日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

アベノミクスを評価する

2016年07月02日 08時41分02秒 | 日々雑感
 安倍首相は、来年4月実施予定の消費税10%化を2019年に再延期すると宣言し、参議院選挙に突入した。理由の一つに、世界はリーマンショック級の不景気に落ち込む懸念がある、があった。6月24日英国の国民投票でEU離脱派が勝利し、マスコミはリーマンショック級の不景気の懸念が生じたと大騒ぎである。先の伊勢志摩サミットでは、首相のこの懸念は各国の合意を得なかったが、マスコミの評が本当であるならば、先見の明があったと言わざるを得ない。

 安倍首相はアベノミクスの成果を列挙する。例えば、株価や円高是正である。数値を見ればその通りであるが、いづれも外国との関係で決まる値であり、アベノミクスの直接の成果ではない。株価は海外の機関投資家の影響が強く、為替レートは言わずもがなである。日本経済は世界の経済の影響をもろに受ける。現に英国のEU離脱を巡って、株価や為替レートは乱高下した。

 さて、英国がEC離脱を宣言してから2年後に、正式な離脱が完了するとのことである。その間にいろいろな離脱手続きがあるそうだ。英国国民も馬鹿ではない。冷静に考えれば、”あちら立てればこちら立たず” の世界を理解するであろう。かって、大英帝国の夢から覚めず英国病に陥ったが、サッチャー元首相が金融大国への道を開いた。金融は、英国単独では成り立たない。世界に門戸を開いて成り立つ。従って、素人目にも、現状が一変するような変化は起きないような気がする。

 日本は、そんなことに一喜一憂せず、アベノミクスの今後を冷静に考えるべきだ。安倍首相は、消費増税を先送りしたが、国際通貨基金(IMF)は日本経済に関する年次審査後の声明で、財政健全化のため0.5%幅ずつでも上げて、最終的には15%まで引き上げる必要があると指摘した。他国が心配するほど日本の財政状態はひっ迫しているのだ。15%では甘く、20%以上必要と主張する識者もいる。

 今回のIMF声明では、アベノミクスが日本経済を活性化したと評価しつつも、労働者の基本給が伸び悩み、消費や投資が低迷しているとし、このままでは政府が目指す物価上昇や経済成長などの目標達成は困難、政策を見直すべきと結論付けた。

 個人消費の低迷は、給与の低迷や消費増税の影響が残っているからとの話であるが、アベノミクスが将来の不安を払しょくするまでに至っていないことに気が付くべきである。求人有効倍率が全国各地で1以上になったと自慢するが、中身は非正規労働者であり、雇用の不安定さから多少給与が増えても貯蓄に回すのが落ちであろう。

 アベノミクスは5年先、10年先の安定に繋がっているのか。第1次安倍内閣で官房長官を勤めた与謝野馨氏は、安倍政治は、国民の評判を落とす危険のある政策は避けて通る基本体質を有すると指摘する。消費増税の先送りはその典型であろう。その結果、社会保障の充実は約束通り実施されそうになく、またまた国民の不安を高めた。

 1千兆円を超える国の借金は、爆弾がいまも時を刻んである。いつか爆発し、国債価格が下がって大混乱になる。結果はハイパーインフレである。物価上昇率2%どころではない。200%になるかもわからない。

 日銀は毎年80兆円のお札を刷っている。国民の保有する金融資産の約5%に相当するのだそうだ。これは、毎年5%資産が目減りしていることに相当するのだそうだ。すなわち同時に借金も減っていることになるだろう。国のデフレ脱却政策はインフレ促進政策であるが、同時にハイパーインフレ導入が隠された目的かも知れない。こう考えなければ、借金1千兆円を超えても平気でいられる理由が分からない。

 歴代の政権は、民主党政権でも同様であるが、成長戦略を唱えてきた。このため、安倍政権は金融緩和に重点を置いた。しかし、有望な成長分野がなければ、いくら資金を供給しても投資に結び付かない。誰もが有望な成長分野が存在すると夢見るが果たして存在するのだろうか。先進国は既に成熟社会が到来し、必要な物や欲しいものが無い。かって、日本を支えた電子技術はシャープや東芝の大企業の衰退が象徴するように、行き詰っている。技術的な行き詰まりより、必要性の行き詰まりだ。

 安倍政権が重視するTPPも、経済の一時的な活性化に繋がるかも知れないが、所詮は経済の効率化である。効率化の先には社会の脆弱性が高まる。しかも、次期米国大統領と思われるクリントン氏は、現行のTPPに反対し、関係国と再交渉を明言した。これを受けて、安倍首相は、「ありえない話だ。仮に求められても応ずる考えは全くない」と強気の姿勢を見せているが、米国には頭の上がらない日本だ。再交渉に応ずるに違いない。

 TPPにより、安い農作物が手に入りやすくなるかも知れないが、田畑の荒廃は避けたい。先見の明がある安倍首相である。目先の利益ではなく、国家100年の計として、避けては通れないTPPの再交渉に臨んでもらいたい。同時に、将来に希望を持てるような社会の実現に向けて、身を切る改革を進めてもらいたい。先見の明がある安倍首相には出来るはずだ。
2016.02.07(犬賀 大好-247)

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