現在日本にある原子力発電所59基のうち、廃炉準備中及び廃炉が決まったものが25基だそうだ。ところで、廃炉作業を本格的に進めているのは、東電福島第1原発の4基位であろうが、これらは事故後の廃炉であるため困難を極めているようだ。
他に関しては余りマスコミに登場しないが、事故を起こした原発の廃炉に比べて、正常な運転後、正規の手順で停止した原発の廃炉作業は、所定の手順で進めれば遥かに簡単だと思われる。
しかし、そもそも廃炉作業はお金を生まないし、日本では経験が無い上、廃炉で生じた廃棄物の処理法も決まっていないのが現状で、積極的に廃炉を進めていない、あるいは得意の問題先送りを計っているのではなかろうか。
放射能を帯びた廃棄物は実にやっかいなゴミだ。何百年、何万年と放射能を出し続ける。その間人間に害が及ばないように安全に保管しておかなくてはならない。このために最終処分地の確保が必要であるが、今もって何処にするかも決まっていない。こんなことは原発を始める前から分かっていた筈だが、目の前の利益に目がくらみ、問題先送りを企てたのだ。
ゴミを出さない風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーが急速に躍進する中で、トイレの無いマンションと揶揄される原発にこれ以上未練はないが、ゴミの処分に関してはこれまでに享受してきた現世代で責任取る必要がある。もちろん、時間的に最後まで責任は取り切れないが、最善の策を準備しておくことがせめてもの責任の取り方なのではないか。
ごみの最終処分地に関しては、2000年に事業実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。その定款は、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分の実施等の業務を行うことにより、原子力発電に係る環境の整備を図ることを目的とする、である。
そこで、2002年から処分地選定の公募を始めた。最終処分地は地元住民の反対が予想されるため公募と言う形を採ったのだ。NUMOが科学的に適地を選択し指名するのではなく、手を挙げたところが適地かどうかを判断するならば地元の反対も無く候補地を見つけやすいと考えたわけだ。
NUMOの公募では、文献・概要調査だけで6年間でおよそ45億円もの交付金が配られる。しかも後で断っても返さなくて良いとの文面だ。そのアメで釣った結果、2007年1月、高知県東洋町長が町議会の同意も得ずに候補地の調査に手を挙げた。その結果、町を二分する大騒ぎとなり、町長が町民に信を問うとして辞任し、その出直し選挙で大差で敗れた。
その後は、他の地域もすっかり手を挙げる動きは無くなり、この公募方式は行き詰まった。この機構が設立された2000年は福島の原発事故が起こる前であり、事故による後片づけのゴミまでは考慮されていなかったであろうが、その最終処分地でさえも以上のように暗礁に乗り上げている。増して、事故後の廃炉のゴミとなると放射能レベルは一段と高くなり、最終処分地の決定は一層困難になっているだろう。
NUMOのホームページを見ると現在の活動状況は科学的特性マップに関する対話型全国説明会の開催程度である。処分方法の安全性を説明し、住民に理解を得ようとする活動であろうが、参加者は極めて少ないとの話だ。そうそうたる人材を集めたこの組織も、往々にして寄せ集め集団でまとまりが無く、また国の天下り先でもあり、命を懸けて職務を全うする人材も皆無であろう。
日本の少子高齢化は急激に進行し、現在、所有者不明の土地は全国で20%、九州本土を大きく上回る面積で、驚くほど多くの土地の所有者がわからないという状況にあるとのことだ。NUMOはこれらの土地の活用を考えているのか、あるいは海外に求めているのか、少なくとも将来展望を示さなくては、廃炉への道は拓けない。2019.06.12(犬賀 大好-554)
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