を誤った訳である。

 さて、日本には日本会議との政治結社がある。「公共心」「愛国心」「豊かな情操」教育等を盛り込んだ「新教育基本法」の制定等を目的にしている右翼系の団体である。国会にも、日本会議国会議員懇談会があり、日本会議を支援する超党派の議員によって構成される議員連盟である。安倍首相や麻生太郎財務相は特別顧問であり、鴻池議員もメンバーである。森友学園の籠池氏は日本会議大阪の運営委員を担当している。籠池氏の幼稚園では教育勅語を暗唱させるとなどと、徹底した右翼教育方針である。

 今回の不祥事には日本会議が絡んでいると思わざるを得ない。現日本では、日本会議は右翼系と言うことで白い目で見られる傾向がある。その日本会議の同志となると、忖度の度合いは一層強くなることであろう。学校用地の売買に関しては、国土省や財務省の厳しい査定がある筈だ。役人は前例のないことは絶対やらない。すべて前例踏襲である筈だが、今回の事件は異例の速さでことが運んだ。この裏には、誰か上の方からの一言と、後は官僚や役人の忖度があったに違いない。この一言は世間話で充分であろう。罪に問われるような一言ではない。後は、役人の忖度でことが運ぶ。

 籠池氏の行動は、日本会議云々以前に支離滅裂であり、野党が籠池氏の国会召致を要求しても与党は何を言い出すか分からないと反対している。これも安倍首相への忖度であろう。忖度は日本のあらゆるところに蔓延っている。日本会議がこの忖を活用していると思うと、心寒さを感ずる。2017.03.11(犬賀 大好-319)

自由貿易協定と農業改革

2017年03月05日 11時23分46秒 | 日々雑感
 トランプ米大統領は環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、二国間自由貿易協定(FTA)にすると宣言している。自動車の貿易に関しては日米間の不平等の是正を訴えているが、農産物に関しては何も発していない。それもそのはず、農産物の輸出入に関しては、日本の一方的な輸入だ。農産物の中でもとうもろこしが一番多いが約80%が米国からだ。大豆、小麦も大半が米国からだ。

 TPP交渉では、日本政府は農家の反対を押し切って農産物の大幅な関税引き下げに合意したが、2国間の本格的な交渉になれば、農家に対する補助金がやり玉に上がり、更に関税撤廃等の要求をしてくるかもしれない。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓など16か国の参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が2013年に交渉開始されている。TPPの挫折により、豪州、ニュージランドは高い水準での自由化を主張しているとのことだ。対象は当然農産物だ。

 更に、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)も2013年に開始されている。日本の要求は、家電や自動車の関税撤廃であり、欧州の要求は、チーズ、ワインなどの農産物の関税引き下げであるそうだ。

 既に日本の食料自給率は40%以下であり、安全保障の面から更なる自由化はリスクの増大を招くと懸念される。このため、日本の農業に何とか国際競争力を付けて貰わなくてはならないが、これまでの保護政策のぬるま湯から抜け出せず、遅々として進まないのが現状であろう。

 安倍政権はコスト削減や輸出など販売ルートの開拓に向けた地域農業の創意工夫を促す政策を掲げている。農家の収益力を向上させ、農業を成長産業に変える戦略だが、肝心の全国農業組合連合会(JA全農)や全国農業協同組合中央会(JA全中)は重い腰を挙げない。

 政府の規制改革推進会議は、資材の購買事業の1年以内の縮小、等の抜本改革を迫ったが、自民党農林族の反発で大幅に修正することとなり、結果従来通り各農協の“自主性”に任せるとの内容となってしまったようだ。自主性とは非常に美しい言葉であるが、高齢化が進んだ農業従事者にとって、これまでと同様にやることであり、結果座して死を待つことになるだろう。

 しかし、若者の間に新しい動きが出てきたのは明るい材料だ。昨年9月に、青森県立五所川原農林高校(五農)のG-GAP (Global G.A.P )審査の様子が紹介されたのだ。農業のグローバル化の波に打ち勝つ為には国際的な第三者認証が必須となるとし、「りんご」と「コメ」の認証審査に取り組んだそうだ。G-GAP認証への取り組みを通じ、これからの日本農業を支える若い人材が世界に目を向け始めて行けば、日本の農業も展望が開けるだろう。

 GAP(Good Agricultural Practice)とは、一般にはあまり知られていないが、農業生産工程管理であり農産物の安全に関わる認証制度である。農業生産活動を行う上で必要な関係法令等の内容に則して定められる点検項目に沿って、農業生産活動の各工程の正確な実施、記録、点検及び評価を行うことによる持続的な改善活動のことだそうだ。

 ロンドン五輪では、この規格か、同等の規格で認証を得た生産者の食材が中心になったそうだ。3年後の東京オリンピック・パラリンピックで選手などに提供される食材の調達基準になる可能性があるとのことであるが、小池都知事にも是非そのようになるようお願いしたい。

 現在東京都は築地市場から豊洲市場移転で、土壌汚染がどうのこうのともめているが、食の安全に関しては、流通過程における工程管理も必要になるだろう。流通工程管理とG-GAPの関係はよく理解していないが、日本は農産物の国際力強化のために、総合的に取り組まなくてはならないだろう。G-GAPが日本に合わなければ、合うように積極的に日本が提案していけばよいのだ。

 現在でも、日本の農産物は安全との評価が高いようであるが、更にG-GAPにより裏付けすれば確固たるものになる。このような取り組みは高齢者にとって苦手であり、老人に任せておくといずれ死を迎える。若者は常に新しいものが好きだ。この動きが全国の若者の間に広がるように政府も大いに支援すべきである。2017.03.08(犬賀 大好-318)

東芝の原子力事業の今後

2017年03月04日 09時31分18秒 | 日々雑感
 かっての名門、株式会社 東芝が瀕死の状態だ。2015年当時500円を超えていた株価は、今年2月末200円程度まで下がってしまった。2月26日の報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀が実質的に保有する東芝の持ち株比率は8.61%だそうだ。このような公的な機関は安定株主としての効果があるそうだ。してみると、現在、安定株主のお陰でかろうじて200円を維持しておられるだけなのかも知れない。

 東芝の異変は、2008年のリーマンショックのころからだそうだ。当時社長だった西田厚聡氏が、業績を良く見せるために不正会計を始めたのだ。2009年に西田氏から社長を引き継いだ佐々木氏の時代に、この不正は更にエスカレートしたそうだ。お家芸の家電等の電気製品が、韓国や中国に押され始めたのもこの頃であろう。更に、追い打ちをかけたのが東日本大震災後の経営環境の激変だそうだ。 

 東芝は、2015年に不正経理が発覚し、名誉挽回のため、テレビ等の電気製品から撤退し、半導体事業と原子力事業を2本柱として立て直そうとした。そのための資金調達として、虎の子の東芝メディカルシステムズ株式会社を、競争相手のキヤノン株式会社に売り渡してしまった。東芝メディカルは、医療機器開発のトップメーカであり、業績好調で、しかも将来有望視される金の卵であるにも拘わらず。

 ところが、経営の2本柱の一つとしていた原子力事業が足を引っ張り始めた。米国の原子力関係の子会社が大幅な赤字をもたらしたためだ。

 東芝は、2006年米国の原子力メーカのウェスチングハウス・エレクトリック(WH)を子会社化していた。WHの買収には追加出資分も含めると約6000億円を要したそうだが、当時の西田社長は、世界中で原子力エネルギーの需要が増えるとして、原子力事業の規模を年2000億円から2015年には3倍以上に増やせると豪語していたそうだ。その豪語の裏には不正経理を隠そうとの思惑があったのかも知れない。

 約6000億円で買収したWHが2015年に原発建設会社 CB&I ストーン・アンド・ウェブスター(S&W)を無償で譲り受けたのだ。S&Wの資産などの価値と負債などを比べ、ほぼ同額と判断して、安心して只で譲り受けたのであろう。その後、S&Wの維持のために想定外の大きな費用が必要になることが判明したのだ。無償と言うのに目が眩み、評価が甘くなったのに間違いないであろう。只より怖いものは無いとはこのことだ。

 費用増大の原因は、原発事業は2011年の東京電力福島第一原発事故の後、米国でも規制が厳しくなり、安全対策費が増え、工期も長くなり、人件費が予想外に増大したからだそうだ。

 S&Wは米国内で原発4基の建設工事を抱える。S&Wがこの原発4基を完了できなければ、親会社のWHは電力会社に違約金を払わなくてはならないらしい。WHが払えなければ、更に親会社の東芝が肩代わりする必要があり、東芝は7千億円を超える損失計上を迫られている訳だ。原発は未だ建設半ばであり、費用がこれ以上にならない保証はないそうだ。

 そこで、東芝は資金調達のため大黒柱の半導体事業を手放さ無くてはならない事態に追い込まれている。そうなると東芝に残されるのは原子力事業のみとなるが、世界の原子力事業の将来は甘くない。原発は中国やインドにおいて建設が盛んであるが、先進国では衰退の方向である。

 米国では、採掘技術の向上で石油や天然ガス価格が安くなったため、原発の費用面での競争力が落ちている。また、トランプ新大統領は地球温暖化は誤りであるとして、火力発電を復活させる政策をとることも弱り目に祟り目だ。

 世界では、仏アレバが新型原発の建設コストが膨らんだことで、経営危機に陥っている。更にベトナム政府は資金不足や住民の反発を受け、日本が受注予定だった原発の建設計画の中止を決めた。

 今となってみると、東芝がWHを買収できたのも、米国の投資家が原子力事業の先行きを見限っていた結果なのかも知れない。東芝は切り札を得たと喜んでいたが、とんだババを引いたのかも知れない。経産省は東芝を見放したとの噂だ。しかし、日本は福島第1原発の廃炉等では東芝に活躍してもらう必要がある。また、GPIFや日銀は大株主であり、簡単には手を引けない。原発事業は、核燃料サイクルの破綻、廃炉問題や核廃棄物の処理問題等、負の遺産を残したまま、甘い汁を吸いつくしてしまった。残っているのは抜け殻だけかも知れないが、後始末はしっかりやらなくてはならない。2017.03.04(犬賀 大好-317)

TPPとFET(自由貿易協定)の違い?

2017年03月01日 09時27分48秒 | 日々雑感
 トランプ大統領は1月23日、環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱するための大統領令に署名した。今後は二国間自由貿易協定(FTA)で、米国に有利な条件を目指すとの話だ。トランプ氏は大勢を相手に交渉するより、日本を単独とした方が脅しも効くと思っているのだろう。

 TPPを成長の柱と考える安倍政権は、TPPの発効に向けてトランプ氏の理解を求めたいと表明していたが、先日の日米首脳会議の結果からすると、TPPを諦めFTAに舵を切ったようである。

 TPPの承認に向けてこれまで米国を引っ張ってきたマイケル・フロマン前通商代表部が朝日新聞の取材に応じ(2月10日)、次のように述べた。・TPP交渉において日米が幅広い問題について緊密に協議し合意しており、トランプ政権が目指すFTAはそれが土台になる。・トランプ氏は二国間の貿易赤字を相当重要視しているようであり、自動車は赤字の相当大きな部分を占めているので、争点の一つになる。また、・保護主義的な政策に関しては、組織が固まっていないため政策を決めるには時間がかかるだろう。

 さて、TPPとFTAとでは、何がどう違うのであろうか。トランプ大統領は、自動車に関してはいろいろ発言しているが、農産物に関しては何も言及していない。自動車に関しては、日本製車が米国でよく売れるのに、米国製車が日本で売れないのは、日本政府が妨害しているからとの主張である。どうも現状を十分認識しているようには思えない。いや認識しているが、受けを狙って大げさに言っているだけかも知れない。

 トランプ氏の大統領当選では米国中東部のラストベルトの白人労働者の貢献が大きく、彼らに報いるために、自動車産業の米国復帰に力を注いでいると言われる。一方農産物生産者がどの程度選挙に関わったか不明であるが、農産物の生産が盛んなカリフォルニア州はクリントン氏が勝っている。同じように考えると、農産物には関心が無いかもしれない。牛肉や豚肉などの農産物の対日貿易では、現在米国が一方的な貿易黒字の筈であり、何も言及していないのは当然のことかも知れない。

 トランプ米大統領は2月13日、カナダのトルドー首相との会談後の共同記者会見で、米国はカナダとの通商関係は大幅に変更せず微調整にとどめるとの方針を示した。トランプ大統領はこれまでに、米国、カナダ、メキシコが加盟する北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を行う方針を強い口調で表明していたが、カナダに関しては大山鳴動して鼠一匹だったようである。
 
 トランプ氏の言行不一致は、受けを狙った一時なものか、不勉強故の勘違いなのか、よく分からない。日本への米軍駐留経費の増額要求に関しても同じである。予てより増額を要求していたが、先日の日米首脳会談では話題にもならなかったようだ。それどころか、トランプ氏に信頼されるマティス国防長官は在日米軍の駐留負担経費について、日本とのコスト分担の在り方は他国にも手本になる、と評価した。

 フロマン氏が指摘するまでもなく、トランプ新政権の基本方針は全閣僚が揃わない限り分からないだろう。ところで、トランプ氏の通商チームには、商務長官にウィルバー・ロス氏や、米通商代表部代表にはダン・ディミッコ氏の名前が挙がっている。彼らの過去の発言からすると、特に中国の通商政策に対して従来より厳しいものになり、幅広い中国製品に対して反ダンピング、反補助金の制裁を求める可能性がある。日本への対応はよく分からないが、厳しくなるのは間違いないだろう。

 TPP交渉では、日本政府は農家の反対を押し切って農産物の大幅な関税引き下げに合意したが、2国間の本格的な交渉になれば、農家に対する補助金がやり玉に上がり、関税撤廃も求められる恐れがある。農家はTPPの破談で喜ぶどころか、逆に厳しくなるかも知れない。

 TPPとは別に、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓など16か国の参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)が2013年に交渉開始されたようである。米国が抜け、中国、インドが加わると、交渉をまとめるのは一層困難になるだろうが、TPPに代わる新たなシステム構築を目指して、リーダシップを発揮すべきであろう。

 更に、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)も2013年に開始されている。日本の要求は、家電や自動車の関税撤廃であり、欧州の要求は、チーズ、ワインなどの農産物の関税引き下げであるそうだ。現在の進捗状況はよく分からないが、ここにおいても、日本は米国抜きでもやれることを示す必要があるだろう。

 TTP、FTA、RCEPおよびEPAの相互の関係はよく分からないが、日本は自由貿易の方向に一途に進んである。米国が保護主義に傾倒すれば、各国も自国産業の保護や需要の囲い込みを重視する保護主義に傾くだろう。保護主義の蔓延は世界経済の不安定感を高めるリスク要因だ。さて、日本は保護主義ではやっていけない。どう対処すればよいのであろうか。2017.03.01(犬賀 大好-316)