日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

原発依存体質の尻拭い

2020年11月21日 09時08分31秒 | 日々雑感
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核ゴミ)の最終処分場をめぐり、梶山経産相は11月17日、国の選定プロセスの第1段階である「文献調査」を、北海道の寿都町と神恵内村で始めるための計画を認可した。

 2014年に作成されたエネルギー基本計画において、核ゴミ処分に関し現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう、国が前面に立って取り組みを進めることが明記された。それまで、核ゴミの最終処分地の必要性が叫ばれ、原子力発電環境整備機構(NUMO)と称する立派な組織を立ち上げたが、責任感の欠如の為か一向に捗らず、国が前面に出ることが余儀なくされたのだ。

 選定プロセスでは最終処分地に適した場所を選定するために、火山や地震、活断層などの影響も考慮し、「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階の調査を約20年に亘って行うとされている。現世代の責任を先送りしないと言いながらも何とも悠長な計画であり、最初の取り掛かりの「文献調査」では実地調査はせず、地質図や論文等で地下の状況を約2年かけて確認するのだそうだ。

 NUMOは2002年に全国の自治体に文献調査への公募を始めたが、2007年に初応募した四国高知県の東洋町が住民の反対で撤回し、後に続く自治体が現れなくなったが、ようやく北海道の2か所が手を上げた。この2町村はそれぞれ2年で最大計20億円の交付金を得られるようだ。

 この交付金は調査のために必要となるお金ではなく、町村が自由に使える金であろう。地元が関係するのは対話の場の設置費用ぐらいしか思い浮かばないが、地元としては処分場の誘致よりこの交付金が目的であるような気がする。

 誘致の目的は過疎化対策であり、いつでも断ることが出来るとのことであるので、気安く引き受けた感もする。しかし、一旦もらえばもっと欲しくなるのが人情であり、第2段階の約4年を要する概要調査では最大70億円の交付金が支払われるとのことであるので、恐らく金の魔力に取りつかれ抜け出すことは容易でないだろう。

 NUMOは文献調査の他に地元の議員や住民らと処分場の安全性や地域の将来像などを継続的に話す対話の場も設けるそうだが、恐らく利権の巣窟と化し、一般地元住民の説得は無理であろう。

 文献調査の後は、ボーリング調査などをする「概要調査」(4年程度)、地下施設を作って調べる「精密調査」(14年程度)が続き、知事や市町村長が反対なら次の段階に進めないことになっている。

 北海道には”核のごみを受け入れ難い”とする条例があり、鈴木道知事は17日、概要調査へ移行する際は、条例の趣旨を踏まえ、現時点では反対の意見を公表した。しかし、地元での何らかの作業が始まれば、そこで雇用される人も増えるであろう。そこで生活の糧を得る人が出てくれば、なし崩し的に処分場の建設に進むことも予想される。これが国の狙いかも知れない。

 菅首相が宣言した地球温暖化ガスを2050年までに実質ゼロ計画は国のエネルギー政策と大いに関係しており、現在80%を占める化石燃料利用の発電を原発か自然エネルギー利用発電に切り替えなくてはならない。原発は温室効果ガスを排出しない利点はあるが、世界の動きは脱原発の方向であり、しかも日本の核燃料サイクルは既に破綻しており、自然エネルギー利用しか道は残されていない。

 原発を止めないにしても、また止めるにしても今までの原発から出た核ゴミの処分問題が喫緊の課題として残る。これまで先送りしてきた多大なつけを払わなくてはならない。2020.11.21(犬賀 大好-653)


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