日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

英国のEU離脱の是非は再度の国民投票で

2019年03月13日 09時43分01秒 | 日々雑感
 英国の議会はEU(欧州連合)離脱手続きが難航するなか、メイ首相が孤軍奮闘している。現在、EUとの合意がないまま3月末に離脱する事態は回避される見通しであるが、ただ仮に延長しても、その間にEUとの協議がまとまる保証はない。これが一時的な問題先送りに終わり、数カ月後には今より差し迫った合意なき離脱の危機に直面する可能性が濃厚である。

 現在、英国とEU加盟国の間には、関税無しや往来自由の原則があるが、合意がなされないまま離脱となると、国境検問や関税手続きが必要となり大混乱が予想される。この事態を心配し、日本企業を始め多くの企業が英国からの脱出を始めているとの話だ。

 英国がEU離脱を選択した最大の理由は、EUの中にあっても何らメリットが無いとの判断であろう。EUに加盟する国々には経済格差や文化の違いが大きく、英国のように豊かな国はお金を出すばかりで、ギリシャのように貧乏な国に補助金などの名目で吸い取られてしまう被害者意識が強いのだ。また、EUの目的は域内の経済を活性化し平等化することであったが、次第に各国の事情に合わない規則、法律を作り、逆に経済の活性化を妨げることになった。英国が特に困っているのは、EU諸国からの移民の流入だ。

 そもそもEUあるいはその前身のECの結成は、第2次世界大戦の勃発原因を反省し、欧州は一つだとの理想に基づいていた。しかし、域内の経済自由化は富の平等化では無く、貧富の格差を大きくする結果となった。

 昨年11月にEU離脱に関する協定案が公表されて以来、英国議会では与野党を問わず、賛成派からも反対派からも猛烈な反発が起きているのだ。強硬な残留派の多くは今も離脱そのものに反対である。一方、離脱派はメイ首相が譲歩し過ぎて、期待していた完全な決別が実現しないと反発する。

 そして現実的な最大の懸念は北アイルランドに関する問題だそうだ。英国本土の西側に位置するアイルランド島は、EU加盟国のアイルランド共和国と英領の北アイルランからなる。アイルランドと北アイルランドは歴史的に犬猿の仲である。北アイルランドでは1960年代から約30年、英国からの分離独立とアイルランドへの帰属を主張するカトリック系住民と、英国にとどまることを求めるプロテスタント系住民が対立し、激しい武力闘争が続いた。

 現在は両者の和解が成立しているが、英国がEU離脱となると、アイルランド島ではEU加盟国のアイルランドと英領の北アイルランドを隔てる約500キロの境界線で、厳しい国境管理が必要になるが、検問所や税関審査などを置く物理的な国境の復活は多くの人にとってとんでもない話で、北アイルランドの独立運動の再発も懸念される。

 そもそもこの混乱の切っ掛けは前首相ブレア氏が決めた国民投票からだ。国民党投票は、国民の声を直接聴く良い方法に思える。しかし、是非を判断する前提条件が曖昧なまま、時の流れで結論を出してしまう恐れがある。

 さて、メイ氏の協定案が批判にさらされる中、2度目の国民投票を要求する声も出始めているそうだ。これに対しメイ氏は、先の国民投票の結果は明確だったとして、再投票の可能性を否定している。

 しかし、議会の混乱で、一般国民もEU離脱の是非をじっくり考えたのではなかろうか。3月29日に合意なき離脱に至る恐れをはらむこの行き詰まりを打開するためには、再度の国民投票しかないと思われる。2019.03.13(犬賀 大好-528)

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