国連総会の第1委員会(軍縮・安全保障)で “核兵器禁止条約” の交渉を来年から始めるとの決議が、先月27日、賛成123、反対38、棄権16、賛成多数で採択された。採決では、核兵器の保有国のうちアメリカやロシアなどが反対したのに対し、中国やインドは棄権した。一方非保有国の日本も反対に回った。
この交渉開始決議案に関し、米国は同盟国に棄権ではなく反対するように文書で要求していた。米国が反対する理由は、北太平洋条約機構(NATO)やアジア太平洋諸国の核抑止力に影響するから、とのことだ。日本は、本心から反対だったのか、米国に言われたからか分からないが、反対にまわったのだ。中国、インドの棄権の意図は分からない。
さて、北朝鮮は着々と核武装を進めており、日本が米国の傘を必要とする原因の一つを作っている。しかし、先の決議には賛成したとのことであり、それが本心であれば、日本は北朝鮮に対しては米国の傘を必要としない筈だ。
どうも、賛成するか、反対するか、は禁止条約の中身が問題ではなく、どの国が主導しているかや、 国の面子が関係していると感ずる。核兵器を廃絶することは、人類の理想であり、これまでにも様々な条約、様々な決議がある。しかし、同じような内容であっても、賛成したり反対したり、複雑極まりない。
古くは、1970年に発効した核不拡散条約(NPT)は米ロ英仏中の5カ国だけに核兵器保有を認めているが、第6条は核保有国側に核軍縮について誠実に交渉する義務を課している。しかし実際は有名無実化している。例えば、ロシアのプーチン大統領は今年10月、兵器級の余剰プルトニウム処分についての米国との協定を停止する大統領令に署名した。この協定は、2000年に米ロが合意。戦略兵器削減合意の履行に伴って発生する兵器級プルトニウムを双方が34トンずつ処分するとの内容であったが、完全にNPTは無視された。
昨年12月には、ニューヨークの国連本部において開催された国連総会本会議において,我が国が107か国の共同提案国を代表して提出した核兵器廃絶決議案(「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」)が,賛成166,反対3,棄権16で採択された。先に反対に回った核兵器禁止条約と趣旨は同じと思うが。
また、宇宙や地下を含むあらゆる空間での核実験を禁止する条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を求める決議が本年9月、国連安全保障理事会で採択された。発効には核保有国と、潜在的な核開発能力があるとされる44カ国の批准が必要だが、15理事国のうち14か国が賛成した。賛成多数で”めでたしめでたし”と言いたいところであるが、この条約に法的な拘束力は無しとのことで、理想とはほど遠いものらしい。棄権に回ったエジプトが、「決議案は核保有国に課されている核軍縮の義務に触れていない」と訴えたのは、もっともだ。
核なき世界を目指すアメリカのオバマ大統領は、自ら検討していたとされる「核兵器の先制不使用宣言」について、政権内から「同盟国を動揺させる」「ロシアや中国を勢いづかせる恐れがある」といった反対の声が相次いだため、宣言を断念したようだ。
これに先立ち、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官にこの宣言の懸念を伝えたとの米紙報道があったが、首相はそれを全面否定した。恐らくこの報道は確かであろう。首相は、行きがかり上この2枚舌を使わざるを得ないのであろう。
日本は、急速な軍拡を進める中国、核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対抗するためにも、米国核の傘は外せない。先制不使用宣言も核兵器禁止条約も、核の傘の抑止力を損なうもので、賛同しがたいと言うのが政府の考えだ。
先に反対した核兵器禁止条約の交渉開始決議に際し、日本の佐野利男軍縮大使は「実効的に核軍縮を進めるには、核保有国と非核保有国の協力が必要。国際社会の総意が必要と主張してきたが反映されなかった」と反対に回った理由を述べたが、その言い訳に説得力は感じられない。
核軍縮は核保有国の意向次第であり、非保有国がいくら核軍縮を訴えたところで、犬の遠吠えに過ぎないが、世界で唯一の被爆国であり、非保有国の日本は、世界の非保有国をまとめ、保有国に圧力をかける位の迫力を示してもらいたいものだ。2016.11.05(犬賀 大好-283)
この交渉開始決議案に関し、米国は同盟国に棄権ではなく反対するように文書で要求していた。米国が反対する理由は、北太平洋条約機構(NATO)やアジア太平洋諸国の核抑止力に影響するから、とのことだ。日本は、本心から反対だったのか、米国に言われたからか分からないが、反対にまわったのだ。中国、インドの棄権の意図は分からない。
さて、北朝鮮は着々と核武装を進めており、日本が米国の傘を必要とする原因の一つを作っている。しかし、先の決議には賛成したとのことであり、それが本心であれば、日本は北朝鮮に対しては米国の傘を必要としない筈だ。
どうも、賛成するか、反対するか、は禁止条約の中身が問題ではなく、どの国が主導しているかや、 国の面子が関係していると感ずる。核兵器を廃絶することは、人類の理想であり、これまでにも様々な条約、様々な決議がある。しかし、同じような内容であっても、賛成したり反対したり、複雑極まりない。
古くは、1970年に発効した核不拡散条約(NPT)は米ロ英仏中の5カ国だけに核兵器保有を認めているが、第6条は核保有国側に核軍縮について誠実に交渉する義務を課している。しかし実際は有名無実化している。例えば、ロシアのプーチン大統領は今年10月、兵器級の余剰プルトニウム処分についての米国との協定を停止する大統領令に署名した。この協定は、2000年に米ロが合意。戦略兵器削減合意の履行に伴って発生する兵器級プルトニウムを双方が34トンずつ処分するとの内容であったが、完全にNPTは無視された。
昨年12月には、ニューヨークの国連本部において開催された国連総会本会議において,我が国が107か国の共同提案国を代表して提出した核兵器廃絶決議案(「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意の下での共同行動」)が,賛成166,反対3,棄権16で採択された。先に反対に回った核兵器禁止条約と趣旨は同じと思うが。
また、宇宙や地下を含むあらゆる空間での核実験を禁止する条約、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を求める決議が本年9月、国連安全保障理事会で採択された。発効には核保有国と、潜在的な核開発能力があるとされる44カ国の批准が必要だが、15理事国のうち14か国が賛成した。賛成多数で”めでたしめでたし”と言いたいところであるが、この条約に法的な拘束力は無しとのことで、理想とはほど遠いものらしい。棄権に回ったエジプトが、「決議案は核保有国に課されている核軍縮の義務に触れていない」と訴えたのは、もっともだ。
核なき世界を目指すアメリカのオバマ大統領は、自ら検討していたとされる「核兵器の先制不使用宣言」について、政権内から「同盟国を動揺させる」「ロシアや中国を勢いづかせる恐れがある」といった反対の声が相次いだため、宣言を断念したようだ。
これに先立ち、安倍首相がハリス米太平洋軍司令官にこの宣言の懸念を伝えたとの米紙報道があったが、首相はそれを全面否定した。恐らくこの報道は確かであろう。首相は、行きがかり上この2枚舌を使わざるを得ないのであろう。
日本は、急速な軍拡を進める中国、核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対抗するためにも、米国核の傘は外せない。先制不使用宣言も核兵器禁止条約も、核の傘の抑止力を損なうもので、賛同しがたいと言うのが政府の考えだ。
先に反対した核兵器禁止条約の交渉開始決議に際し、日本の佐野利男軍縮大使は「実効的に核軍縮を進めるには、核保有国と非核保有国の協力が必要。国際社会の総意が必要と主張してきたが反映されなかった」と反対に回った理由を述べたが、その言い訳に説得力は感じられない。
核軍縮は核保有国の意向次第であり、非保有国がいくら核軍縮を訴えたところで、犬の遠吠えに過ぎないが、世界で唯一の被爆国であり、非保有国の日本は、世界の非保有国をまとめ、保有国に圧力をかける位の迫力を示してもらいたいものだ。2016.11.05(犬賀 大好-283)
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