森出じゅんのハワイ生活

ハワイ在住のライターが、日々のあれこれをつづります。

偉大なチャンター、クルヴァイマカ

2012年05月01日 | ハワイアナ


昨日の英字紙朝刊(スター・アドバタイザー)に、ハワイ王朝の最後の宮廷チャンター(詠唱者)、クルヴァイマカの話が載っていました。クルヴァイマカといえば著名クムフラ、サイ・ブリッジスのひいおじいさんであり、伝説的なチャンター。それぐらいしか知らなかった私ですが、記事にはクルヴァイマカの生涯がいろいろ紹介されておりました。

クルヴァイマカは1837年、ハワイ島カウ地区に生まれ、19歳でカメハメハ4世の宮廷チャンターになったそうです。そのままリリウオカラニ女王まで代々のハワイ王国君主に使え、1881年にカラカウア王が日本を訪問した際にもお供したとか。もしかしたらもしかして。明治天皇の御前でも、チャントを披露したのかもしれませんね!

さて、私がこの記事に特に興味を惹かれたのは、こんな記述があったからなんです。クルヴァイマカのチャントがハワイにとって貴重な文化遺産であることに気づいたビショップ博物館。1930年代、そのチャントを映像&サウンドで残すプロジェクトを始めたとか。その結果、ペレやヒイアカなど神話系チャントや家系図、王族の偉業などを謳った125ものチャントが記録されたそうです。

その時、クルヴァイマカは100歳近い高齢でした。ですがモノによっては1700行もの長~いチャントを、カメラの前で難なく詠唱したそうですよ。途中でフと止まることもなく、素早くスルスルと…。クルヴァイマカはハワイ王朝が転覆された1893年には職を失い、不慣れな建築の仕事などに就いた時期もあったそう。つまり、長らくチャントをする機会はなかったのではないかと思うのですが、それでもチャントを忘れることはなかった! 1700行もの長~いチャントですら、90歳代のクルヴァイマカは問題なく復唱したわけです。凄まじい記憶力ですよね!

…先月発売になった新著「ハワイの不思議なお話」の中に、実は「ハワイアンのチャント」という項があります(すでに買ってくださった皆さま、P144ですよ~)。その中で私、こんなことを書いています。

「…歴史や天変地異など全て重要な出来事を、チャントに盛りこんで後世に伝えてきたハワイアン。特に王族に関しては、家系図をはじめ様々な事実が、チャントにしっかり記録されてきました…」
「…こうした人生の重要な出来事が数百年も後世へと伝えられているなんて…。口頭伝承を続けてきた昔の人々というのは、本当にすさまじい記憶力の持ち主だったんですね…」

そうなんです。文字を持たなかった古代ハワイアンですが、その代わり、全てを口承で伝えてきたわけで。口頭伝承なんて、とその正確さを信じない人は多いですが、そんなことはありません! と、新著の中で強調したかった私。そんなこともあって、このクルヴァイマカの記事を読み、すっかり感激してしまったのでした。やっぱりハワイアンは偉大です!!

ちなみに、冒頭でふれたクルヴァイマカの子孫であるサイ・ブリッジスさん。フラ競技会の最高峰、メリーモナークで審査員を務めたほどのフラ界の重鎮であるだけでなく、優れたチャンターとしても知られています。先日ダライラマがクアロアを訪問した際、歓迎のチャントをしたのもサイさんでした(下の写真、右端。白いテントの中にダライラマがいます)。さすが~!


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2 コメント

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Unknown (COZY)
2012-05-03 08:47:02
ハワイアンは文字を持たない文化でしたから口頭伝承の一つの方法であるチャントが発達したんでしょうね。
意味はわかりませんが朗々と語られるチャントを聞いているとなんともゆったりした気持ちになります。
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Unknown (JUN)
2012-05-03 15:55:00
COZYさん、こんにちは~。
チャントの暗唱、いわば詩の暗唱のようなものと思いますが、私は学生時代、苦手でした(笑)。
これも天性&訓練の賜物なのでしょうかねえ?
競技会などで聞くチャントの達人は声そのものが七色って感じで、素晴らしいですよね~。
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