日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

内部留保の活用は可能か?

2017年10月14日 09時12分43秒 | 日々雑感
 小池都知事が党首を務める希望の党の選挙公約では、株高・円安・失業率の低下などアベノミクスの成果を認めるものの、2019年10月からの消費増税は、一度立ち止まって考えるべきだ、として凍結する方針を明記した。その中で、財源は300兆円に膨れ上がった大企業の内部留保への課税なども検討して、基礎的財政収支の改善も図るべきとした。

 内部留保の多さは以前から指摘されている所であるが、選挙公約で課税すべきとしたのは希望の党が初めてであろう。自民党は大企業に依存するところが大きいため選挙公約で内部留保云々を声高に言えないであろうが、野党各党とも余り問題視していないのはなぜであろう。

 財務相が9月1日公表した法人企業統計は、2016年度末の内部留保(企業の利益余剰金)が過去最高の約406兆円に達した事を示している。2015年度の内部留保は313兆円であったので、1年間で何と約100兆円も増えたことになる。消費税10%化による増収分の見込みが年間5兆円との話であるので、如何に大きいかが分かる。

 アベノミクス景気で企業は儲かり、配当や役員報酬も増加したが、従業員1人当たりの賃金は減少しているのだそうだ。国内の設備投資は勢いを欠いたままであり、企業は人手不足対策など必要最低限の設備投資しかしておらず、将来予想される不況のためにため込んでいるのが現状らしい。

 安倍首相は”経済の好循環”を実現するために、経営者らに対して、過去の内部留保や利益の増加分を賃上げや設備投資に回すよう協力を求め続けている。その典型が官製春闘であろう。本来賃上げ要求は労働組合が行なうべきであるが、近年、政府が主導して賃上げ要求をする逆転現象が起きている。

 企業が儲かったと言って、それが給与の引き上げに結びつかないのは、日本の場合、いったん月々の給与を引き上げると、景気が悪くなった場合、引き下げることが難しいという現実があるそうだ。そうであるならば、ボーナスを弾めば良いだろう。

 さらに給与を引き上げた場合、それに付随して年金保険料や健康保険料など社会保険の会社負担分が上乗せされるという現実問題がある。社員も給与が増えても社会保険料の自己負担や所得税、住民税が増えるので、恩恵を感じにくいばかりか、企業にとっても負担が大きい。しかも、年金の保険料率は毎年引き上げられる傾向にあるのだ。

 内部留保を社員の賃上げに出来ない別の理由として、内部留保は株の発行や借金と同じく資金の調達方法を意味する言葉であって、内部留保を取り崩して給料に使うという表現は意味をなさない、と主張するエコノミストもいる。単なる言葉使いの問題か、会計上の問題か、この説明では全く理解できない。企業が儲けた金であれば、それをどのように使おうと自由の筈だ。

 内部留保分を課税の対象にするとの小池都知事の案に対して、税金の二重取りと批判する人もいる。元々企業は法人税を払っているので、二重取りとなるとの理屈である。それであるならば、法人税の税率を上げればよいが、現実は企業活動を活発化させるために下げる方向だ。

 そうであるならば、法人税を引下げ、企業活動を活発化させ、企業が儲け過ぎた分に改めて課税するのも、一つの方法ではなかろうか。企業の儲け過ぎの分は社会に還元するのが当然だ。

 リーマンショック以降、大企業でもつぶれることが明らかになったせいか、会社がつぶれてしまっては元も子もないと、労働組合も保守的になった。そこで内部留保は不況の際に会社が生き延びるための準備金とのことで、遠慮しているのに違いない。

 国の財政が借金漬けになっているのに、財政再建の話は、またしても先送りされた。安倍首相は国難と称し、北朝鮮の他に少子高齢化社会の到来を上げている。少子高齢化の問題は今に始まったことではなく、取って付けた感もするが、心底そう思うならば、この膨大な借金を少しでも減らす策を講じ、将来子供たちが安心して暮らせる社会を目指すべきであろう。
2017.10.14(犬賀 大好-381)

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