菱沼康介の、丸い卵も切りよで四角。

日々の悶々を、はらはらほろほろ。

備えろ、動け、切れ! 『動くな、死ね、甦れ!』

2017年11月16日 00時00分58秒 | 映画(公開映画)

で、ロードショーでは、どうでしょう? 第1188回。


「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」

 

 

 

『動くな、死ね、甦れ!』

 

 

 

 

旧ソ連出身のヴィターリー・カネフスキー監督(脚本も)が自身の少年時代の記憶をもとに、収容所地帯の町で暮らす少年少女の過酷な運命を鮮烈かつ叙情あふれるタッチで描き、当時54歳にして第43回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を受賞した青春ドラマ。

遅れてきた天才の子どもを主役にした大人向けの珠玉の一本。 

 

 

 

物語。
第二次大戦直後のソ連極東の収容所スーチャン。

12歳の悪ガキのワレルカは母親とバラックで二人暮らし。

近所の同い歳の少女ガリーヤが列車の到着に合わせ開かれる市でお茶を売るのを真似て、ワレルカも真似てお茶を売るだけでなく、ガリーヤの営業を妨害する。

それでも二人は仲直りし、お茶を売り続ける。

ワレルカはそれで貯めた金でスケートを買うが盗まれてしまう。

学校で、トイレが溢れ返り、悪臭と汚水で溢れる。それはワレルカの悪戯だった。

その日、彼が帰宅すると母は愛人と情事に耽っており、彼女に片想いの隣人の炭坑夫はそれを覗いて憤然と立ち去っていく。

ワレルカはスケート泥棒をガリーヤが見つけたと聞き、二人で取り返しに行く。 

 

 

 

出演。

パーヴェル・ナザーロフが、ワレルカ。
ディナーラ・ドルカーロワが、ガリーヤ。

エレーナ・ポポワが、ワレルカの母。

 

 

スタッフ。

製作は、アレクセイ・プルトフ。

 

撮影は、ウラディミール・プリリャコフ、N・ラズトキン。

白黒によって、時代性とソ連の厳しい環境を映し出し、独特の構図が世界へと引き込んでいく。

 

音楽は、セルゲイ・パネヴィッチ。

 

 

 


第二次大戦当時のソ連の極東の町で奔放に暮らす少年と少女のある顛末を描くハードドラマ。
54歳再デビューの遅咲きの天才ヴィターリー・カネフスキーの珠玉の白黒子供映画。
子供映画は映画の極北を目指す材となることが多く、それを踏破した一本。
パーヴェル・ナザーロフとディナーラ・ドルカーロワの魅力が時代を超える。
ヤスリのようなルックと独特の構図が線路をはみ出して世界を追いかける。
カメラを追い越す生の瞬間に痺れる撃作。 


  
 

 

 


 
 

 

 

 

おまけ。

原題は、『ZAMRI, UMRI, VOSKRESNI!』。

『動くな、死ね、蘇れ』のようです。

英語題は、『FREEZE-DIE-COME TO LIFE』と『DON'T MOVE, DIE AND RISE AGAIN!』

『止まれ、死ね、生き返れ』、『動くな、死ね、起き上がれ!』 ですね。

 

1989年の映画。 

 

 

 


上映時間は、105分。
製作国は、ロシア。

 

 

 

受賞歴。

1990年のカンヌ国際映画祭にて、カメラ・ドールを、ヴィターリー・カネフスキーが、受賞。
1990年のヨーロッパ映画賞にて、脚本賞を、ヴィターリー・カネフスキーが、受賞。

 

 

 

ネットによると。 

本作で90年カンヌのカメラ・ドール(最優秀新人監督賞)を受賞した時、カネフスキーは54歳。それ以前に短篇一作と、押しつけられた企画の長篇一本をものにはしているが、無実の罪で映画学校在学中に逮捕され、8年を獄中に暮らしている。なので、今作を実質的なデビュー作とみなしている。

タイトルが彼の人生を表わしているかのようだ。

 

ディナーラ・ドルカーロワは『愛アムール』で看護婦を演じてましたね。

パーヴェル・ナザーロフは不明。

 

 

劇中では、日本人捕虜が出てきて、日本語の歌が流れます。

『南国土佐を後にして』、『炭坑節』、『五木の子守唄』。

この『五木の子守歌』は自作『フジミ姫 ~あるゾンビ少女の災難~』でも流れます。よろしければ、ぜひ。

『恐喝少女』ではオマージュを捧げたシーンがあります。

 

 

 

 

 

 

ややネタバレ。

映画の枠が描かれる物語に呑み込まれるような強烈なラストは、それまでの映画の終焉すら意識させる。傷だらけの登場人物たち。色彩に溢れたモノクロの撮影。すべて真実以上の真実。

 

監督はナザーロフとドルカーロワの主演で続編『ひとりで生きる』をつくりあげている。

 

 

 

 

 

 

ネタバレ。

 監督の「よーい、スタート!」の声で始まり、「子どもはもういい、カメラはあの女を追え」の声で終わる。

映画として始まり、映画として終わる。

では、その間は?

ドキュメンタリー的につくられた劇映画。

 

 

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