安倍首相は、5月3日、改憲派の集会に自民党総裁としてメッセージを寄せ、9条1項、2項は残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値するなどと語り、憲法改正への意欲を改めて示した。
現在、日本は自衛隊と称する立派な戦力を有しているが、現日本国憲法9条は、その1項で国権の発動による戦争と、武力による威嚇、行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄するとし、2項で陸海空軍などの戦力の不保持と交戦権を認めない、と定めている。
つまり、・戦争放棄・軍隊不所持・国の交戦権の否定、と決めている訳だが、素直にこの条文を読無限り、明らかに自衛隊は憲法違反となる。しかし、残念ながら国際状勢は話し合いより軍事力が幅を利かす場合も多く、何らかの戦力は必要であろう。
日本を取り巻く中国、韓国との間の領土問題等に関しても、自衛隊およびその後ろ盾の米軍の軍事力が大きな役目を果たしているのは確かであろう。この意味で、憲法が現在の状況に合っていないとの思いは日本国民に共通しているだろう。
この国民の共通認識を背景に、安倍首相は、9条1項、2項を残しつつ、憲法に自衛隊の存在を明記するという考え方は国民的な議論に値する、と発言している訳である。しかし、この追加だけでは自衛隊は軍隊ではないとの矛盾がより明確になり、従来の問題点を浮き出させただけである。安倍首相の真の狙いはこの矛盾をより明確にすることにあり、次には9条1項、2項の改定の必要性を訴える算段が頭の中にあることは間違いない。
安倍首相は政治家一族である安倍家の一員であり、この一族は安倍晋太郎、岸信介、佐藤栄作等多くの政治家を輩出している。また、麻生太郎財務長官とも親戚関係にあり、天皇家とも血統的につながっているようだ。
この家系の一員となれば、当然ながら伝統や血統を重視し、日本は天皇を頂点とする統一国家を理想とするだろう。また叔父である岸信介氏はA級戦犯であり、戦後復興に貢献した功績により首相にまで上り詰めたが、A級戦犯の汚名挽回はなされていない。汚名挽回は戦前の国家体制の復元でしかなされないであろう。更に安倍昭恵首相夫人が、教育勅語を信奉するのも家系の影響と思われる。
このような一族からの影響を受けて、安倍首相の頭には、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」のキャチフレーズが刷り込まれているのであろう。
また、”2020年を新しい憲法が施行される年にしたい”、と唐突に言い出したのは、首相在任中に憲法を改正したいとの思いからだけであろうか。憲法制定70年目にして初めて憲法を改正したとなれば、良くも悪くも後世に名が残ることは間違いない。
しかし、それより森友学園問題が影響しているように思われる。もし関係していたことになれば首相も議員も辞めると明言している。日本にとっては、憲法改正の方がはるかに問題は大きい。しかし、森友問題は安倍氏個人にとって議員を辞めざるを得ないかも知れない重大問題だ。ここで憲法改正を持ち出せば、世論の風向きはそちらに移る筈だとの計算が働いたと勘繰ることができる。
さて、日本は第2次世界大戦の敗北により米国に統治されたが、民族の大移動を伴わない部分的な統治であり、以後米国の核の傘の下に平和国家を築いている。この意味で、自分の国は自分で守るとの発想は薄く、憲法論議は進んでいない。
また現在、北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進む姿勢を堅持し、米国は圧倒的な軍事力でそれを阻止しようとし、金正恩とトランプ両氏がチキンレースを繰り広げているが、日本国民のほとんどはまだ対岸の火事として傍観している。
ところが、去る4月29 日 北朝鮮がミサイルを発射したという情報を受けて、一部の交通機関は、一時、運転を見合わせる措置を取った。過剰反応と思われるが、このような反応に北朝鮮の脅威を実感し、憲法改正の必要性を感じ始めた国民も多くいるだろう。”機は熟した”との総理の発言はまさに時を得たものであった。
憲法改正を2020年までにと突然言い出したのは、安倍首相の長年の夢を首相在任中に実現させるためでもあろうが、森友問題や北朝鮮問題に直面している現在が絶好機と見たのであろう。2017.05.10(犬賀 大好-336)
現在、日本は自衛隊と称する立派な戦力を有しているが、現日本国憲法9条は、その1項で国権の発動による戦争と、武力による威嚇、行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄するとし、2項で陸海空軍などの戦力の不保持と交戦権を認めない、と定めている。
つまり、・戦争放棄・軍隊不所持・国の交戦権の否定、と決めている訳だが、素直にこの条文を読無限り、明らかに自衛隊は憲法違反となる。しかし、残念ながら国際状勢は話し合いより軍事力が幅を利かす場合も多く、何らかの戦力は必要であろう。
日本を取り巻く中国、韓国との間の領土問題等に関しても、自衛隊およびその後ろ盾の米軍の軍事力が大きな役目を果たしているのは確かであろう。この意味で、憲法が現在の状況に合っていないとの思いは日本国民に共通しているだろう。
この国民の共通認識を背景に、安倍首相は、9条1項、2項を残しつつ、憲法に自衛隊の存在を明記するという考え方は国民的な議論に値する、と発言している訳である。しかし、この追加だけでは自衛隊は軍隊ではないとの矛盾がより明確になり、従来の問題点を浮き出させただけである。安倍首相の真の狙いはこの矛盾をより明確にすることにあり、次には9条1項、2項の改定の必要性を訴える算段が頭の中にあることは間違いない。
安倍首相は政治家一族である安倍家の一員であり、この一族は安倍晋太郎、岸信介、佐藤栄作等多くの政治家を輩出している。また、麻生太郎財務長官とも親戚関係にあり、天皇家とも血統的につながっているようだ。
この家系の一員となれば、当然ながら伝統や血統を重視し、日本は天皇を頂点とする統一国家を理想とするだろう。また叔父である岸信介氏はA級戦犯であり、戦後復興に貢献した功績により首相にまで上り詰めたが、A級戦犯の汚名挽回はなされていない。汚名挽回は戦前の国家体制の復元でしかなされないであろう。更に安倍昭恵首相夫人が、教育勅語を信奉するのも家系の影響と思われる。
このような一族からの影響を受けて、安倍首相の頭には、「美しい国」「戦後レジームからの脱却」「日本を取り戻す」のキャチフレーズが刷り込まれているのであろう。
また、”2020年を新しい憲法が施行される年にしたい”、と唐突に言い出したのは、首相在任中に憲法を改正したいとの思いからだけであろうか。憲法制定70年目にして初めて憲法を改正したとなれば、良くも悪くも後世に名が残ることは間違いない。
しかし、それより森友学園問題が影響しているように思われる。もし関係していたことになれば首相も議員も辞めると明言している。日本にとっては、憲法改正の方がはるかに問題は大きい。しかし、森友問題は安倍氏個人にとって議員を辞めざるを得ないかも知れない重大問題だ。ここで憲法改正を持ち出せば、世論の風向きはそちらに移る筈だとの計算が働いたと勘繰ることができる。
さて、日本は第2次世界大戦の敗北により米国に統治されたが、民族の大移動を伴わない部分的な統治であり、以後米国の核の傘の下に平和国家を築いている。この意味で、自分の国は自分で守るとの発想は薄く、憲法論議は進んでいない。
また現在、北朝鮮は核・ミサイル開発に突き進む姿勢を堅持し、米国は圧倒的な軍事力でそれを阻止しようとし、金正恩とトランプ両氏がチキンレースを繰り広げているが、日本国民のほとんどはまだ対岸の火事として傍観している。
ところが、去る4月29 日 北朝鮮がミサイルを発射したという情報を受けて、一部の交通機関は、一時、運転を見合わせる措置を取った。過剰反応と思われるが、このような反応に北朝鮮の脅威を実感し、憲法改正の必要性を感じ始めた国民も多くいるだろう。”機は熟した”との総理の発言はまさに時を得たものであった。
憲法改正を2020年までにと突然言い出したのは、安倍首相の長年の夢を首相在任中に実現させるためでもあろうが、森友問題や北朝鮮問題に直面している現在が絶好機と見たのであろう。2017.05.10(犬賀 大好-336)
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