日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

自動運転車の経済効果

2016年11月16日 09時17分42秒 | 日々雑感
 高齢化社会の進行と共に、高齢者による運転事故が急増している。ブレーキとアクセルの踏み違いや、高速道路における逆走を原因とする事故である。高齢化に伴う、運動神経、反射神経の劣化、あるいは認知症の進行が起因している。これに対し行政も運転免許取得の厳格化などで対処しているが、抜本的な対策とはなっていない。それより自動運転車の普及が期待される。

 車の自動運転の程度は国土交通省や米運輸省道路交通安全局(NHTSA)により5段階のレベルに分類される。このレベルは自動運転の程度を表すと共に、技術的困難さにも相当しており、レベルが高いほど人間は運転の煩わしさから解放される。高齢者対策としては、比較的低レベルのレベル0~1で十分効果が発揮できそうである。

 レベル0とは衝突警告などであり、車が障害物に近づいた時、ブザー等で運転者に知らせるが、すべての主制御系統(加速・操舵・制動)の操作を従来通り運転手が行わなくてはならず、余り自動運転のイメージは無い。

 次のレベル1では主制御系統のいずれかを自動で行うシステムであり、既に自動ブレーキなどの安全運転支援システムを標準装備としている車も市販されており、高齢化対策として大いに役立ちそうである。しかし、問題はコストである。高齢者は、先が短いとして、高い投資は避ける傾向にある。このため低ガソリン消費車以上に、政府の補助が期待される。

 レベル4では完全自動運転可能となり、自動車には人間のためのハンドルやブレーキは無いとのことだ。車に乗り、行き先を指定すれば、眠っていても目的地まで、運んでくれる。レベル2,3は、中間に位置する特性の車である。

 各自動車企業やAI企業は、将来の完全自動運転車を目指して、熾烈な開発競争を進めている筈だ。米国フォードモータ社は8月16日、完全自動運転車を2021年までに供給すると発表した程であり、遠い将来の話ではない。今後自動車の自動運転技術は急激に進むであろう。

 さて、自動運転車はこのように技術的成長分野であること間違いないが、この普及が経済成長すなわちGDPを押し上げることになるだろうか。これにより安全で便利な社会に近づくことは間違い無い。そのため自動運転車に買い換える人は出てくるであろうが、これまで車を運転しなかった人が新たに購入するようになるとは思えない。従って、車の全体数が爆発的に増えるとは予想できない。

 国内向けの自動車販売台数の増加が期待できないとすれば、GDP増加とはならないだろう。しかも日本は当面少子化が進むため、日本国内においては、既に販売台数そのものがじり貧状態である。

 だからと言って、技術革新を怠る訳にはいかない。既に日本の自動車企業は世界と競争しており、外貨稼ぎの筆頭であろう。技術革新への努力の結果は一層海外市場に向けられなくてはならない。

 11月9日、米国次期大統領にトランプ氏が決まった。氏は選挙運動中、環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership;TPP)の破棄を公言している。正式大統領に就任した場合、完全破棄することは無いとは思うが、少なくともこのまま承認することは無いだろう。

 現在世界的にも、グローバライゼイションの行き過ぎが見直されつつあり、各国は保護主義的な傾向が高まっている。しかし、日本はTPPを成長戦略の一環と捉えており、アベノミクスの目玉でもあるため、黙っている訳にはいかない。

 TPPがどうなろうと、日本の自動車産業は海外市場が必須である。世界一の自動運転技術を生かすためには、国内市場は狭すぎる。TPPがだめなら、米国抜きの西太平洋パートナーシップでも主導すべきであろう。2016.11.16(犬賀 大好-286)

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