で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2402回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』
他人とのコミュケーションが苦手なトラブルメーカーの映画好き男子高校生がレンタルビデオ屋でバイトをはじめる青春コメディ。
物語。
2003年カナダのオンタリオ州バーリントン。
雪国の田舎で暮らす高校三年生のローレンスは映画が好きで毎週レンタルビデオ屋で借りて観ており、ニューヨーク大学でトッド・ソロンズ監督から映画を学ぶことを夢見ている。
独りよがりな彼は親友マットとつるみながら、自分は映画の才能があると信じながらも行動に移せず、それもこれもニューヨーク大学に入れば一変することを願っていた。
だが、母からニューヨーク大学に行かせるほどのお金はないと言われてしまう。
ローレンスは、高額な学費のため、レンタルビデオ店<Sequels>でアルバイトを始めることにする。
そこで、映画嫌いという店長アラナと出会う。
監督・脚本は、本作が長編デビューとなるチャンドラー・レバック。
監督の自伝的ストーリーを基にフィクションと映画化した。
主演は、ラッパーとしても活動する若手俳優アイザイア・レティネン。
映画好きをこじらせた口だけは立派だが行動が伴わない17歳の男子高校生が現実にぶち当たっていく物語。
好きになりにくそうな主人公ローレンスに愛嬌を加えたアイザイア・レティネンとそれに絡む店長アラナ役のロミーナ・ドゥーゴ、親友マット役のパーシー・ハインズ・ホワイト、母役クリスタ・ブリッジスは特にだが、それ以外のバイトメンバーや同級生など抜群のキャストが揃ったことで地に足をつけ、映画のつくり出す世界を地続きにしちる。
日常を掬い上げた現実的コメディなのが、胸にグッとくる。アメリカ映画の青春コメディの系譜を雪国カナダの味でどっしりと仕上げている。
カナダのアメリカとの近くて遠い距離感も物語の味わいになっているのがいい。
監督脚本のチャンドラー・レバック自身の経験を基に物語を紡いがフィクションだが、あえて主人公の性別を男性に変更し、あるテーマの強化をしている。
現代的で、これが女性を聞いたら、確かに物語の意味が複雑になりコメディとしてとらえにくくなっていただろう。
だからこそ、その方向でつくっていたら、新しい現代の映画になった可能性もあっただろう。
だが、それより気づきの物語を、現実の今につながる、その問いの答えを柔らかさで包んでいて心に沁みる。
友情と愛情をこじらせるローレンスの人生の続きは映画の外にあるというわけ。
このリアリティにカナダの田舎の秋冬春の風景から風さえ感じてしまう。
バイト先でローレンスがお客にオススメ映画を語るときの姿にかつて(今もか!?)己にもこういうところがあったかもと恥ずかしくも笑ってしまう。
2000年代初頭の実際の映画のタイトルが出てきて、映画好き心をくすぐるのです。
強すぎないクライマックスに苦みと痛みと気づきを得て、キレよく心地よいエンディング。
年上の友人ものというサブジャンルってあるよね。
カナダのあの店長のリアルな人生にも思いを馳せてしまう。
LIKEとしちゃう青臭さ、これから衒いなくLOVEといえるようになるかしら。
青春映画はこの痛みこそ宝と空とスクリーンに思い馳せる一本。
原題:『I Like Movies』(『僕は映画が好き』)
製作年:2022年
製作国:カナダ
上映時間:99分
映倫:G
スタッフ。
監督・脚本:チャンドラー・レヴァック
製作:リンジー・ブレア・ゴールドナー
撮影:リコ・モラン
美術:クラウディア・ダロルソ
衣装:コートニー・ミッチェル
編集:シモーン・スミス
音楽:マレー・ライトバーン
配給:イーニッド・フィルム
出演。
アイザイア・レティネン (ローレンス・クウェラー)
ロミーナ・ドゥーゴ (アラナ/店長)
クリスタ・ブリッジス (テリ・クウェラー/母)
パーシー・ハインズ・ホワイト (マット・マカーチャック/幼馴染)
エデン・クピッド (ローレンP)
ヴェロニカ・スロウィコワスカ (タビサ)
アレックス・アティア (シャノン)
『フルメタル・ジャケット』などの大作の許可はとれなかったのか、いくつかは音声が差し替えられている。
実際の映画の映像が流れるシーンもあり、中には当時の雰囲気を伝えるあまり知られていない地元カナダのインディ映画もいくつか流れる。中にはエリオット・ペイジ(当時はエレン・ペイジ)出演の『Love That Boy』などもあるそう。
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