日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

現在の地質年代は ”人新世” ?

2016年04月23日 09時57分24秒 | 日々雑感
 地球が誕生したのは46億年前。この46億年間の地球の歴史を区分する地質年代は、地層に含まれる化石や岩石から環境の変化を読み取って区別される。地質年代では新第三期でマンモスが活躍していた時代に人類は誕生したようだ。そして現在は1万7000年前から始まった新生代第四紀完新世にあたるとのことだ。この名前からは何のことかさっぱり分からないが、学術的には、ヨーロッパ大陸全体が氷で覆われる氷床の消滅をもって定義され、このころから、人類の直接の祖先であるヒト(ホモ・サピエンス・サピエンス)が世界規模で拡散し、生物の頂点に君臨し始めたのだ。しかし、当初地球上における人間の影響は微々たるものであったが、次第に地球規模の影響を与え始めた。そこで人間の活動の影響が大きくなった現在の世を更に区別しようとの考えで現在を ”人新世” と呼ぶべきとの考えが広まったとのことだ。

 ところで人新世はいつから始まったかに関してはいろいろな意見があるようだ。早くは約8000年前に農耕や牧畜が拡大し二酸化炭素やメタンの濃度が拡大し始めたときを始まりとする説や、遅い方では20世紀半ばに核実験や地球温暖化等の人為的変化が加速し始めたときとする説があるそうだ。核実験の影響まで言い出すと、純粋な科学的な議論にとどまらず、政治的な問題も含むので、意見の統一は難しいとのことである。

 人類が新たに作り出したプラスティックは、自然界には存在せず、廃棄されれば地中でほぼ永久に保存される。20世紀のはじめに、ベークライトという新しいプラスチックが誕生してからその後続々と新しいプラスティックが発明された。プラスチックは年々消費が拡大し、2012年の生産量は全世界で2億8800万トンに達したとと言われてもピンと来ないが、身の回りを見れば、プラシティック製品が嫌でも目に付く。しかも、このうち数%が海洋に流出しているとの試算もあり、地球規模でも拡散しているようだ。最近では、バクテリアや光に分解されるプラスティックの発明もなされ、今後そちらの方が増えていくのであろうので、今までのプラスティックは、化石のように年代の同定に使えるとして「テクノフォッシル」(技術化石)と間違いなく呼ばれるだろうとのことである。しかも、このテクノフォッシルは100年間という、地球の歴史から見れば極めて短期間に蓄積された、年代の同定には精度の高いテクノフォッシルとなろう。

 さて、”人新世” は生物大絶滅の点でも特筆すべきである。地球上ではこれまで5回の生物大絶滅があったとされる。有名なのは6500万年前の恐竜の絶滅である。これは巨大な隕石が地球に衝突した際に引き起こされた異常気象が原因と言われている。恐竜が絶滅した頃の地層には、イリジウム濃度が異常に高い層があるようだ。イリジウムというのは、地球の地殻にはほとんど存在せず、隕石に多く含まれる物質であるので、恐竜の絶滅は隕石の衝突が切っ掛けとの推測が成り立つわけである。イリジウムは重要なテクノフォッシルとなる訳だ。

 恐竜の絶滅の他、4回の生物大絶滅が過去にあった訳であるが、現在進行中の第6回目の生物大絶滅は比較にならないくらい大規模との話だ。人類による自然破壊のため、約 2000万種の生物のうち、毎年5万~15万種の生物が今も絶滅し続けており、この絶滅の速度は過去の絶滅の数万倍とのことだ。恐竜の絶滅など大した出来事ではないことになる。

 また、他方、人類は遺伝子組み換えで、本来は地球上に存在しない生き物を作り出し始めている。遺伝子を組み替えた大豆やとうもろこしは、外見は同じでも除草剤に強い等、自然界では顕著な違いを見せる。更に中国では、人間の受精卵に遺伝子操作を行う試みも行われているようだ。そのうち、特殊な能力を有する人類の登場もあるかも知れない。

 人類が大爆発し始めた産業革命からわずか2,300年間、地球上の生態系は大きく変わり、更に変わりつつある。新生代第四紀完新世の中でも ”人新世” は、人類暴走の年代と称されるであろう。
2016.04.23(犬賀 大好-227)

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