日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

遺伝子組み換え作物の安全性を考える

2016年07月09日 09時40分40秒 | 日々雑感
 現在日本において、遺伝子組み換え作物(GMO;genetically modified organism)を使った食品を販売する際には、その旨を表示しなければならないと法律で決められている。一方、米国ではGMO食品の表示が義務付けられていないため、米国の消費者はこれまで選り好みする手段がなかった。これは米国はGMO大国であり、モンサント社等の巨大企業が米国政府に圧力をかけているらしいからだ。

 しかし、ついに2014年4月には、全米ではじめて、バーモント州が、GMO食品の表示義務化法案を可決した。そして今年7月1日、全米で初めてGMO を使った食品の表示義務が始まったとのことである。この波は今後全米に広がっていく勢いのようである。しかし米上院は州によるバラバラな法律を無効にし、全国一律の表示ルールを盛り込んだ法案を採決するとのことである。統一ルールがどのようになるか分からないが、GMO食品の安全性に全国的な関心が高まっていることは確かであろう。

 一方、科学者で作る米科学アカデミーは今年5月、トウモロコシや大豆など米国で普及している遺伝子組み換え作物について、人や動物が食べても健康上のリスクの増大は認められないとする報告書を発表した。専門家による委員会が、過去20年にわたる調査報告や研究論文など900件を精査したまとめである。

 しかし、遺伝子の組み換え作物は、自然界に存在しなかった人工的な作物であるため、短期的に影響が現れなくても世代にまたがる長期的な影響や、またアレルギー等思わぬ影響の懸念は残る。過去20年にわたる調査程度では、これらの懸念を払しょくできない。GMO食品以外が選択できるのであれば、そちらを選択したいと思う人は大勢いるのであろう。

 現在日本で承認され、流通しているGMOは、ダイズ、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモ、綿、てん菜、アルファルファの7品目だそうだ。これらの作物を主な原材料とする32種の加工食品(豆腐・納豆・みそ・きな粉・コーンスナック菓子・ポップコーンなど)に表示義務がある。ただし、醤油・ダイズ油・コーン油・コーンフレーク・マッシュポテトなどは、製造過程による蛋白質分解を理由に表示義務は無いそうだ。蛋白質が分解されるとアミノ酸に変換されるが、人工的に組み換えられた遺伝子がどのように変わるかの説明は無く、心配の種は尽きない。

 しかし、一歩下がって考えてみると、完全に安全な食品など存在しないのだ。すべての食品は外来性のものであれ,内在的なものであれ,有害物を含んでいる可能性がある。外来汚染物としてはダイオキシンなどの有害化学物質や、カビ毒のような微生物由来のものがある。内在的なものとしては食品が元来持っている有害化学物質があり、フグの毒などはその典型であろう。そもそも、摂取の仕方により、益になったり、害になったりするのが食品だ。塩や砂糖がその典型であろう。これらは人体に必要不可欠であるが、取り過ぎは高血圧や糖尿病の元だ。
 
 現在承認されているGM食品は短期的には安全性の点で問題がないと考えられるが,それ故に今後作られる全てのGM食品が安全であるとは言い切れない。遺伝子組み換え技術は新規な技術であり,日進月歩で進歩している。使い方によっては予期せぬものが作られる可能性があるので,そのリスク評価は 個々の食品で慎重に行わなければならない。世代を超えてまでの評価も必要になるかも知れないので、簡単には結論が出せないであろう。

 しかし、一方では食料問題が迫っている。21世紀末までに100億人を突破するだろうと予測されている世界の人々への食料供給問題である。しかも、地球温暖化のためか最近異常気象が頻発しており、水害や旱魃などを原因とする食料不足問題も懸念される。

 このため、食料を増産する工夫が必要となるが、世界の耕地の開発には限度がある。渇水、害虫等に強い農作物の開発は必須であるが、種の交配による品種改良等では時間がかかり、効率が悪い。そこで、遺伝子操作による品種改良に期待がかかる訳であるが、人体や家畜に及ぼす影響に関しても同時に研究を進めなくてはならない。”科学の発展が人類に幸せをもたらすか” と言った大問題の一つであろう。
2016.07.09(犬賀 大好-249)

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