日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

科学における不正行為を考える

2015年03月21日 10時24分52秒 | 日々雑感
 3月10日、NHKクローズアップ現代で“論文の不正は止められるのか”の放映があった。不正の背景には、インパクトある論文を量産しないと研究費が確保できない研究環境や、研究室の密室性が関わっていると専門家は指摘するが、今一はっきりしない。
 不正防止対策として、国は去年「研究不正防止のガイドライン」を改定し、研究者の倫理教育プログラム受講の徹底や、研究生データの保存義務づけなどの新たな対策に乗り出したそうだが、論文の虚偽記載に関しては、既に平成15年、日本学術会議の“学術と社会常置委員会が”「科学における不正行為とその防止について」の報告をしている。
 研究倫理と言えば、体外受精や原子力の開発等、研究対象が人類にとって有益か等の高尚な内容かと思っていたが、そんな高次元の内容ではなく、研究の遂行、成果の発表に関するものが中心であった。その中で、不正の防止策としては、大学においては倫理教育を強化することが望ましいとの指摘があった。具体的には以下の内容であった。
 “科学研究ことに科学の進展の鍵を握る分野の研究での欺瞞や不正はいかなるものであれ、その再現が不可能なことから必ず短期間のうちに暴露されるという認識を徹底させるべきであろう。それを犯したものは、それによってたちどころに研究者としての経歴に不名誉な終止符を打たれることは疑う余地のないものでなければならない。”
 こんな基本中の基本をわざわざ倫理教育としてやる必要があるかと思っていたが、どうやら本当に必要であったらしい。結論で、研究行動規範(ガイドライン)の作成等を提言しているが、昨年行ったのはこの改定であったのか。兎も角、今もって改善がなされていないようだ。
 最近では東京大学分子細胞生物学研究所の旧加藤研究室に関わる165件の論文の内、33件に不正が見つかったそうだ。報道によれば生命科学の分野においては、加藤研究室ばかりでなく各所で問題が起こっているようだ。
 この分野において論文不正が話題になるのは、やはり時代の先端を走る分野であるからであろう。新たな発見が、これまで不治と思われてきた病を治すかも知れないとの夢をかきたてる。STAP細胞は幻で終わったが、当初はIPS細胞に次ぐノーベル賞級の発見と思われた。時代の先頭を走れば、資金も出、ポストも用意される。当然競争も激しくなる。
 しかし、不正の結末が分かっているのに、不正がなぜ行われるのであろうか。結果の波及効果が大きければ大きいほど、大勢の人間が再実験を試みるが、しかし、抹消の研究においては、追実験者もおらず、嘘も当分ばれないかもしれない。その間に、新たな研究費の請求やポストの確保が可能かも知れない。それも束の間の話だ。STAP細胞では小保方氏が若い女性であったことによる周囲の甘やかし、加藤研究室では東大の名の下での驕り、それくらいしか、不正する理由が思いつかない。(犬賀 大好-113)

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