G7では自由貿易の重要さを改めて確認し合ったとのことである。議長の安倍首相は冒頭、[多くの国で自由貿易に反対する意見が高まっている。G7で自由貿易の恩恵を力強く発信していくことが重要である」と主張し、各国の首脳は「低価格の輸入品が入ってこないなど、保護主義の危険要素も説明した方が良い」などと発言したとのことである。
自由貿易になぜ反対する意見が高まっているかに関して、議論は無かったようだ。自由貿易すなわち自由経済主義の行き過ぎによる経済格差の拡大が世界的に問題となっているはずであるが、それに対する議論が是非欲しかったが、議長の頭には問題意識が無かったのであろう。残念である。
さて、日本やアメリカなど12か国が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)の署名式が、2月4日、行われた。TPPは、今後、協定の早期発効に向けて各国で議会の承認を求めるなど国内手続きが本格化する。協定は、2年以内に12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効すると決められている。
日本政府は3月8日の閣議で、TPP協定の国会承認を求める議案と、関連する11本の法律の改正事項を1本にまとめた関連法案を決定し、国会に提出した。しかし、4月14日の熊本地震発生等の影響により、4月26日、与党側は、今の国会での承認を断念すると決定した。
米国においても、オバマ政権は年内の議会承認を目指しているが、次期大統領候補、民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏、共にTPPに疑問を呈しており、TPP承認をめぐる議会審議は11月の大統領選後に持ち越される可能性が高いとのことである。
TPPは、発効されればその経済効果は極めて大きいとのことである。内閣官房TPP政府対策本部は、昨年12月に我が国のマクロ経済に与える経済効果を分析した結果を公表した。TPPが発効し、その効果により我が国が新たな成長経路(均衡状態)に移行した時点において、実質GDP水準は+2.6%増、2014年度のGDPを用いて換算すると、約14 兆円の拡大効果が見込まれ、また、その際、労働供給は約80万人増と見込まれる、との内容である。この試算を信じれば確かに大きい。
米国においても、米国際貿易委員会(ITC)は今年5月、TPPの米国経済への影響分析の報告書を公表した。2032年の実質国内総生産(GDP)を427億ドル(約4.7兆円)、0.15%押し上げるとの内容である。
GDPに与える影響は、日本に比べ米国においては小さい。これは、TPP参加国12か国のうち、米国は既に豪州、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、シンガポール、6か国と自由貿易協定を結んでいるのも一因であろう。米国においては、日本ほどTPPへの期待は大きくないと思われる。
2月4日の署名から2年以内に全12カ国が国内手続きを終えればその60日後に発効する。それまでに手続きが終わらない国があっても、6カ国以上が手続きを終え、手続きを終えた国の国内総生産の合計が全体の85%を超えれば発効となるとのこと。特に米国の比率が高く、60.4%とのこと。米国を除く国すべてが批准しても、39.6%で、85%に届かない。米国の批准無くしてTPPは発効されない。日本がどう頑張っても、米国次第だ。
米国においては、自由貿易は「国内製造業を衰退させ、雇用を失わせた」と、自由貿易への疑問が広がっている。民主党においては、「反TPP」を旗印とするサンダース上院議員が若者を中心に人気を集めている。クリントン氏は当初TPPに賛成であったが、この流れに押され、TPP反対の姿勢を強めたとのことだ。推進派は「クリントン氏は、大統領選に勝てば、賛成に転じる」と楽観視しているが、サンダース氏の意見を完全無視するわけにはいかないだろう。一方共和党のトランプ候補は、米国から利益をはく奪するTPPには署名しないと断言している。米国におけるTPPの行方は真っ暗である。さて、日本はどうするだろうか。
20016.06.01(犬賀 大好-238)
自由貿易になぜ反対する意見が高まっているかに関して、議論は無かったようだ。自由貿易すなわち自由経済主義の行き過ぎによる経済格差の拡大が世界的に問題となっているはずであるが、それに対する議論が是非欲しかったが、議長の頭には問題意識が無かったのであろう。残念である。
さて、日本やアメリカなど12か国が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)の署名式が、2月4日、行われた。TPPは、今後、協定の早期発効に向けて各国で議会の承認を求めるなど国内手続きが本格化する。協定は、2年以内に12の国すべてが議会の承認など国内手続きを終えれば発効すると決められている。
日本政府は3月8日の閣議で、TPP協定の国会承認を求める議案と、関連する11本の法律の改正事項を1本にまとめた関連法案を決定し、国会に提出した。しかし、4月14日の熊本地震発生等の影響により、4月26日、与党側は、今の国会での承認を断念すると決定した。
米国においても、オバマ政権は年内の議会承認を目指しているが、次期大統領候補、民主党のクリントン氏、共和党のトランプ氏、共にTPPに疑問を呈しており、TPP承認をめぐる議会審議は11月の大統領選後に持ち越される可能性が高いとのことである。
TPPは、発効されればその経済効果は極めて大きいとのことである。内閣官房TPP政府対策本部は、昨年12月に我が国のマクロ経済に与える経済効果を分析した結果を公表した。TPPが発効し、その効果により我が国が新たな成長経路(均衡状態)に移行した時点において、実質GDP水準は+2.6%増、2014年度のGDPを用いて換算すると、約14 兆円の拡大効果が見込まれ、また、その際、労働供給は約80万人増と見込まれる、との内容である。この試算を信じれば確かに大きい。
米国においても、米国際貿易委員会(ITC)は今年5月、TPPの米国経済への影響分析の報告書を公表した。2032年の実質国内総生産(GDP)を427億ドル(約4.7兆円)、0.15%押し上げるとの内容である。
GDPに与える影響は、日本に比べ米国においては小さい。これは、TPP参加国12か国のうち、米国は既に豪州、カナダ、メキシコ、チリ、ペルー、シンガポール、6か国と自由貿易協定を結んでいるのも一因であろう。米国においては、日本ほどTPPへの期待は大きくないと思われる。
2月4日の署名から2年以内に全12カ国が国内手続きを終えればその60日後に発効する。それまでに手続きが終わらない国があっても、6カ国以上が手続きを終え、手続きを終えた国の国内総生産の合計が全体の85%を超えれば発効となるとのこと。特に米国の比率が高く、60.4%とのこと。米国を除く国すべてが批准しても、39.6%で、85%に届かない。米国の批准無くしてTPPは発効されない。日本がどう頑張っても、米国次第だ。
米国においては、自由貿易は「国内製造業を衰退させ、雇用を失わせた」と、自由貿易への疑問が広がっている。民主党においては、「反TPP」を旗印とするサンダース上院議員が若者を中心に人気を集めている。クリントン氏は当初TPPに賛成であったが、この流れに押され、TPP反対の姿勢を強めたとのことだ。推進派は「クリントン氏は、大統領選に勝てば、賛成に転じる」と楽観視しているが、サンダース氏の意見を完全無視するわけにはいかないだろう。一方共和党のトランプ候補は、米国から利益をはく奪するTPPには署名しないと断言している。米国におけるTPPの行方は真っ暗である。さて、日本はどうするだろうか。
20016.06.01(犬賀 大好-238)
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