『ホントノコト』
菱沼康介
ホントノコトを拾ったよ
キョロってポケット入れました
洗濯機で吹雪になって
ベランダから外へ散ってった
ホントノコトは舞ってった
ホントノコトを捨てたんだ
鞄の底 冷蔵庫の隅 フォルダの下
頭の端 体の奥 魂の縁
じっとずっと そんなところで
ホントノコトはひそんでた
ホントノコトを待っていた
くさって まどって さまよって
くずれて すわったその場所で
なんでもないとき ふとふっと
ホントノコトはいつだって
ホントノコトを探してた
根を出し 芽を出し 葉をつけて
やがて 真っ赤な花つけて
心の芯の 果ての果て
ホントノコトは持っていた