で、ロードショーでは、どうでしょう? 第2101回。
「なんか最近面白い映画観た?」
「ああ、観た観た。ここんトコで、面白かったのは・・・」
『きっと地上には満天の星』
地上を知らぬ5才の娘を愛する母が暮らすNYの地下に強制撤去が迫るサスペンス・ドラマ。
ニューヨークに実在する地下生活者コミュニティを題材にしている。
主演は、スクリーン・デビューとなるザイラ・ファーマーとセリーヌ・ヘルド。
監督・脚本は、セリーヌ・ヘルド&ローガン・ジョージ。
今作が長編デビューとなる。
物語。
ニューヨークには、迷路のような地下トンネルで暮らす人々のコミュニティがある。
母ニッキーと5才の娘リトルは、そんな地下生活を送っている。
リトルは、物心ついてから地上を見たことがなく、地下の暮らしだけで日がな一日、母を待つ。
娘を愛するニッキーだったが、その日を生き抜くのに精いっぱいで娘を置き去り。
ある日、強制撤去のため、NYの職員がやってくる日にちが判明する。
出演。
ザイラ・ファーマー (リトル)
セリーヌ・ヘルド (ニッキー)
ファットリップ (ジョン)
ジャレッド・アブラハムソン (レス)
スタッフ。
製作:アンソニー・ブレグマン、ピーター・クロン、カラ・ダーレット、ジョナサン・モンテペア、メリーナ・リゼット、ジョシュ・ゴッドフリー、ダニエル・クラウン
撮影:ローウェル・A・マイヤー
プロダクションデザイン:ノラ・メンディス
衣装デザイン:ベゴニャ・ベルゲス
編集:ローガン・ジョージ
音楽:デヴィッド・バロシュ
『きっと地上には満天の星』を鑑賞。
現代NY、地上を知らぬ5才の娘を愛する母が暮らす地下に強制撤去が迫るサスペンス・ドラマ。
5才の娘を主人公に地下の生活、それはさながらディストピアSF。これがニューヨークの現実で、実際に実在する地下生活者コミュニティを題材にしている。地下生活者50名以上へのインタビューとそのドキュメンタリーを基にオリジナルストーリーを構築。
撤去前の少女の生活を見せる前半と強制撤去後のスリラーの二部構成。前半の思いが後半の加速で手に滂沱の汗を握らせる。
画面に光を当てるのはデビューとなる幼いながら役を上を見上げ、困惑するまなざしで体現するザイラ・ファーマー。『ポネット』のヴィクトワール・ティヴィソルや『ハッシュパピー』のクヮヴェンジャネ・ウォレスを思い出させる。その母を演じるセリーヌ・ヘルドの下調べからのリアリティが圧巻。なにしろ、今作の共同監督と共同脚本も務めている。共同監督と共同脚本はローガン・ジョージ。今作が長編デビューとなる。
脇キャストにも愛情がある丁寧さがよい。
原題を広げた抒情寄りの邦題が好み。劇中に星に関するお話が出てくるのです。
闇に煌めくほこりの美しさを捉えた撮影とトンネルだけでない地上でのある仕事場のリアルな美術。3つのトンネルというモチーフ演出で繋がっている。
未来をどう見るのか。この母娘に幸あれと願わせる、強いラスト。
映画館の暗闇で、彼女が初めて目にする地上を、空を、味わってもらえたら。
きっと外には空気の底の暮らしの扉作。
おまけ。
原題は、『TOPSIDE』。
『上側』、『上層』。
2020年の作品。
製作国:アメリカ
上映時間:90分
映倫:G
配給:フルモテルモ=オープンセサミ
ネタバレ。
実際には、この映画は甘くないので、リトルが空や星空を見て、感動するシーンはない。
それは、邦題からのイメージであり、あくまでも地下にいる時に、憧れていた地上への思いだから。
3つのトンネルのモチーフで描かれる。
地下の暮らしているトンネル、アパートの廊下と簡易売春宿の個室、地下鉄。
工事前のつかわれていない穴→動かない、動けない場所→動く電車の穴と穴の状態が、リトルの状態を示している。