米国はTPPで、中国を除く太平洋を取り巻く国との間で経済圏を築こうとしている。一方、中国は、シルクロード経済圏構想で、ヨーロッパ諸国との結びつきを強くしようとしている。このためには、南シナ海は重要な海上交通路となるため、ここに軍事拠点を築こうとしている。
現在、米国は絶対的な軍事力で世界の海を制している。米政府は海洋法上の権益を守るため、1979年から他国の過剰な主張を牽制する外交政策をとっている。外交ルートで聞き入れないと、軍艦や軍用機を派遣して警告し、是正させる方針を採っている。
10月27日、米国は「航行の自由作戦」に踏み切った。米国の軍艦が、中国が埋め立てたスビ礁の「領海」と主張する海域に進入し、中国の主張を認めないとする断固たる意志を世界に示したわけだ。
これに対し、米上院軍事委員長であるジョン・マケイン氏は、オバマ大統領がようやく重い腰を上げたと評価しながらも、対応が不十分であると不満の意を唱えた。すなわち、どこでも自由に航行するのが普通なのに、この作戦行動を特別なイベントに仕立ててしまった、と。また、日本の国会が集団的自衛権を容認したことを歓迎するとし、日本がこの海域でより重要な役割を果たすことが出来るようになったと確信すると表明したとのことだ。
安保保障関連法の一つである「重要影響事態法」は、南シナ海での事態発生も想定している。今後、南シナ海で武力紛争が起きた場合、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と政府が認定すれば、自衛隊が米軍などに後方支援が出来る。この認定基準が極めて定性的であるため、時の首相が感情的に決める恐れがある。
中国は海南島に原子力潜水艦の基地を持つ。これを有効的に利用するために、南シナ海の人工島に航空基地を作り、米軍の哨戒活動を妨害することも中国の目的だそうだ。一方、日本の潜水艦探知能力は世界トップクラスであるとのことだ。米艦艇の護衛も出来るようになれば、米軍と一体化した作戦で、存在を誇示でき、日本も先進国の仲間入りが出来たと自慢できるわけだ。
力には力で対抗する論理は単純明快で分かりやすく一見説得力がある。しかし、米中のせめぎ合いが深まれば、米国の拠点である日本は、いや応なく渦中に巻き込まれる。菅官房長官は「航行の自由作戦に参加する予定は無い」と述べたが、南シナ海での自衛隊の活動について「今後検討していくべき課題だ」と、将来、警戒監視活動などに携わる可能性を示唆した。
日本総合研究所の田中均氏は、中国が独自の覇権を持つことに反対するとしながらも、中国が我々と同じ世界秩序の中に入って、建設的な役割を果たしてもらうことが、日本にとっても世界にとっても望ましいと表明した。そこで、様々なチャンネルを通じて国際社会の世論を形成し、中国とは常に対話し、相手が日本の意見を聞くという状況を作らなければならず、様々な分野で協力を深めていくことが、日本の役割であると主張している。話し合いは、飴と鞭を巧みに使い分ける外交手腕がなくてはならず、兎も角時間がかかるが、この道しかないだろう。
力には力で対抗するとの軍拡競争では、日本は中国にかなわない。何しろ相手は核兵器を有し、人口は日本の10倍だ。対話を通して解決するより道は無い。(犬賀 大好-188)
現在、米国は絶対的な軍事力で世界の海を制している。米政府は海洋法上の権益を守るため、1979年から他国の過剰な主張を牽制する外交政策をとっている。外交ルートで聞き入れないと、軍艦や軍用機を派遣して警告し、是正させる方針を採っている。
10月27日、米国は「航行の自由作戦」に踏み切った。米国の軍艦が、中国が埋め立てたスビ礁の「領海」と主張する海域に進入し、中国の主張を認めないとする断固たる意志を世界に示したわけだ。
これに対し、米上院軍事委員長であるジョン・マケイン氏は、オバマ大統領がようやく重い腰を上げたと評価しながらも、対応が不十分であると不満の意を唱えた。すなわち、どこでも自由に航行するのが普通なのに、この作戦行動を特別なイベントに仕立ててしまった、と。また、日本の国会が集団的自衛権を容認したことを歓迎するとし、日本がこの海域でより重要な役割を果たすことが出来るようになったと確信すると表明したとのことだ。
安保保障関連法の一つである「重要影響事態法」は、南シナ海での事態発生も想定している。今後、南シナ海で武力紛争が起きた場合、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」と政府が認定すれば、自衛隊が米軍などに後方支援が出来る。この認定基準が極めて定性的であるため、時の首相が感情的に決める恐れがある。
中国は海南島に原子力潜水艦の基地を持つ。これを有効的に利用するために、南シナ海の人工島に航空基地を作り、米軍の哨戒活動を妨害することも中国の目的だそうだ。一方、日本の潜水艦探知能力は世界トップクラスであるとのことだ。米艦艇の護衛も出来るようになれば、米軍と一体化した作戦で、存在を誇示でき、日本も先進国の仲間入りが出来たと自慢できるわけだ。
力には力で対抗する論理は単純明快で分かりやすく一見説得力がある。しかし、米中のせめぎ合いが深まれば、米国の拠点である日本は、いや応なく渦中に巻き込まれる。菅官房長官は「航行の自由作戦に参加する予定は無い」と述べたが、南シナ海での自衛隊の活動について「今後検討していくべき課題だ」と、将来、警戒監視活動などに携わる可能性を示唆した。
日本総合研究所の田中均氏は、中国が独自の覇権を持つことに反対するとしながらも、中国が我々と同じ世界秩序の中に入って、建設的な役割を果たしてもらうことが、日本にとっても世界にとっても望ましいと表明した。そこで、様々なチャンネルを通じて国際社会の世論を形成し、中国とは常に対話し、相手が日本の意見を聞くという状況を作らなければならず、様々な分野で協力を深めていくことが、日本の役割であると主張している。話し合いは、飴と鞭を巧みに使い分ける外交手腕がなくてはならず、兎も角時間がかかるが、この道しかないだろう。
力には力で対抗するとの軍拡競争では、日本は中国にかなわない。何しろ相手は核兵器を有し、人口は日本の10倍だ。対話を通して解決するより道は無い。(犬賀 大好-188)