日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

財政規律の撤回を叫ぶ自民党若手国会議員

2018年06月20日 10時03分42秒 | 日々雑感
 政府は、今年6月の経済財政諮問会議で、経済財政運営と改革の基本方針の原案を公表した。財政再建目標は、国と地方の基礎的財政収支(Primary Balance、略してPB)を、団塊世代の全てが75歳以上となる2025年度までに黒字化すると明記した。

 内閣府は今年1月の経済財政諮問会議で、PBの黒字化見通しを従来の2025年度から2027年度に先送りした筈であった。私の勘違いで無ければ今回はそれより2年早めた分けだが、まともな議論や根拠に基づいての結論であろうか。私には単にアベノミクスの失敗を覆い隠すために早めに設定し直しただけと思われるが。

 現在日本は1千兆円を越す借金を抱えているにも拘わらず、財政の健全化を目的とするPBは、再三先送りされ、借金は雪だるま式に増え続けている。GDPとの比較では既に2倍以上になり、終戦直後の経済状態より悪いとのことだ。行く手には何が待ち受けているだろうか心配になる。

 こんな心配をよそに、自民党の当選2回の若手衆院議員の集まりである”日本の未来を考える勉強会”では、PB黒字化目標の撤回を求めているそうだ。経済成長を優先し、PB赤字を気にせず公共事業や教育分野の歳出を増やすべきだと訴える。経済が成長すれば税収も増えるから何ら問題なしとのストーリーである。

 政府は元々、経済再生なくして財政健全化なしの基本方針であり、経済再生を経済成長と理解すれば何ら矛盾せず、単なる安倍首相の応援団である。しかし、アベノミクスの異次元金融緩和で企業は空前の好景気の筈であるが、それでも財政健全化目標を先送りするのだ。先送りした結果の副作用を考えずに、今が良ければと考える自民の若手議員に不信を感ずる。

 彼らの主張には、京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡氏の影響がある。氏の主張の主要部分は、国の税収を如何に増やすかにあり、そのためには経済成長をひたすら追い求める。消費税の増税も消費低迷となるから反対との立場であり、逆に法人税の減税もそれにより企業の活動が活発化し税収が増えるから賛成の立場である。

 経済成長し税収が増えれば大半の問題は解決できることは、話としては単純で分かり易いが、経済成長が現実的に可能かとなると極めて厳しいと言わざるを得ない。

 内閣府が今年1月作成した”長中期の経済財政に関する試算”によると、名目GDP成長率は2018年度2.5%であり、その後順調に伸び2020年度は3%、2025年度には3.5%になると試算している。過去を見ると乱高下状態であり、2015年度は3%と突出したこともあったが、2016年度は1%となる等2000年以降はほとんどが2%以下であった。金額的には1998年は528兆円、2018年は556兆円であるが、2020年度には600兆円を見込んでいる。兎も角今後の経済の見通しを、極めて楽観的に捉えているが、楽観的過ぎる。捕らぬ狸の皮算用とはこのことだ。

 2018年度予算は一般会計総額が97.7兆円と過去最大である。主たる歳入は、税収が約60兆円、新規発行国債が約34兆円だ。一方歳出は、社会保障費が約33兆円で断トツであるが、その次はこれまでに発行した国債の元利払い分、約23兆円だ。このつけのため、何と新規国債の約7割が費やされるが、更につけは増える一方だ。既に日本の経済は自転車操業状態に陥っている。

 2025年に幸運にもPBが達成できたとしても、このつけは、いつまで続くか分からないが、将来への負の遺産であることには変わりない。

 藤井教授が、経済健全化を税収の増加に依存するのであれば、その根拠をもっと明確にすべきであろう。例えば、成長戦略のありかた、なぜこれまでの戦略がだめであったか等、大学教授として緻密な検証や分析をすべきであろう。
2018.06.20(犬賀 大好-452)

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