6月13日、安倍首相がイラン訪問中に、ホルムズ海峡近くのオマーン湾で石油タンカー2隻が攻撃を受けたが、誰が何のために行ったのか闇に包まれている。
攻撃を受けた1隻は日本の石油タンカーであり、船の横っ腹、水面上の位置に穴を開けられた。事件について、米軍はイランの仕業だと強硬に主張しているが、これに同調しているのは英国やサウジアラビ等の普段からイランと仲の悪い国のみだ。一方、イラン政府は全面否定している。
事件を巡っては、米国はイランの革命防衛隊による犯行の証拠だとする動画や写真を公開するなどして関与を断定してきたが、攻撃の決定的な証拠は示されていない。実際日本のタンカーの攻撃に使われたのは機雷、ミサイルあるいは砲弾か不明のままであり、タンカーの乗組員の証言では飛来物からの攻撃となっているが、米軍の発表では海中からの攻撃だ。
地球上最大の軍事力と情報網を有する米国の話を信じたいが、これまでにウソの発表があったことからして今一説得力に欠ける。トランプ大統領のツイッター発表となると猶更だ。
代表的なウソの例は、イラク戦争の開戦理由である。すなわち、フセインは大量破壊兵器を保有している、である。世界中に情報網を張り巡らす米国が間違う筈が無く、これらはウソを承知の確信犯であったとしか考えられない。
今回の件でも、一部の観測筋からは、アメリカは米軍の映像をイランとの対立を拡大するための口実として利用するのではないかと疑う声もあがっているそうだが、イラク戦争を思うと有りそうな話だ。
タンカー事件の後、米軍の無人偵察機がイランのミサイルで墜落される事件が起こった。これを受けて米軍は報復攻撃を準備したが、直前にトランプ大統領は中止命令を出したとのことだ。
トランプ大統領の真意を図りかねるが、国家安全保障問題担当で最強硬派のボルトン大統領補佐官が側近に控えており、攻撃開始は本気だったであろう。補佐官は不本意な中止命令を受けて、イランへの報復攻撃を直前で中止したトランプ大統領の決断を弱腰などと誤った解釈をしないようにと警告したそうだ。
さて、先のタンカー攻撃に関し、保守派主導のイギリス政府は、イラン軍が攻撃を行ったことはほぼ確実であるという公式声明を出した。イラク戦争を始める際でも米国に同調していたが、英国の情報活動は大丈夫であろうか。
一方、イギリスの最大野党、労働党のウィリアムソン議員は、トランプ政権がイラン政権転覆のためのウソを受け入れてはならないと声明を出した。また、ドイツのハイコ・マース外相も米政府の証拠に疑問を呈した。
更に、アメリカの同盟国フランスも、それほどアメリカを信じておらず、フランス外務省はこの攻撃を非難したが、米情報機関の証拠やその他の情報をどう評価したかについては触れなかったそうだ。トランプ大統領と大の仲良しの安倍首相も米国発表を信じ切っていないようであり、一安心である。
兎も角、安倍首相のイラン訪問中に日本のタンカーが攻撃を受けた事件は、誰が何を目的にしたか現時点では不明であり闇の中だ。2019.06.29(犬賀 大好-559)