で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1793回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『ホワイト・ストーム』
かつての義兄弟が宿敵となり、麻薬撲滅を巡り、香港全土を巻き込む壮絶な戦いへと突入するノワール・アクション。
全世界興収200億円突破のメガヒットを果たし、中国市場では香港映画(合作)としては最大のヒット作となった。
ラスト15分の映画史を塗り替える大激突アクションが話題になった全人類未体験の激突エンターテインメント。
香港の2大スター、アンディ・ラウとルイス・クーが12年ぶりに共演。
アンディ・ラウは事故からの復帰作。
監督は、『イップ・マン 誕生』、『 八仙飯店之人肉饅頭』の鬼才ハーマン・ヤウ。
物語。
ティンは香港最大の裏組織・正興組の幹部で、叔父が組長だった。
正興組には、決して麻薬に手を出してはならないという鉄の掟があった。
だが、ティンの部下で義兄弟の地蔵の店で麻薬の売買が行われていることが発覚してしまう。
15年後、組を離れ、金融業で成功したティンは麻薬撲滅運動に力を注いでいた。
地蔵は麻薬四天王のひとりとなっていた。
そして、再び、二人の道が交差する。
脚本:ハーマン・ヤウ、エリカ・リー、エリック・リー
出演。
アンディ・ラウ (ティン)
ルイス・クー (地蔵(ディゾン))
ミウ・キウワイ (フォン刑事)
カリーナ・ラム (ミシェル)
クリッシー・チャウ (メイ)
ケント・チェン (叔父)
スタッフ。
製作:ジャンク・ホン、アーサー・クー、アルヴィンラム、アンディ・ラウ、
撮影:ジョー・チャン
編集:鍾煒釗(as Azrael Chung)
音楽:麥振鴻 (as Brother Hung)
『ホワイト・ストーム』を鑑賞。
現代香港、元義兄弟と因縁のある刑事が宿敵となり麻薬撲滅を巡り戦うサスペンス・アクション。
3時間分を定番話法を使い、100分でまとめる香港力業のトリオ群像。それが可能にしてるのは原題に隠れてる。原題は『掃毒2:天地對決』。実は続編。1は邦題は『レクイエム 最後の銃弾』。主人公は引き継いでますが、まったく話は繋がってないので単独で楽しめます。監督もベニー・チャンからハーマン・ヤウに交代してますしね。
なので、雑な感じで見所をひたすら繋げます。この雑さが受けたんだろうね。香港映画史上最大のヒットで『鬼滅の刃』並みの200億円越えを達成している。アンディ・ラウの事故からの復帰作と『プロテージ/偽りの絆』(07)以来の久々のルイス・クーとの共演などいろいろ材料はあったみたいです。
脇キャラ愛があったりなかったり。あと、刑事の娘役がよかった。
往年の香港映画のテンポが今の速度感にマッチした感じなんですかね。ジェットコースター以上のノリに身を任せられると楽しいです。
そういう意味では、最後のカーチェイス以外は普通です。でも、そこだけで十分というかね。
あと、アンディ・ラウとルイス・クーの若さに慄きます。特殊メイクかと思うほど。
画作りから構成まで、きっちり、麻薬ダメを貫いてるのは拍手もの。
そうそう、人の落ち方、轢かれ方、弾の当たり方も注目。映像効果で賞をとるのも納得の凄み。
見せたいとこ、語りたいことだけで出来てる幕の内弁当な弾作。
おまけ。
原題は、『掃毒2:天地對決』。
『麻薬一掃2:天地対決』。
英語題は、『The White Storm 2: Drug Lords』。
『白い嵐2:麻薬王』。
2とあるように続編です。
1は『レクイエム -最後の銃弾-』(2013)。
原題は、『掃毒』で英語題は『THE WHITE STORM』。
3人が主役ということと麻薬撲滅作戦以外のつながりはなかった。
あと、一部キャストと登場人物の名前が同じくらい。
2019年の作品。
製作国:中国・香港合作
上映時間:99分
映倫:R15+
配給:ツイン
「のむコレ2020」(20年10月9日~/東京・シネマート新宿、大阪・シネマート心斎橋)上映作品。
受賞歴。
2020年の第39回香港映画賞にて、最優秀視覚効果賞(Yu Guoliang、Ma Zhaofu、Liang Weimin、He Wenluo)を受賞。
2020年のHuading Awardにて、最優秀香港作品賞を受賞。
ややネタバレ。
『レクイエム -最後の銃弾-』と『ホワイトストーム』は、麻薬撲滅がメインであることと、3人が主役で、大きく時間が経つ構成、夫婦関係、驚きのカーアクション、ある決断の間違いを描くことという物語での共通点以外はつながりは特にない、テーマ連作のようなシリーズとなっています。
ネタバレ。
兄弟の契りの強さは、中華圏の思想の一つで、古くは三国志の桃園の誓いなどもある。
主演二人が歌う主題歌も『兄弟不懷疑』(兄弟は疑わず)で主人公2人の罪を歌い上げる。
主人公の罪を描くタイプの作品は日本ではかなり少ないですが、世界ではけっこう普通のスタイルです。
宗教と共感至上主義が関係があると考えられます。
義兄弟よりも、血の繋がった叔父の方を大事にする、儒教精神とのぶつかりが描かれています。
それが元で、今大事にすべき妻をないがしろにしてしまう。
誰を大事にすべきかが実はこの物語の種で、だから、オープニングは恋人が去るところ。
ある意味、ティンの行動は己の行動の罪滅ぼしで、それは己の裏切りではなく、義兄弟の罪も共に)ともいえる。
その罪滅ぼしの失敗が息子ダニーの死から始まる。
教訓譚としての側面が強い作品なので、中国で受けたのではないか。
これは、『インアファナル・アフェア』もシリーズが進むと、この側面が強くなっていった。
世界には、間違いを見るというエンターテインメントが普通にあるが、現代日本では正しさを見るというのがかなり強いので、この手のは受けづらくなっている。
日本人の意識には、どこかに地上には絶対的な善というか正しき調停者が存在しているという意識があるのではないか。