日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

核燃料サイクルに夢は残っていない

2019年02月02日 09時53分29秒 | 日々雑感
 世耕経済産業大臣は、1月18日の記者会見で、日立製作所がイギリスでの原発建設計画への参加を凍結したものの、政府としては引き続き原発輸出の政策を進めていく考えを示した。

 大臣は、「世界全体を見れば原発を使いたい国が多数で、今後、いろいろな展開の可能性がある。福島の事故を経験した日本の原発の安全に関する技術が世界に貢献していくことができる」と述べ、これまで政府が成長戦略の柱に掲げてきた原発輸出の政策を引き続き進めていく考えを示した。

 通産大臣としてはそう言わざるを得ないであろう。日本の核燃料サイクルが破綻し、原発輸出の成長戦略も破綻したのは明らかであるが、これまで日本の原発政策を主導してきた通産省として簡単に引き下がる分けにはいかない。

 日本の原発輸出計画が総崩れになる一方、ロシアや中国の原発が多くの国から要望され、建設計画が進んでいるのは確かであろう。世界においては、福島第1原発事故は地震大国日本での特異現象とて忘れ去られようとしている。日本でも原発に関する安全神話が早くも息を吹き返ししつつあるくらいだ。

 日本の原発建設コストが事故後安全性を重視し割高になっているため、具体化しそうだった新設計画が軒並み見送られてしまった。

 世耕大臣の言う色々な展開の可能性とは、ロシアや中国の安価な原発が将来どこかで起こす事故のことだと考えると非常に分かり易い。地震や津波が無くても、慣れに伴う油断は人的な事故を引き起こすこと必須だ。どこかで事故を起こせば、日本の安全に対する技術が見直されること間違いない。これが新たな展開なのだ。他人の不幸を期待する行為であるが、現時点でいくら安全を叫んでも世界には通じない。問題はそれまで技術を維持することだ。

 また、菅官房長官は、「原子力発電所の安全運転、保守や円滑な廃炉、福島第一原発事故の収束を実現するためにも人材や技術、産業基盤の維持・強化は不可欠だ。日本の技術者の育成をどのような方策で実現するかしっかり検討していく」と述べ、技術者育成の方策などの検討に万全を期す考えを示した。これも勘繰れば、どこかで事故が起こるまで人材確保に努めようとの宣言だ。

 ところで日本の原発はこれまでの尻拭いで問題山積みだ。廃炉は勿論、その結果出てくるごみの処分地は今もって決められない。どの問題も長期に亘るため、人材の確保・育成は必須であるが、将来に明るい希望の無い所に優秀な人材は集まらないだろう。

 政府は今もって核燃料サイクルの実現を追い続け、高速増殖炉計画を存続させたいようであるが、再び日の目を見ることは無いだろう。最大の理由は人材不足である。当初開発に携わっていた研究者はみんなリタイアしてしまい、電力会社やメーカーから出向してくるのは未経験者ばかりで、廃炉ですら覚束ないそうだ。世界的に見放された高速増殖炉に関しては若手研究者も尻込み状態であろう。笛吹けど誰も踊らない状態だ。

 原子力関係で夢があるとすれば、核融合技術であろう。これは太陽で起こっている現象を地上で実現する技術であり、炭酸ガスを排出しない、高レベル放射性廃棄物が余り生じない等の利点があるが、実験には膨大な設備と資金が必要であり、研究としてはずいぶん昔からあるが計画通りには進んでいない。

 日本の国として考えた場合、将来の発電の基幹技術を何にすべきか。現在自然エネルギーの利用が最有力であるが、自然の不安定さを補うための蓄電技術がネックになっている。もし画期的な蓄電技術が発明されれば、一気に自然エネルギーへと進むであろう。2019.02.02(犬賀 大好-517)