日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

米国社会における過激派のイスラム化

2016年06月18日 09時46分27秒 | 日々雑感
 今月12日に、米フロリダ州オーランドのナイトクラブで銃乱射事件があり100人以上が死傷したとの報道があった。過激派勢力のいわゆる「イスラム国 (IS)」が犯行声明を出しているが、関与の程度は不明だとのことだ。実行犯はアフガニスタン移民の両親を持つ米国生まれの29歳の男で、ISに忠誠を誓っていたとされる。

 オバマ大統領はこれを「テロとヘイトの行為」だと強く非難し、アメリカ国民が「悲しみと怒りと、自分たちを守ろうという決意」で一致団結していると語った。米国は国内に、テロ、人種差別や性的マイノリティに対する差別、移民問題、経済格差など数多くの問題を抱えており、大統領のこの発言も具体性なく、むなしく聞こえる。

 昨年11月のパリ同時多発テロ、今年3月のベルギー首都の空港およびEU本部近くの地下鉄駅構内での連続テロに引き続くISによる大規模テロと報道されている。しかし、今回のテロは、国際問題より米国の国内問題の方が原因となっているようだ。米国は自由経済の総本山であり、その結果として、拡大する経済格差は大問題のようである。

 米国の格差の大なる例として、ハーバード大学では、10ヵ月で7万ドル(約770万円)必要とするらしい。成績が優秀であれば誰でも安い学費で行けると思っていたが、日本の私立医学部並みの高さだ。このように、超富裕層の子どもしか入ることが出来ないが、そのようなエリート大学を出ると投資銀行ですぐに年収2000万~3000万を稼ぐようになるそうだ。金持ちは益々金持ちに、貧乏人は一生這い上がれない構造が確立しているのだ。

 今回の事件の容疑者の詳細は不明であるが、恐らく社会に対する不満が根にあったと想像される。次期米国大統領候補にトランプ氏が名乗りを上げているが、その人気は人々の不満に乗じ、煽っていることであろう。常識的には解決が極めて困難な問題もトランプ氏に任せれば、簡単に解決できると。このように閉塞感に満ちた米国社会での、移民系の若者の過激化は想像に難くない。

 6月11日、朝日新聞オピニオンで、欧州大学院大学(EUI)教授、オリビエ・ロワ氏が蔓延するテロに対する見解を述べている。氏はイスラム世界専門家だそうで、今の現象はイスラム教徒の過激化でなく、過激派のイスラム化であるとしている。説得力ある見解である。

 今回の実行犯は単独犯行らしく、ISから指令を受けたとの証拠は無いようだ。すなわち自分を取り巻く社会に対する不満を正当化するためにISを名乗っただけと推測される。ISの指示によるテロは聖戦であり、単なる犬死にでなく、仲間から称えられるのだ。これが正にオリビエ・ロア氏が指摘する過激派のイスラム化であろう。

 大統領候補のクリントン氏は事件について、銃規制強化の必要性を強調した。クリントン氏は「戦争の武器はこの国の市街地にあってはならないと、改めて認識させられた」と指摘した。共和党候補になる見通しのトランプ氏は、銃撃を非難しながら「イスラム過激主義」という表現を使わなかったオバマ大統領は辞任すべきだと非難した。かねてからトランプ候補は移民規制強化も打ち出している。

 今回の銃乱射事件は、銃規制や移民問題とは無関係ではないだろうが、根源は若者の不満の爆発であろう。ずばり過激派のイスラム化であるならば、恐らくそうであろうが、若者の不満が解決されない限り、両候補の対策も抜本的な解決にならない。悲劇は繰り返し起こるであろう。
2016.06.18(犬賀 大好-243)

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