で、ロードショーでは、どうでしょう? 第477回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『エリジウム』
SFの体裁のファンタジーだが、映像はがっつりSFというサイエンス・ファンタジー。
ニール・ブロムカンプのオリジナル脚本と監督による新作。
デビュー前から、SFでその才能を世界中に見せ続けている。
第2作でもがっつりです。
タイトルの『エリジウム』は、富裕層しか住めないスペース・コロニー。
地球は汚染と人口増加で見捨てられている。
地球の下層民と宇宙の上層民の構造を映像にしているわけです。
エリジウムはギリシャ神話のエリュシオンのラテン語。
エリュシオンは死後の世界のことで、死んだ英雄たちの魂が幸せに暮らす場所。
タイムクライシスを肉体的に見せるのがお好きなニール・ブロムカンプですが、今作はそのサスペンスをかなり高速に加速させて、映画の速度を上げまくっています。
SF要素満載で追い詰めまくる。
このスピード感がたまりません。
しかも、それが肉体の変化と直結していて、マット・デイモンの変化の演技が素晴らしいので、心配が増大していくのです。
これを見に行くのもありです。
初の豪華キャストですが、使いどころがまるで道具のように使い捨てる。
それは映像やガジェット、アイディアとキャストが並列のような印象で、そこからまるで人間の存在を見せつける物語が展開していくあたりの意志を感じたり感じなかったり。
アクションもできつつ、労働者にも天才にも見える稀有な顔立ちがまさにこの役柄にリアリティを与えている。
主役には、マット・デイモン。
エリジウムの高官にジョディ・フォスター。
エージェントにシャールト・コプリー。
社長に、ウィリアム・フォークナー。
マットの友人に、ディエゴ・ルナ。
地上のメキシカン・ギャングのボスににワグネル・モウラ。
2154年のロサンゼルスが舞台で、メキシコがロケ地なので、南米系が幅を利かせているという設定がキャスティングに反映されており、映画の設定がすみずみまで行き届いている素晴らしさを感じる。
富裕層はフランス語を使うという嫌みたらしい狙いなどにもそれはある。
ジョディ・フォスターはフランス語も話せるしね。
ヒロインで、幼馴染に、アリシー・ブラガで、彼女はSFと馴染みがいいのか、多くの佳作で出演している。
今後もこのジャンルで花を咲かせていきそう。
ちょっとだけ偉い腹黒いちゃんとした人をやらせたら、当代きってのスパイスを効かせるウィリアム・フィクトナーが、またいい箸休め的活躍をしてます。
『ローン・レンジャー』ではがっつりメイクで極悪人役でしたが。
狂気の演技に定評を得つつあるシャールト・コプリーが友人の作品ならではの振り切った狂気を今回も見せてくれます。
撮影も、『第9地区』のトレント・オパロック。
もはやコンビといってもいいほどの機械的な視点をきっちりと映画に反映させます。
音楽のライアン・エイモンは現代的な雰囲気で未来感と不穏を演出。
ダブステップのさりげない差し込み方とかが映像とあいまっていて、気分を醸成させる。
魅力的なガジェットとこだわりの景色に釘付けになる。
美術は、『第9地区』も手がけたフィリップ・アイヴィ
編集は、ジュリアン・クラークとリー・スミス。
アクションにおける音楽とシンクロしたかのようなリズムの可変で、それぞれの戦闘レベルごとに使い分けて、印象を変えるなどしていて、興味深い。
特に細かすぎない回想シーンの印象の発生させ方は、素晴らしい。
ジュリアン・クラークはブロムカンプとタッグを組んできた盟友で、リー・スミスは当代きっての理性派監督クリストファー・ノーランの『ダークナイト』、『シンセプション』を手がけていて、編集でドラマチックを醸し出す腕前は今作でも発揮されている。
言葉の使い方や社会の発展のさせ方など、いろんなとこへのツッコミしつつの、SF知識をフルに使っての補完もいとおかし。
ファンタジーが好きな方にオススメしたい。
ディストピアの住人がその犠牲の上に成り立つユートピアに反抗する定番の解放物語にグッときちゃうぜ。
おまけ。
ネタバレ。
エリジウムはスタンフォード・トーラス型といわれるタイプ。
見上げると空に丸に星型が見えるが、ナチスがユダヤ人を示すためにつけさせた黄色い星を思い出させた。
上空空間が空いてるのはコロニーは、『リングワールド』などのSF小説でもお馴染みですが、映画だと初かも。
不法移民のシャトルを地球側から攻撃したら、デブリでやばいことになるよね。
しかも上が空いたタイプのコロニーだし。
そりゃ、怒られるよ。
いったん引き入れて射殺逮捕する方法じゃないと。
あの判断は解任レベルだと思う。
エージェントには地上基地を攻撃させればいいのではないかしら。
で、一般市民を殺害したことで解雇の方が良かったのでは?
エネルギーフィールドで保護してるのかしら?
でも、エネルギーフィールドは一瞬しか使えないのと、かなり特殊な武器という設定だと分からないとあれが基本の技術だったらいろいろ変わるよね。
実は、ニール・ブロムカンプは、日本アニメなどからも影響を受けているそう。
それゆえの日本刀やエネルギーシールドらしい。
特に、士郎正宗からの影響は大と公言している。
たんなる銃がほとんど出ない割に、車は100年前のスクラップが堂々と走ってるのは少し残念。
だが、そう見えないように改造して、気を配っている。
逃走シーンで、車盗むシーンあっても良かったんじゃないかな?
マックスが伝説的な人物だと見せるシーンがないのが、クルーガーとの対決があくまでもエクソスーツによるものだけになるとね。
エクソスーツもどう見ても世代が違うから、勝ち方にちょっと納得しづらいのよね。
まぁ、作劇上の理由で勝った感じが少々ある。
同様に、流石に再起動だけで全部解決しちゃうのもスペースコロニーの構造としてはどうなのかしらと思っちゃうけどね。
ま、そこがファンタジーとして割り切ったところなんでしょうけど。
人口が増えまくった理由は国際紛争つまり大きめの戦争がなくなって小競り合いしかなくったからなのかね?
だから、エリジウム自体は武装してないのかね?
人口の増加、医療の格段の進歩で、富裕層が人の命に無頓着になっていることが社会全体に影響しているという設定が活きている。
それゆえ、ラストシーンの医療ポッドによって、更なる人口増加が起こり、下手すると社会制度は崩壊する可能性が高まったとも言える。
英雄行為が世界を救うわけではないが、それでも人は決断しなければならない。
誰かのために決断する行為はそれでも美しい。
再会や約束の叶え方が皮肉めいてるとかの切なさがいいのよね。
あの約束のサインの○がエリジウムを感じさせるあたりとか、SFや寓話に最も必要な部分をわかってるあたりがぐっときます。
労働者が愛情や意思でヒーローになる瞬間にどうしたってグッとくるよね。
ラストのスイッチを押す描写は、バーホーベン版の『トータルリコール』のスイッチを押すシーンを彷彿とさせつつ、芝居で格段の違いを見せつける。
ニール・ブロムカンプはポールバーホーベンのファンだそうで、『ロボコップ』からの影響大なんだとか。
しかも、マット・デイモンのラストが『プライベート・ライアン』のトム・ハンクスの体勢だと思うと、感慨深いよね。
孤児院のシスターが言う「あなたは特別な子だから、人生に一度特別な決断をするときがあるのよ」は希望のないあの世界では希望の言葉になるわいね。
追記。
記憶を運ぶのは『JM』だね。
『JM』はリメイク企画が進んでいたはずだけど、どうなったのかしら?
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『エリジウム』
SFの体裁のファンタジーだが、映像はがっつりSFというサイエンス・ファンタジー。
ニール・ブロムカンプのオリジナル脚本と監督による新作。
デビュー前から、SFでその才能を世界中に見せ続けている。
第2作でもがっつりです。
タイトルの『エリジウム』は、富裕層しか住めないスペース・コロニー。
地球は汚染と人口増加で見捨てられている。
地球の下層民と宇宙の上層民の構造を映像にしているわけです。
エリジウムはギリシャ神話のエリュシオンのラテン語。
エリュシオンは死後の世界のことで、死んだ英雄たちの魂が幸せに暮らす場所。
タイムクライシスを肉体的に見せるのがお好きなニール・ブロムカンプですが、今作はそのサスペンスをかなり高速に加速させて、映画の速度を上げまくっています。
SF要素満載で追い詰めまくる。
このスピード感がたまりません。
しかも、それが肉体の変化と直結していて、マット・デイモンの変化の演技が素晴らしいので、心配が増大していくのです。
これを見に行くのもありです。
初の豪華キャストですが、使いどころがまるで道具のように使い捨てる。
それは映像やガジェット、アイディアとキャストが並列のような印象で、そこからまるで人間の存在を見せつける物語が展開していくあたりの意志を感じたり感じなかったり。
アクションもできつつ、労働者にも天才にも見える稀有な顔立ちがまさにこの役柄にリアリティを与えている。
主役には、マット・デイモン。
エリジウムの高官にジョディ・フォスター。
エージェントにシャールト・コプリー。
社長に、ウィリアム・フォークナー。
マットの友人に、ディエゴ・ルナ。
地上のメキシカン・ギャングのボスににワグネル・モウラ。
2154年のロサンゼルスが舞台で、メキシコがロケ地なので、南米系が幅を利かせているという設定がキャスティングに反映されており、映画の設定がすみずみまで行き届いている素晴らしさを感じる。
富裕層はフランス語を使うという嫌みたらしい狙いなどにもそれはある。
ジョディ・フォスターはフランス語も話せるしね。
ヒロインで、幼馴染に、アリシー・ブラガで、彼女はSFと馴染みがいいのか、多くの佳作で出演している。
今後もこのジャンルで花を咲かせていきそう。
ちょっとだけ偉い腹黒いちゃんとした人をやらせたら、当代きってのスパイスを効かせるウィリアム・フィクトナーが、またいい箸休め的活躍をしてます。
『ローン・レンジャー』ではがっつりメイクで極悪人役でしたが。
狂気の演技に定評を得つつあるシャールト・コプリーが友人の作品ならではの振り切った狂気を今回も見せてくれます。
撮影も、『第9地区』のトレント・オパロック。
もはやコンビといってもいいほどの機械的な視点をきっちりと映画に反映させます。
音楽のライアン・エイモンは現代的な雰囲気で未来感と不穏を演出。
ダブステップのさりげない差し込み方とかが映像とあいまっていて、気分を醸成させる。
魅力的なガジェットとこだわりの景色に釘付けになる。
美術は、『第9地区』も手がけたフィリップ・アイヴィ
編集は、ジュリアン・クラークとリー・スミス。
アクションにおける音楽とシンクロしたかのようなリズムの可変で、それぞれの戦闘レベルごとに使い分けて、印象を変えるなどしていて、興味深い。
特に細かすぎない回想シーンの印象の発生させ方は、素晴らしい。
ジュリアン・クラークはブロムカンプとタッグを組んできた盟友で、リー・スミスは当代きっての理性派監督クリストファー・ノーランの『ダークナイト』、『シンセプション』を手がけていて、編集でドラマチックを醸し出す腕前は今作でも発揮されている。
言葉の使い方や社会の発展のさせ方など、いろんなとこへのツッコミしつつの、SF知識をフルに使っての補完もいとおかし。
ファンタジーが好きな方にオススメしたい。
ディストピアの住人がその犠牲の上に成り立つユートピアに反抗する定番の解放物語にグッときちゃうぜ。
おまけ。
ネタバレ。
エリジウムはスタンフォード・トーラス型といわれるタイプ。
見上げると空に丸に星型が見えるが、ナチスがユダヤ人を示すためにつけさせた黄色い星を思い出させた。
上空空間が空いてるのはコロニーは、『リングワールド』などのSF小説でもお馴染みですが、映画だと初かも。
不法移民のシャトルを地球側から攻撃したら、デブリでやばいことになるよね。
しかも上が空いたタイプのコロニーだし。
そりゃ、怒られるよ。
いったん引き入れて射殺逮捕する方法じゃないと。
あの判断は解任レベルだと思う。
エージェントには地上基地を攻撃させればいいのではないかしら。
で、一般市民を殺害したことで解雇の方が良かったのでは?
エネルギーフィールドで保護してるのかしら?
でも、エネルギーフィールドは一瞬しか使えないのと、かなり特殊な武器という設定だと分からないとあれが基本の技術だったらいろいろ変わるよね。
実は、ニール・ブロムカンプは、日本アニメなどからも影響を受けているそう。
それゆえの日本刀やエネルギーシールドらしい。
特に、士郎正宗からの影響は大と公言している。
たんなる銃がほとんど出ない割に、車は100年前のスクラップが堂々と走ってるのは少し残念。
だが、そう見えないように改造して、気を配っている。
逃走シーンで、車盗むシーンあっても良かったんじゃないかな?
マックスが伝説的な人物だと見せるシーンがないのが、クルーガーとの対決があくまでもエクソスーツによるものだけになるとね。
エクソスーツもどう見ても世代が違うから、勝ち方にちょっと納得しづらいのよね。
まぁ、作劇上の理由で勝った感じが少々ある。
同様に、流石に再起動だけで全部解決しちゃうのもスペースコロニーの構造としてはどうなのかしらと思っちゃうけどね。
ま、そこがファンタジーとして割り切ったところなんでしょうけど。
人口が増えまくった理由は国際紛争つまり大きめの戦争がなくなって小競り合いしかなくったからなのかね?
だから、エリジウム自体は武装してないのかね?
人口の増加、医療の格段の進歩で、富裕層が人の命に無頓着になっていることが社会全体に影響しているという設定が活きている。
それゆえ、ラストシーンの医療ポッドによって、更なる人口増加が起こり、下手すると社会制度は崩壊する可能性が高まったとも言える。
英雄行為が世界を救うわけではないが、それでも人は決断しなければならない。
誰かのために決断する行為はそれでも美しい。
再会や約束の叶え方が皮肉めいてるとかの切なさがいいのよね。
あの約束のサインの○がエリジウムを感じさせるあたりとか、SFや寓話に最も必要な部分をわかってるあたりがぐっときます。
労働者が愛情や意思でヒーローになる瞬間にどうしたってグッとくるよね。
ラストのスイッチを押す描写は、バーホーベン版の『トータルリコール』のスイッチを押すシーンを彷彿とさせつつ、芝居で格段の違いを見せつける。
ニール・ブロムカンプはポールバーホーベンのファンだそうで、『ロボコップ』からの影響大なんだとか。
しかも、マット・デイモンのラストが『プライベート・ライアン』のトム・ハンクスの体勢だと思うと、感慨深いよね。
孤児院のシスターが言う「あなたは特別な子だから、人生に一度特別な決断をするときがあるのよ」は希望のないあの世界では希望の言葉になるわいね。
追記。
記憶を運ぶのは『JM』だね。
『JM』はリメイク企画が進んでいたはずだけど、どうなったのかしら?